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呼び出すお客様①

これは仕事の要領が段々と分かり、一人でお客様を案内するようになった頃の話である。ある日フリーのお客様が来店した。推定50歳後半位であろうナチュラル系の女性だ。(以下F様と呼ぶことにする)

お話を聞くと、F様は長年この土地(私の会社がある土地)に住んでいるが今の部屋に飽きてきたので気分転換に引っ越しを考えているとのこと。
なので私はまず条件を聞き、合致するいくつかの物件をご案内することとなった。
案内中のF様は気さくで話しやすく、よく笑顔をみせてくれる方だったので私としても接客し易く、かなりいい雰囲気で物件を回ることができた。

しかし、決まらない。

だがそれはそうだろう。
F様は今現在駅徒歩2分の物件に住んでいて、家賃も築年数が経っている分かなり安くしてもらっているとのこと。広さも2Kあるらしい。
その近さ、広さで同じ位の家賃の物件は自社でも他社でも無かった。
まず近さが無い。駅近物件は非常に人気が高くそもそもあまり募集が出ない。
さらにこちらも当たり前だが、駅に近い物件はどうしたって家賃が高くなる。
築年数を気にせずオンボロでも良ければ無いことも無いのだが、家賃が今と変わらずよりボロい家に引っ越したがる奴なんてまずいない。
なので来店から3ヶ月位は紹介する→内見→気に入らず解散の無限ループを続けていた。

そんなある日、我社の管理物件が新しく募集することになった。
駅からは6分程で広さは1DK の最上階角部屋、家賃はなんと今より少し安くなる‼
完璧とは行かずとも、今まで紹介してきた中で断トツに希望条件に近い物件だった。

私はすぐさまF様に物件情報を紹介し、すぐ内見に行くこととなった。

「え〜すごく良い‼出窓もあるし日当たりも問題なさそうね。この部屋申し込むわ!」

内見わずか5分でその物件に決まった。
本当に決まる時は早い。

申込後は何の問題もなく契約までをすんなり終えることができた。(余談だがこの契約までがすんなりいかないことのが圧倒的に多い)

そしてここから私は何十回とF様に呼び出されお部屋に行くこととなったのである。

【続く】

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