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この人トイレで何してたの? 2021全仏オープンテニスまとめ #2

「第1シードのジョコビッチが優勝」男子テニスの世界をあまり知らない人にとっては別段面白みのない結果かもしれません。しかし我々(まぁまぁコアな)テニスファンにとっては事件といってもいいくらいの結果です。なぜなのでしょう?あと、ちょっと心配なある選手のことにも触れています。

パリではこの人が勝つのが普通という異常さ

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スペインのラファイエル・ナダル(35歳)です。現在世界ランク3位で4大大会での優勝20回。ビッグ3と言われる選手の1人です。その20回のうち、この全仏オープンで13回優勝しています。しかも今大会が始まるまでは、15回出場して優勝13回。つまりこのパリで開催される全仏オープンで負けたのはたったの2度(だった)。あまりの強さ、あきれるほどの優勝回数に敬意を表し、今大会を機に「ナダルの像」が作られました。そして彼はこの大会期間中に誕生日をむかえます。まさに全仏オープンと相思相愛の選手であると言えますね。

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ジョコがクリアした二つの超難題とは?

テニス界で最も困難な課題(或いはスポーツ界でといってもよい)とは『ラファイエル・ナダルを全仏オープンで倒すこと』であると考えられている」と大会公式ウェブサイトが言っていたのは決して大げさではありません。先述の通り今大会以前はそれをやり遂げたのは二人だけ(その一人がジョコだったのですが)その二人共、優勝はできませんでした。

もうおわかりでしょうか?全仏オープンでナダルに勝ち、なおかつ優勝するという前代未聞の離れ業を今回ノヴァク・ジョコヴィッチがやってしまったのです。(ちなみに去年はナダルがジョコを圧倒して優勝しました)上の写真は、15年間のほとんどを勝者として過ごし自分の庭としてきたパリの赤土のコートを敗者として去るナダルです。泣けますね。。。

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キーワードは「トイレ休憩」⁉

ところで選手はセットとセットの間にトイレ休憩をとっても良いことになっています。詳しいルールはわかりませんが、おそらく2セットやったら一度休憩が取れるようです。今回ジョコヴィッチは4回戦以降の4試合で4セット2回、5セット2回を戦っています。試合時間で言うと、3時間越えが2回、4時間越えが2回です。その4試合はどれもタフな試合でしたが、特に4回戦のムゼッティ戦、準決勝のナダル戦、そして決勝のチチパス戦において彼は「トイレ休憩の後は別人のようだった」と言われています。

ムゼッティ戦とチチパス戦では先に2セットを獲られた後、ナダル戦ではセットカウント1-1となった後トイレ休憩をとっています。ムゼッティはトイレから戻ったジョコに圧倒され最後は棄権。チチパスいわく「トイレから帰ってきた彼は別の選手のようだった。自分のゲームを読まれているように感じた」。そしてジョコ本人も「トイレ休憩の後は別の選手になれたし、チチパスの頭の中に入っていけた」というようなことをインタビューで言っています。

それでもトイレでいったい何が起こっているのか?としつこく訊く記者に、ある時は「下着から何から全部着替えるのさ」と答え、またある時は「あそこには自分だけの特別なコーナーがあってそこへ行くと別人になれる。それがどこかは言えないよ、秘密だ」と答えています。もしかしてドーピング?とも思いましたが、優勝者には当然検査がされるはずだし、食事法を徹底しているジョコがドーピングに手を出すはずがないよな、と思い直しました。

トイレの謎は深まるばかりですが、人生のほぼ全てをテニスに捧げているジョコです。「身体的なトレーニングと同じくらい精神面のトレーニングにも時間を費やしてきた」と言っていますし、彼は「食事で身体は変わる、脳も変わる、生まれ変われる」と著書でも言っています。そのような取り組み全てが今回のような究極のピンチからの脱出・優勝へと結実したのでしょう。

どこか哲学的な「敗者」ナダル

衝撃の敗戦を喫した「絶対的優勝候補」ナダルの反応はと言うと、「私の競技人生の中で最も重要な大会で負けたことはとても残念」また「試合が夜に突入して(気温のせいで)ボールのバウンドが低くなり彼に有利になったかも知れない」しかし「その時の状況により適応した者に勝つ資格がある」とも。「勝つこともあれば負けることもある。それがテニス。これは別に災害ではないから、明日は家に帰り家族と過ごせる。そしてまた勝てるように努力するだけ」。全身全霊で取り組んだ試合も「所詮はゲームだ」と俯瞰しているのがナダルなのです。

「いい人」だから余計に心配なこの人

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オーストリアのドミニク・ティーム(27歳)です。現在は世界ランク5位、この全仏では準優勝2回、全米オープン優勝(2020)、今大会第4シードでしたが1回戦で68位の選手に敗れました。しかも先に2セット獲ってからの逆転負けです。少し前に「自分にはしばらく休養が必要だ」とコートを離れたのちクレイコートシーズン(5月初旬かな)に戻ってきていい成績を残していましたが今回の惨敗。

インタビューでは、「モチベーション的には大丈夫だけど、今回2セット先取してからの負けは腑に落ちない。何かが欠けていたがそれが何かわからない。これから分析しないといけない」というようなことを言っていました。

実は、ランキング上位にいる男子選手たちに「選手で一番仲良いのは誰?」と訊くと「ドミニクだ」と答える選手が結構いるようです。ティームという選手は見るからに実直で、全力で練習し全力で試合し(当たり前?)、他の選手やメディアに対しても誠意ある対応をしてるんじゃないかと想像してます。そんな選手の歯車がどこか少し狂ってきてるようなんです。今後気にして見ていきたいと思います。

さて実は今回、女子にもすごいことが起こったのですがそれは次回にしたいと思います。そうこうしてるうちにウィンブルドンが始まってしまうかもしれませんね(汗)。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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