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特に心惹かれた文章や、保存したい文章などを追加していきます。
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2015年8月の記事一覧

「ひとりで君は泣く 断りもしないで」

生きているだけで好きだよと言うので、死んだら嫌いになる?と訊けば、もーあなたって本当に、と声をあげて笑い少し間をおいて、死んだって好きだけどやっぱり生きてる方がいいねと微笑んだ。
わたしのことをとんだロマンチストだとたびたび揶揄うけれど、あなただって大概だ。わたしもあなたが好き。生きていても死んでいても。ただ好きなんだよ。

レイトショーの上映時間をラウンジで待っていた。時計は二十一時を回っている

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寓話

あるところにひとりの子どもと、背の高いひとと太ったひと、それからとても小柄なひとがいた。
太ったひとは楽しい話をたくさん知っていて、いくつもいくつも子どもに話して聞かせた。
小柄なひとはほんのひとつふたつの言葉しか話すことができなかったので、笑い転げる子どもの隣にただ座り、黙って一緒に話を聞いた。
背の高いひとはいつでも真っ赤な顔をしていて、ありとあらゆるこわい話を次々話すことができた。
彼の声は

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