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山崎大輝さん:煌めきと生命力

先日、東京建物ブリリアホールで上演中のミュージカル『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』に行ってきた。

昨年、以前の記事でも言及したミュージカル『スリルミー』を観てから、ずっと山崎大輝さんが気になっていた。今回彼が出るというので、是非とも観たいと思っていたのだ。

本作での山崎さんは、主人公の娘に一目ぼれする船乗りの青年役で、狂気にまみれた登場人物たちの中では一番「まとも」に見える役どころだ。

漂流していた主人公を助けたり、物乞いに乞われたら笑顔で小銭を渡したりと、人の好い部分がいくつもある。

一目ぼれをしたら一生懸命アピールし、想いが叶ったら抱きしめて!キスして!と、どこまでも真っすぐでかわいらしい。

シリアスでホラー要素のある本作の中では、彼と主人公娘カップルのシーンは良い意味で浮いていて、思わず笑みが浮かんでしまうような感じだ。

ところで、本作で主人公娘を好いている男はもう一人いる。彼女の養父で、清潔感のないおじさんなのに、自分が養娘と結婚すべきだと思っている。
養父は主人公娘を幽閉し、強く結婚を迫り、性的な関係を持とうとしている。率直な感想は、「気持ち悪い」だ。

けれど、劇中で気づく瞬間があった。「この二人の男は、本質ではおなじじゃないか」と。
彼らは自分の欲望に忠実だ。欲望を満たすために突き進むし、彼女が自分を拒絶するなんてありえないと思っているようにも見える。

これは今とは違い、もっと死が身近にあったせいかもしれないし、男尊女卑的な価値観があった時代だからかもしれない。
いずれにしろ、二人の同一性に気づいたとき、この青年は思ったより「まとも」じゃないかもしれないな、という視点が出てきて、そうするともう、「まとも」には見えなかったのだ。

帰宅してから山崎さんのインタビューを読んだら、彼自身、演じる青年について「ピュアを通り越して病的だな」と語っていた(https://horipro-stage.jp/special/int_20240215/)。
そのニュアンスの出し方が素晴らしかったし、欲望に忠実に今を生きている人の煌めきというか生命力というか、そういうものが彼の体中から発せられているように感じられて、また一つ稀有な観劇体験をしてしまったなと思っている。

山崎大輝さん、すごい。これからも是非観にいきたいと思います。


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