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綿矢りさ著:生のみ生のままで読了 感想:ネタバレなし

綿矢りさ著:生のみ生のままで読了 感想:ネタバレなし

 名作恋愛小説「ひらいて」の次に呼んだのは「生のみ生のまま」である。ひらいてでも取り上げられたように高校生同士の同性愛を描いた小説が「生のみ生のまま」では社会人同士の同性愛が描かれている。

 同性愛の恋愛ものと聞くと少し理解できるかな?と距離を置きたくなるところが、綿矢りさの小説では自然と同性愛を取り上げていることが同性愛を読みやすい状態にしてくれている。「ひらいて」では高校生の友だちから、「生のみ生のまま」では社会人のカップル同士の出会いから描くことで、同性愛を特別なものではなく日常生活から同性愛へ誘う様に丁寧に書かれていることで読者は同性愛への特別さを感じにくくさせる工夫が凝らされている。

 また、「生のみ生のまま」では同性愛を描いているが同性愛がテーマではなく、人が人を愛するということの純度を高めたときに障害となることや愛おしく感じるということを描いている。

 恋愛というのは2パターンある。性欲から入って恋に落ちる恋愛と、人間関係から入って性欲が顔を表す2パターンである。「生のみ生のまま」では後者の純度が高い人間関係から入って没入した時に浮かび上がる性癖を描くということは女性同士の恋愛というよりも、主人公とその対となる女性だけの恋愛であり、性癖が存在する。

 もちろん性欲から入る恋愛よりも人間関係から没流して性欲が生まれる恋愛の方がプラトニックである。

 「生のみ生のまま」では人間同士の恋愛を描いており、同性愛がテーマではないのは主人公は対象の女性以外の女性のことをいいと思っているわけではない。むしろ男性の方に魅力を感じている。しかしながら、それでも相手の女性だからこそ恋愛が成立するのだ。ということを考えると女性や男性の性を超えて人と人の恋愛的な愛の表現として適切なような気がする。

 「夢を与える」にて芸能界と世間一般との恋愛を描いた綿矢りさにとっては「生のみ生のまま」で芸能人と恋愛をする一般人女性というのはそこまで突拍子がないことではない。「夢を与える」では歪な作品となってしまったが綿矢りさの成長過程としては必要な作品だったことは「生のみ生のまま」では明らかであるという意味でも「生のみ生のまま」は読む価値がある。

純粋な愛を日常に落とし込む見事な小説である。人を選ぶがおすすめの一冊といって差し支えないだろう。

おすすめの一冊である。

ではでは~



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