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アイム・ショックド

CD『宇野誠一郎作品集』の1と2を買う。字数稼ぎとして『みんなでうたおう! ミスター・アンデルセン+20』も同時に買ったことを記し、さらに字数稼ぎのダメ押しに関連作品『21世紀のこどもの歌』も買ったことも記す。数年前にヤマタケこと山下毅雄のCDがリリースされた時を経て、ついにここまで来たかと感傷に浸る間もなく鑑賞。4枚立て続けに、と、言いたいところだが「デルセン」(思いつきによる勝手ながらの略称)は充実の2枚組なので、5枚立て続けに。さて、ここで知らない方の為に(ex「ぼくはぼくの為に」RCサクセション)、音楽家・宇野誠一郎とそのCDについての説明に入る流れと思いきや、思い返せば15年程前、つまりは昭和から平成に変わる頃、手塚先生が亡くなった。手塚先生こと手塚治虫は医者だったので、皆、先生と呼んでいた。医者は何故「先生」と呼ばれるのか、確固たる意思をもって医師になり、いつの間にか(ex「いつのまにか少女は」持田香織 produced by 井上陽水)、医者は先生と呼ばれるようになった。そして、この世の中に先生は多過ぎた。先生とは呼ばれずにヤブ医者と呼ばれた者もいた。陽水は医大受験のために三浪しており、医者にはなれなかった。白い巨塔・田宮二郎に取り憑かれた人間は先生ではなく、財前教授と呼ぶことに固執した。また「現代は時間との戦いです。さぁ、あなたの心臓に挑戦します。タイム・イズ・マネー、一分間で100万円のチャンスです」を丸暗記し、ショック!ショック!と連呼した。そんな中、手塚治虫はマンガを描き、先生と呼ばれてから何十年も経ち、亡くなる頃に手塚先生とは関係なく『TVマンガ主題歌のあゆみ』というCDを買った。動機は昔聴いたあれやこれやをちゃんと聴きたい位のものだったが、既にその頃自分は音楽を作っており、演奏もしてたので、そういった視点(聴点)から、音楽そのものとして新鮮に聴け、興味が湧き、あゆみ始めてしまった。そうやってアーティスティックなロック文化だけが聴くべき音楽ではない、という今では当たり前のことを(分かりやすく例えればDJ的視点において)自覚する。実際に曲が面白ければ、そのTVマンガを観たかどうか、思い入れがあるかどうかはどうでもいい世界でありながら、同じくその頃『ルパン三世』(第一シリーズ、今となっては旧ルパン)をビデオで見直しており、文字通り見直し、BGMもカッコイイと思っていたので、山下毅雄という名前が頭に刻まれたのが十代の終わり。レコードヴァージョンの『ルパン三世』に違和感を覚え、中古で見つけた『オリジナルスコアによるルパン三世BGM集』にはガックリきたので、自分でビデオからカセットに録音したりもした(後に正式にCD化された時もマスターテープがなく、SE入りの同様のものだったが、まさか当時はそんなものが復刻されるとは思ってはいなかった)。他にTVマンガ(アニメとは呼ばず。アニソンという言い方も×)で面白い曲はないか(許容範囲は75年『ガンバの冒険』まで)と色々聴いていくうちに(ただ全集を聴いてるだけ)、その時々で好きな曲が変わっていき、その中でも印象に残ったのが、渡辺岳夫(ナベタケ)、ではなく宇野誠一郎であった。『ふしぎなメルモ』、特にこのED(エンディング)曲にはノックアウト(『宇野誠一郎作品集1』でもラスト)。このコード進行はお洒落過ぎる!などと。それからTVマンガではないが、それまで外国の童謡に日本語をつけたものだと勝手に思っていた『アイアイ』の作曲者が宇野誠一郎だとわかった時も驚いた。(中略)そんなこんなでTVマンガに限らず、観たこともない映画・ドラマのサントラ、ラウンジ、モンド系と時代に飲まれていき、その流れでさらに『幻の名盤解放同盟』シリーズも当然入ってくる。その中の『アイム・ショックド/アイ・アバンティとそのグループ』は文字通りショックで海外グループであれば驚かなかったが、日本でここまでやる人達がマイナーな存在でいたのかという思いが強く残り、自分の'wandering'というトラックはこれに影響されて作ったといっても過言ではない。さらにその後『電子音楽 in JAPAN』という本で宇野誠一郎作品と判明し、ショック!ショック!と連呼した。雑音を愛するミュージックコンクレート、冨田勲より早かったシンセサイザーの導入、リズムへの探究心、音楽における笑い等々、先生のインタビューに感銘を受け、『ひょっこりひょうたん島』ではなく、『ネコジャラ市の11人』(『懐かしの人形劇テーマ大全』収録)を聴く。これは当時スタッフが理解不能で全員黙ってしまう程(後にテーマ差し替えも要求される)に前衛的なのだが、先生のスピリットが凝縮された最高傑作。音の濁流にのまれ、床下浸水し、畳を全て取り替えないとならない状況下において仮設住宅での生活を余儀なくされる。

初出:JET SETのフリーペーパー「GATE」(2005年)

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