「ひとりで君は泣く 断りもしないで」

生きているだけで好きだよと言うので、死んだら嫌いになる?と訊けば、もーあなたって本当に、と声をあげて笑い少し間をおいて、死んだって好きだけどやっぱり生きてる方がいいねと微笑んだ。
わたしのことをとんだロマンチストだとたびたび揶揄うけれど、あなただって大概だ。わたしもあなたが好き。生きていても死んでいても。ただ好きなんだよ。

レイトショーの上映時間をラウンジで待っていた。時計は二十一時を回っている。隣に座っていた年下が繋いでいるわたしの手を持ち上げ、爪の色を変えた?と訊いた。
そう、万人受けするピンクベージュからヌーディベージュへ。何人かの男性には既に苦笑いをされていた。
「あまり良くないでしょう」「何で、良いよ、あなたらしい」
爪先に素早くキスをしてから立ち上がり、そろそろ時間だよ、ポップコーン買うだろ、しぬほどキャラメルがかかったやつと言って歩いていってしまった。
そういう所が嫌だった。引きつけて、ほんの一瞬手に入ったと思わせる。あとは簡単で、結局は麻薬と同じだ。
あなたになんて一生わからない。わたしは、あなたがいるとさびしい。

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