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短編小説🍸映画BARローマの休日(9)

「あれ?さゆりさんじゃないですか?」

男は彼女に話しかけた。さゆり?彼女の名前は確かゆきのはずだ。人違いだろうか。彼女の方を見ると、当の本人は男に気付いておらず、一生懸命カクテルの写真を撮っていた。

「ねぇ、紅の豚めっちゃいいね、とっきーやっぱ天才!」

と1人で大はしゃぎしている。

男は慣れた様子でウイスキーを頼むと、彼女の隣りに座った。

「さゆりさん、僕ですよ。この前ここでお会いした…覚えてないですか?」

彼女は一瞬考え、思い出したようにこう返した。

「あ!もしかしてあの時の!?今日は普通の服なんですね。この前はダースベイダーだったから全然わかりませんでした!」

ここでとっきーがこらえきれず笑い出した。

「この前はダースベイダーの格好でこられてましたもんね。」

とっきーの一言でようやく理解した。この映画BARローマの休日では、客自身が思い思いのコスプレで現われることもあるので、誰が誰だかわからなくなるときがあるのだろう。

彼女は笑いながら続けた。

「確かにあの時私は“さゆり”のコスプレしてたけど、今は“ゆき”なんです。」

(10)へつづく

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