見出し画像

香りの本棚*『透明な夜の香り』

タイトル:透明な夜の香り
著者:千早 茜
版元:集英社

『ガーデン』に引き続いて、千早茜さんの本。内容紹介にあった、調香師、元書店員といった単語を見て、これは読まないと!ということで、手に取った一冊。

いやー、目次からして、1:Top Note、2:Floral Note…そして、最後は8:Last Noteと、調香をやっている者として、これだけでどんな話が待ち受けているか、ワクワクしました。

小説は、詳しく書くとネタバレして、読む人の楽しさ、醍醐味を奪うことになりかねないので、加減が難しいところですが…。

お話は、人並み外れた嗅覚の調香師の小川朔の家事手伝いとして雇われた若宮一香によって語られます。

「――香りは脳の海馬に直接届いて、香りは、永遠に記憶されるけれど、その永遠には誰も気がつかない。その引き出しになる香りに再び出会うまでは。」

依頼を受けた調香師の朔がこのトリガーとなる香りを作っていきます。腐っているものを嗅ぐと、無意識に顔を背けて、食べないというように、嗅覚は生命維持にかかわる本能的な部分に関係しているので、いろいろな出来事が起こってきます。

目が見えなかったりすれば、眼鏡。聞こえなかったら補聴器。のように不調の訴えがある視覚や聴覚と違い、臭わないというのは気がつかないことも多いらしく、嗅覚は意外と研究が進んでおらず、謎の多い分野ならではのところもあるかな。

ちょっとアロマテラピーをやっているぐらいの私でも、合成香料の強い香りを嗅ぐと気分が悪くなったりするのに、人の汗から病気が分かるくらいの嗅覚だとすると、生きていくことは結構大変だと思います。香りは、良い香りばかりではないし。

そして、「嘘の香り」って私もあると思います。


随所に繊細な香りの描写があって、香りがしてくる感じがしますし、いろいろなイメージがクリアに喚起されますし、「深い紺色の声」なんて表現もあって、五感が刺激される本です。「香りは再起動のスイッチ」という言葉にも大きく頷きました。

自分だったら、どんな香りを作ってもらいたいかな、なんて考えるのもまた愉し。香りに興味がある方は、ぜひ。

#透明な夜の香り #千早茜 #集英社
#atelierbotanicum #香りのある暮らし #アロマ調香デザイナー

#読書 #読書好き #読書録 #本のある暮らし
#booklover #booknerd #bookworm #booklife


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?