#17 雨漏りリベンジ編!〜棟瓦の面戸工事〜
前回、雨漏りがあり、怪しい所をリフォーム業者さんがコーキング打ち直しをしてくれた家の屋根であるが、まだ雨漏りがあるようだ。
瓦の耐久力は100年以上あり、焼き物のため熱に強く、屋根材としてメリットがある反面、雨漏り箇所の特定が難しいというデメリットがある。巨大なあみだくじのような構造になっているのが要因であろう。
瓦のふき替え工事は高額になるため、避けたい。おそらくこれまでに回収した家賃(約160万円)の半分くらいは軽く吹っ飛ぶであろう。
瓦屋根の雨漏り修繕についてYouTubeで検索していると、ある動画を見つけた。
棟瓦(むねがわら)という1番上の瓦の下の漆喰が劣化すると雨漏りすることがあるようだ。
劣化している気がする。
築50年以上経っているから、怪しさ満点だ。
この半月の漆喰の部分は面戸(めんと)と言うらしく、ここの漆喰のやりかえを面戸工事と言う。
悪徳業者だと古い漆喰を剥がさずに上塗りして終わりにしたり、そもそもやりかえる必要がないのにやりかえたりしてお金を請求するようだ。
そんな金は無い。
チンピラを使う時が来たようだな!
イリーマー(数少ないメルカリ大家イリームの読者)にはお馴染みの義兄である。中卒で左官の仕事をしている。
メルカリで売って欲しい物があるから取りに来て欲しいと言われて、打ち合わせも兼ねてチンピラの家に行く。
仕事から帰ってきてお風呂に入り、上半身裸で片膝を立てて夕食を食べるのがいつものチンピラスタイルだ。
ふと見ると、みぞおちの辺りが少し赤くなっている。どうしたのか聞くと、チンピラが道を歩いていたところ、前からやってきた別のチンピラに絡まれたのだと言う。
う、嘘だろ…!?((((;゚Д゚)))))))
そんな昭和のヤンキー漫画のような世界線が、令和の現代に!しかもこんなに身近にあるだなんて!!
とっくに絶滅したと思われていた生き物が近場にいた衝撃のせいで話が逸れたが、チンピラは1.5万の人工(にんく:職人の日当)を支払えば大抵何でもやる。
屋根職人ではないが面戸工事を発注する。
ぶっちゃけ上塗りは良くないとされているが、私は上塗りで構わない。しかしチンピラはそんな仕事は出来ないと職人気質を発揮し、金曜日の夕方に古い漆喰を取り除き、土曜日の朝から漆喰を塗ることになった。
金曜日に貸している物件に行くと、向かいの家の爺さんが立っている。
この爺さんはカーネル・サンダース並みに外に立っている。
私の顔を見ると「猫が増えたよ。ウチの息子が見た。」と教えてくれる。彼はこのように日夜諜報活動を行なっているのである。
猫が増えたと言うことは、敷金1ヶ月分と家賃3千円の増額だ。
だが、そんな事を請求するわけにもいかない!
現在進行形で入居者に迷惑をかけている状況だし、元々居た猫(黒と白の牛柄)は引っ掻き傷も作らない子なのでカウントしない事にした。
チンピラがチャリで来た。
左手に吸血鬼に打ち込むような太い釘、右手に金槌を持ち、古くなった屋根の漆喰を剥がしていく。
中から赤土も出て来る。古い家の瓦の下には赤土が敷いてあり、これが濡れないように漆喰で蓋がしてある。
雨が降って来たのでホームセンターでビニールシートを買って被せてその日の作業は終わった。
次の日は私は仕事があるため、チンピラに1人で作業させた。
朝から昼ぐらいまで作業したようで、写真が送られてきた。
なかなか上手くやったようだな、と安心していたのも束の間、「マダアマモリシテマス!」と入居者(ブラジル人牧師)から連絡があった。
なんかむしろ悪化しとる!!!
赤土みたいな色混じっとるけど!!!
仕事の合間に現地確認に行く。
隙間がある!∑(゚Д゚)
チンピラめ!雑な仕事しやがって!
だがチンピラは身内のため、今後の付き合いもあるので修繕は頼めない。…自分でやるしかない!
YouTube動画を参考にして道具を揃えた。
漆喰は練り上がっているものを使う。コテは鶴首コテという特殊なコテだ。
次の週末、ついにこれまで避けていた屋根に自ら上がった。
瓦は凹んでいる所を踏んで移動する。
凹みに膝をついて漆喰を鶴首コテで塗っていく。
ヌリヌリ(・ω・)ノ
ちょっと楽しくなって来た。なんだかホイップクリームを塗るみたいな感じだ。
豚肉の入っていた発泡スチロールのトレーに小分けに漆喰を乗せてぬりぬり。このトレー便利〜!
季節は秋になっていたが、屋根の上はあたたかい。隙間が出来ないように下から覗き込まないといけないので、夏だったら顔面が焼けていたかもしれない。
ちょっと自分には面戸工事の才能があるかもしれないが、職人になるのはやめておこう。
無心で塗れるのは楽しかった。
いや、それにしても不動産所得って不労所得じゃなかったっけ?なんかずっと苦労してる気がするんだけど。苦労所得に名称を変更するべきでは。などと考えていたので無心では無かったかもしれない。
ふっふっふ。今度こそ完璧に隙間を埋めてやったぜぇ〜。ワイルドだろぉ〜?
膝がガクガクになり、その後2週間ぐらいは調子が悪かった。
終わった頃に入居者のジャクソンさんが帰って来た。
「オ・ラ!」と挨拶をすると、
「オツカレサマデス。」と返ってくる。
「何度もすいません。」と言うと、
「ダ、ダイジョブ。」と言ってくれた。彼はキリスト教の牧師をしているメシア(救世主)系男子なのである。
仏の顔も三度までと言うが、メシアの顔は何度まで持つのだろうか。
買い物をして来たらしく、明日のパンと果物を持っている。日本が買物のビニール袋を廃止するという極端な政策をとったばかりに、日本で暮らす外国人も大変だ。
家の中に招かれ、上がると縁側で猫が2匹遊んでいる。
黒と白の牛柄の猫と、茶色いトラ柄の猫(新入り)だ。
牛猫は私と目が合うと「ハッ!」と言って姿をくらませた。すごくシャイでジャクソンさんと奥さんにしか姿を見せないのだが、新入りと遊んでいたため逃げ遅れたようだ。
ジャクソンさんは水と烏龍茶と緑茶のペットボトルを持ってきて、好きなものを選ばせてくれる。
雨漏りで迷惑をかけられているにも関わらず、優しくお・も・て・な・し♪
言えないよ〜♪ペット2匹目なので敷金1ヶ月分と家賃3千円の増額ですだなんて〜♪
「オブリガート(ありがとう)、チャオ!」
「マタネ!チャオチャオ〜!」
だが結果的に、これでも雨漏りは止まらなかった。
棟瓦の漆喰劣化は原因では無かったようだ。
次はいよいよ天井のボードをめくって散水テストをしなければならないので候補日を出して貰えるようにジャクソンさんに伝えるが、しばらく音沙汰が無かった。
年が明けて2月になり、通訳の友人から「ジャクソンさん今月中に退去します!」と連絡があった。
言えないよ〜♪退去日は1ヶ月以上前に通達&2年以内の解約で違約金が2ヶ月分かかるだなんて〜♪
次回、メシアの退去
使い終わった鶴首コテはメルカリで売却した。
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