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お母さん達のチャンピオンシップ ウィンブルドン#3

ウィンブルドンは公式ツイッターで「#ウィンブルドンにまつわるアレコレ(#wimbledonThing)」と題してキャンペーンをしていますが、面白いお題があったので紹介しつつ、試合結果と選手について振り返ってみます。

ウィンブルドンと言えばお母さん?

ウィンブルドンは公式ツイッターで「ウィンブルドンと言えばお母さんを思い出す人手を挙げて✋」という呼びかけをしました。そしてベッカムがお母さんを観戦に招待した画像や、ダイアナ姫がウィリアム王子を連れて観戦する様子と共に、フォロワーが投稿した、”ウィンブルドンとお母さんにまつわるエピソード” などを紹介しています。

選手の名前をとんちんかんに覚えていたり、観に来ている有名人の名前を間違えたり、といった「ああ、どこの国でもお母さんってそうなんやー(笑)」というものや、「ウィンブルドンの2週間、お母さんは家事を完全に放棄する」とか「電話してもすぐに切られる」とか、何かの用事でショートメッセージ送っても、「今ウィンブルドン。後でね」などとめちゃ短く返ってくる、といった、笑えると同時に心温まるエピソードが並んでいました。

母の思い出

そういえば私も子供の頃を思い返すとウィンブルドンの記憶の中には母がいるのです。母はある時、あまりの肩コリを解消すべく、医者のアドバイスに従いテニスクラブに通い始めます。(その影響で私も中学からテニスを始めたのですが)一方父はと言うとそもそもスポーツというものに全く興味がなく、私がテニスにうつつを抜かして成績が落ちていくのを母のせいにしてよく喧嘩していました。(母の肩コリは解消されたそうです)

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当時(30年以上前)ウィンブルドンはNHKで必ず放送されていました。開幕戦は必ず前年の優勝者の1回戦をセンターコートで行います。日本ですと夜の8時頃になります。それまでに夕食を済ませ、いそいそとテレビの前に陣取り、まだ誰も踏んでいない青々とした芝の絨毯を歩いて選手が入場してくるのをワクワクしながら観ていました。「母はアガシのヘアスタイルやサンプラスのズボンを良く思っていなかった」という誰かの返信ツイートを見た途端吹いてしまいました。そういえば私の母もサンプラスのダボっとしたウェアの着こなしと、いつも半開きの口から舌を出しシャキッとしない立ち居振る舞いにいつも文句をつけていたからです(笑)。

フェデラー去る

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前回は、ちょうど記事を書き終わろうかという時に、フーベルト・フルカッチュ vs ロジャー・フェデラーの試合が始まりました。フービーことフルカッチュは2018年に京都で間近にプレイを見て以来「いつかトップクラスに上がってくる」と私がずっと注目してきた選手です。結果はフービーのなんと圧勝でした。

その喜びの一方で、戦い終わって上り調子の若者と握手をする際の元王者の何とも言えない寂しそうな目が忘れられません。その時直感的に「もうフェデラーは辞めるんじゃないか…」と私は思いました。

テニスにおける「サーフェス」とは?

他のスポーツと違ってテニスは「サーフェス」というものがプレイに大きく影響します。サーフェスとは直訳すると「表面」、つまりコートの材質です。今回は(天然)芝。全仏は赤土。全米と全豪はハード(硬いゴム質)。これほど競技する地面の環境が変わるスポーツは他にないと思います。

サッカーならプロの試合は全て天然芝でしょう。野球は内野は土か人工芝か天然芝、外野は天然芝か人工芝とややトリッキーに思いますが、バウンドした球をバットで打つわけではありませんし、守備ではバウンドした球はグラブで獲ります。そこはテニスと大きく違います。卓球、バドミントン、バレーボール他どれを見てもテニスほど足元の環境が変わるスポーツはありません。(当然、靴も3種類必要です)

そのため、選手によって「サーフェスの得手・不得手」があります。大坂さんを例に挙げれば、彼女はハードコートが大好きで、土と芝では能力が半減すると言ってもいいかもしれません。ちなみに芝と土は正反対の性質を持ちます。芝ではボールはあまり高く弾まず、弾んでからもボールのスピードはあまり落ちません。一方、土のコートではボールは高く弾み、弾むとボールの速度は落ちます。ハードコートはその中間と言えます。最もイレギュラーバウンドが起こるのが芝(特に大会後半)、その次が土です。もしもハードコートでイレギュラーバウンドが起こったらおそらくそのコートは欠陥品です。そしてもちろんボールだけでなく、サーフェスの影響はフットワークにも及びます。これは今回雨の影響で多くの選手を悩ませた点です。

サーフェスの法則が当てはまらない選手は?

その点で見ると過去の偉大なチャンピオンもサーフェスで分類できます。芝やハードでいくつものタイトルを獲ったのに、ついに土の全仏では勝てなかったというチャンピオンがいる一方、土の全仏でのみ優勝を経験したという選手も存在します。

しかしこの傾向に唯一当てはまらない選手がいます。ビヨン・ボルグというスウェーデンのレジェンドです(👇写真)。芝のウィンブルドンで5回、土の全仏で6回優勝して25歳で引退しています。全く性質の異なるサーフェスでこれだけ勝った人はその後も出ていません。

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絶対スベらない選手

フェデラーは史上誰よりもこのウィンブルドンの芝を得意とし8回の優勝を誇ります。それからこれは意外と知られていないと思うのですが、フェデラーはほとんどこけない選手です。ジョコビッチやナダルは時々転倒します。それほどフェデラーのフットワークとバランス感覚は素晴らしく、彼の競技人生を支えてきたものだと私は思っています。しかし今大会は彼の「らしくない転倒」を目にしました。フルカッチュ戦でもフットワークがもたつき、あり得ないミスをしていました。切り返しが間に合わず、取れそうだったボールを途中であきらめていました。いつもなら絶対に読み勝つネット際の攻防でイージーミスをしていました。

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二度にわたる手術、来月(8月)には40歳となる現役レジェンドの膝はもうトップレベルの試合には耐えられなくなっているのかもしれません。

乱れた髪を急いで何度もなでつけながらコートを去るフェデラーに哀愁を感じました。ちょうど先月ナダルが赤土のコートを敗者として去った時のように。時代は今確実に変わろうとしています

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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