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「社会を変えるシステムリーダー」博報堂ミライの事業室室長、吉澤さんが考えるこれからのリーダー像とは。

武蔵野美術大学大学院造形構想研究科
クリエイティブリーダーシップコース
「クリエイティブリーダーシップ特論第13回」
博報堂ミライの事業室室長 :吉澤到さん
11.10.2021

武蔵野美術大学大学院造形構想研究科クリエイティブリーダーシップコース必修である「クリエイティブリーダーシップ特論」では、毎回クリエイティブ×ビジネスを活用し実際に活躍をされているゲスト講師を囲みながら議論を行います。この記事では、講義内容と私自身の気づき、今後の可能性についてまとめています。今回は博報堂の新規事業開部門であるミライの事業室室長を務める吉澤到(よしざわ・いたる)さんからお話伺いました。

吉澤到(よしざわ・いたる)
東京大学文学部卒業。ロンドン・ビジネス・スクール修士(MSc)。
1996年博報堂入社。コピーライター、クリエイティブディレクターとして20年以上に渡り国内外の大手企業のマーケティング戦略、ブランディング、ビジョン策定などに従事。その後海外留学、ブランド・イノベーションデザイン局 局長代理を経て、2019年4月、博報堂初の新規事業開発組織「ミライの事業室」室長に就任。クリエイティブグローススタジオ「TEKO」メンバー。
著書に「イノベーションデザイン~博報堂流、未来の事業のつくり方」(日経BP社)他(参考:https://mirai-biz.jp/business-development/45/)

吉澤さんのキャリアをざっとまとめます。
①新卒で博報堂へ入社、コピーライターとしての職を務める
②40代にして初めての海外留学、ロンドン・ビジネス・スクールにてMScを取得する
③2019年4月からは博報堂初となる新規事業開発組織「ミライの事業室」にて室長を務めている

今回のnoteではそれぞれの段階のお話の中で興味深かった点をピックアップしてまとめます。(途中個人的な解釈が含まれます。)

コピーライトとは経営そのものである

吉澤さんは、「コピーライトとは経営そのものなのではないか。」と仰います。コピーライトとは企業の存在意義(パーパス)を端的に表現し、定めた意義を実現するために人々を巻き込み動かす力を持っているのではないかと。中でも、「良いコピーとは本質をつきつつも曖昧さを残すもの」という言葉が印象的で、意図としては個々人が自分なりに思考しコピーを解釈する余地が生まれることで、メッセージが自分ごと化すると仰っていました。

前も一度紹介しましたが、「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」という本でも、コピーライトについて言及されており、コピーライトには企業のコアな価値観が表現されている必要があるとのことです。


「自分の弔辞で何を読まれたいか?」
ビジネススクールで問われる「生き方の哲学」

長らくクリエイターとして活躍されていた吉澤さん。そのままでも良かったはずですが、40代で初めてのMBA留学を決断。「もっと経営者の頭の中を見て見たかった。」からだそうで、いくつになっても「〜したい」を軸に新しいことに挑戦する姿勢が理想の大人です。
やらない・やれない理由を見つけるのではなく、やりたいことをするためにどうしたらいんだ?とアクションできるおばあちゃんになりたいなと思います。

さて、MBAではここ最近学びの内容にも変化があるそうで。算数のハード面だけではなく、「なぜそれをやるのか?何のためにやるのか?」など哲学(倫理観・価値観)や心理学を問うようなソフト面での学びが重視されていたと仰います。

「自分の弔辞で何を読まれたいか?」を文章にする講義もあったとのことで、生き方を問われる時代なんだと思います。

(最近親族に不幸があった私はまさにこの問いを考えていたタイミングでして。自分が他界するときどのように看取られたいか。はどのように生きたいかを考える上での本質だと思います。「どんな人に?どんな表情で?どんな言葉をかけられたい?」と自分に問うことで、やりたいことや大切にしたい価値観が見えてくるような気がしました。)

儲けるだけの株主市場主義の企業はもはや価値を見出せなくなってきているVUCAの時代。サイモンシネックによって「ゴールデンサークル」が言及され始めてから約10年以上経ちますが、whyを企業も問われているんだな、と。そして企業は人によってつくられるものなので、人(経営者)が「なぜ?何のために?」を考えることは自然なことだと思います。

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周囲を巻き込み社会を変える力
これからの時代に求められるリーダーシップとは

「ミライの事業室」の室長を務め、今では200人を超える規模の組織のリーダーを務める吉澤さん。様々な組織やセクターが関わりあう現代の社会構造の中で生まれる複雑な問題を解決するためには、「システムリーダー」が求められていると言います。

講義では、つい最近出版された『これからの「社会の変え方」を、探しにいこう。――スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー ベストセレクション10』にも収録されている、ピーター・センゲ Peter Senge / ハル・ハミルトン Hal Hamilton / ジョン・カニア John Kaniaの論文「システムリーダーシップの夜明け:変化を起こすのではなく、変化が生まれるように導く」を引用されていました。

「システムリーダー」とは、問題に関わる多くの人々を支援し、「自分も変わるべきシステムの一部なのだ」と気づかせ、それぞれが変化を起こせるように導く存在であり、複雑なシステム全体を変化させる可能性を秘めている存在です。

そんな「システムリーダー」には3つの開放が必要だと書いてあります。

思考を開く:前提を再検討する
を開く:自分の弱さを見せ、違いに本当の意味で傾聴し合う
意志を開く:すでに決まっている目標や課題を手放し、本当に必要なことや実現できることに目を向ける

記事では、ネルソン・マンデラが例として取り上げられています。私は現代ではユニリーバの前会長ポール・ポールマンがまさにその一人ではないかと思います。

数年前に直接会話をさせていただく機会があったのですが、事業としての前提や社会の前提を捉えなおし、実際に困っている人々が暮らす地域へ会長自ら何度も足を運び、現地の人々との交流から得たインサイトに対して、自分はあるいは会社は何をすべきか本気で考える。彼の社会課題の解決に対する姿勢や本気で変えたいという想いはもちろん、実際に人を巻き込みながら社会的なインパクトを創出する力は並大抵ではないと感じました。

私のロールモデルです。

(※余談ですが、彼の周りには常に人がいる印象です。当時大学生だったヒヨッコもヒヨッコの私の話にも一生懸命に耳を貸していただき、彼の魅力的な人柄には生き方のスタンスが表れていると思いました。これは先程のMBAでの学びで述べた「哲学」倫理観や価値観にも繋がる話だと思います。)

長年のクリエイティブバックグランドを強みとしながら、多大な活躍貢献をされている吉澤さん。

新しいことにチャレンジする人は魅力的だと思う。
そしてそんな行動が周囲を動かすきっかけになるのではないかと。
武蔵美の院は社会人が約3割ですが、みんなそれぞれに忙しい中で時間を見つけ学問に励む姿は近くで見ていても素敵だな〜と思います。(もちろん社会人以外の同期や先輩もそれぞれに良いとこだらけですが!)

70歳のインスタグランマ「内藤朝美」さんとかも多くの人に勇気を与える存在なんだろうな。

いくつになっても、「会うと元気でる!」だったり「ちょんりがやってるからちょっとやってみようと勇気出たよ〜」と周囲をチアしながら社会に貢献できる存在になりたいなと思った回でした。

2021/10/19

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