悪魔のささやき、天使のかかし
天使はかかしだった。都会という麦畑のあぜ道を見下ろしている、白い服着たかかしだった。シンプルな丸顔に可愛らしい目。物干し竿みたいに手を伸ばしているけれど、まるで人間の子みたいに麦わら帽子をかぶっていた。服は白のTシャツで、大きすぎて袖がだぶだぶしていた。
表参道は、おしゃれなとこだと人は言う。けれども天使は、そう思えなかった。道端には空き缶やペットボトルが散らばっていた。人が多すぎて、なんだか変な匂いがする。昔の団地は消えてしまったし、春の小川は地面に埋められてしまった