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「願立剣術物語」を読んでみました。

原文

つり合うということ。
前に言い尽くすといえども、是万事の根本たるゆえによくよく合点したき事なり。
人も水火の性に剋せしめ五行をつり合わせ鳥獣も同じ。
鳥の鳥を取る事、鷹はつり合いよきゆえぞ。
人の人に勝つもつり合いよきゆえぞ。
獣の獣に勝つもつり合い。
鳥の空を飛ぶ事つばさ延ばして空の風をあおぎ飛行をなす。
足なき物の地を走る性、魚の水に遊ぶも皆つり合いなり。
このつり合い離れては鳥は地に落ち、魚は水上に浮くなり。
この流の宗と修行する事はただ心のつり合うを以って身のつり合うを勤むべき事。
眼心身一致せしめ討つも滞りなく無病の身と成り、思う処ひとつもなくんば楽しみ遊ぶより外はなし。
是、外に求めるにあらず。

解釈

つり合うということ。
前にも言ったことであるが全ての根本原則なのでよく理解しておきたいものである。
人が水や火をつり合わせて生活しているように鳥や獣もつり合いの中で生きている。
鷹が獲物の鳥を捉まえることができるのはつり合っているからだ。
人が人に勝つのもつり合っているからだ。
獣が獣に勝つのもつり合っているから。
鳥が空を飛ぶとき翼をひろげて空の風をあおいで飛ぶ。
足のない生き物が地面を這う、魚が水中で泳ぐのもつり合いである。
このつり合いをはなれては、鳥は地に落ち、魚は水上に浮いてしまう。
この流派で大切に修行すべきことは、心のつり合いをもって体のつり合いに努めること。
眼・心・体を一致させて討つときに力みもなくスムーズに動き、こだわることが一つもなくなれば、遊びのように楽しむだけだ。
これはつり合うことによってしかできないことだ。

コメント

相手を自分の支えにしない。
自分も相手の支えにならない。
お互いに独立しながらついていく。
そこから技が生まれる。




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