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雨の日とナポリタン

子どもが小さいころは雨の日のお出かけが
大変だった。歩けるか歩けないかぐらいで
抱っこ抱っことなるけど、3歳は
抱っこ紐を使えるような年齢でもなく。
ベビーカーには乗りたがらない時期。
張り切って出かけても疲れて寝ると
抱っこして帰る羽目に。
そんな小さな苦労はよくありました。

ある雨の日。

用事と買い物を済ませて
駅まで向かっている途中、すごい本降り。
駅まではまだ遠い。タクシーもいない。
息子は歩けないと愚図るので抱っこ。
背中にリュックを背負い、両手に袋を抱え。
傘をさして抱っこして。
ひいひい言いながら歩く。
両腕が荷物と子どもでずんと重い。
必死で歩いてたら後ろから声をかけられた。
駆け寄ってきた女性が息を切らしながら
「すいません!長靴落としてましたよ。」
200mぐらい後方を指さした。
地面には片方の長靴らしき物体。
お礼を言って、来た道をまた戻る。
傘もうまくさせず腰も腕も痛い。。。
地味に泣けてきた。疲れちゃった。

靴を拾って、息子に履かせて。
何気なく横を見ると小さな喫茶店。
こんな喫茶店さっきは気づかなかった。
子連れは断られるかもしれないけど
少し雨宿りできれば、とドアを開けた。
「子連れですが大丈夫ですか?」
「どうぞ」と言われたので一安心。

案内された席に座りメニューを見ると
息子はナポリタンを指さして
「これ!たべたい!」と言い出した。
どうせ雨はしばらくやまない。
注文することにした。

オーダーした後、奥さんらしき人が
「あの、お子さん食べられるように
ケチャップは控えめにしたほうが
いいかって主人が言ってますが
どうしましょう。」と戻ってきた。

私はびっくりしてしまった。
子連れで外食したときにわざわざ
そんなこと聞かれたことなかったから。

雨宿り出来ただけでも御の字なのに。
そんな気遣いをしてくれるなんて!
と感動してしまった。

常連さんが多そうな小さい喫茶店。
子連れだと断られるかもって。
少し気おくれして入った場所なのに。
温かい心配りに涙腺が緩みそうだった。

ナポリタンの味と仏頂面の優しいオーナー。
あのお店はもうなくなってしまったけど。
今でもあの道を通るときは思い出す。

私にとって特別なメニューになった話。

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