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活動システムマップで新規事業2:企業活動から強みを見つけるフレームワーク

前回の記事では事業開発の起点の分類、既存事業の強みから発想する場合のアプローチの1つとして活動システムマップのご紹介をさせていただきました。今回は具体的に活動システムマップを書いていくステップをご紹介したいと思います。


自社の活動システムマップを考えてみる

まず、活動システムマップを書く上での前提ですが事業部単位で作成します。※複数の事業があり、その中で優位性を検討したい場合は事業部ごとに作成してください。

次の5ステップで書いていきます。

1.優位性のある提供価値の洗い出し
製品・サービスを通じて顧客にどういう価値を提供していて、それは他社と比べてどのような差別化をしているか?

2.戦略的な選択の洗い出し
優位性のある提供価値をもたらすために行った一連の主要な選択は何か?そのためにやらなかったこと(トレードオフ)は何か?​

3.活動の洗い出し
戦略的な選択はどのような活動に支えられているか?​

4.経営資源の洗い出し
どのような経営資源によって支えられているか?​
(上記活動の結果もここに分類)​

5.強みの抽出
活動システムマップで描いた活動と経営資源の組み合わせの中で強みとして切り出せる部分は何か?

青山フラワーマーケットの例

具体的な例として、2009年にポーター賞を受賞した青山フラワーマーケット(株式会社パーク・コーポレーション青山フラワーマーケット事業部)の例を上げさせていただきます。

青山フラワーマーケットのターゲットは法人ではなく個人で、ギフト需要ではなく日常使いの花を販売、花の販売だけでなく、繁華街にある店舗での購買体験や家で花を飾る時間までも含んだ「花のある時間と空間」を提供価値としています。

1.優位性のある提供価値の洗い出し​

青山フラワーマーケットは個人の日常使いのニーズに特化し、モノとしての生花の販売だけではなく店舗での購買から自宅での体験までを含めた花のある時間と空間を提供しています。これは他の生花販売業者が法人向けギフト需要のニーズに対応しているものと差別化しています。


​2.戦略的な選択の洗い出し


次に1の優位性のある提供価値を支えるためになされた戦略的な選択の主なものを紹介します。
1つ目は法人・ギフト需要ではなく、個人が日常に飾るニーズに特化し、キッチンやリビング、ダイニングに飾るブーケなどを販売しているライフスタイルブーケとした商品を売ると言う選択。
2つ目は通常個人向けの花屋で多く見られる住宅街や商店街への出店が多いところではなく、人通りの多い駅構内やデパートの入口など人通りが多いところへ出店するという選択。
3つ目は多店舗展開する業態で多いコスト削減を目的に一括仕入れを行うのではなく、店舗の立地に合わせたのニーズに合わせるため発注や、スタッフの採用に関しても店舗への権限移譲を行うなどの選択があります。
そのほか差別化要因として洗練されたイメージ手頃な価格も戦略的な選択として挙げられています。

このように、何を選択したか(選択しなかったか)に着目してマップを記入していくことがポイントです。

3.活動の洗い出し

次に、2の戦略的な選択を支えている具体的な活動を記入していきます。

例えば、戦略的な選択であるライフスタイルブーケを実現するための活動としては作業場を見せないことで顧客が気持ちよく花を選べるようにしたこと(店のバックヤード作業)、ブーケのデザイン、ファサードや棚、バケツ、花瓶などの店舗デザイン、販売するハサミやナイフなどもオリジナルで開発している(商品開発店舗デザインを内製化)。後者は他の戦略的な選択である洗練されたイメージにも寄与している。また顧客ニーズにあった新しい品種を多作するために、生産者だる農家を探索している(生産者との交流)という別の活動に支えられています。

4.経営資源の洗い出し

次のステップは、前述の活動がどのような経営資源によって支えられているか?​を記載していきます。活動の結果もたらされた成果についてもここに分類していきます。また、資源を生み出すための活動がある場合はそちらも記載してください。

ここまでで優位性を支える活動と資源を可視化した活動システムマップが完成しました。

5.強みの抽出


最後のステップでは活動システムマップで描いた活動と経営資源の組み合わせの中で、強みとして切り出せる部分は何かということを検討します。1つ1つの要素だけでは強みとならないものでも、要素のセットを1つの強みとして捉えられないか?という視点で見ていきます。ここからは実際のマップを見ながらの試行錯誤が必要ですが、その際のポイントとしては下記が挙げられます。

  • 優位性の1つ1つとその構成要素だけで強みとして成立できないか?

  • 優位性を複数組み合わせて強みとして成立できないか?

  • 強い経営資源に活動を組み合わせることでよりよい強みとならないか?

  • 個別の商材や業種特有の要素を抜いても成立するか?


青山フラワーマーケットの場合は3つの強みを抽出することができました。

自律的な店舗運営が可能な仕組みを構築できる
→「店舗への権限移譲」とその関連する活動から抽出
低単価商品の小売を繁華街で成立させられる
→「手頃な価格」と「人通りが多いところへ出店」に関連する活動から抽出
顧客の時間と空間を劇的に変えることができる
→「Private&Dailyな時間と空間を売る」に関連する活動から抽出

他社の活動システムマップの紹介

ここで自社の活動システムマップを書く際の参考になるように、ポーター賞を受賞した企業から個人的に興味深いと考えた活動システムマップと、戦略的選択・トレードオフと支える活動をご紹介したいと思います。システムマップはリンク先でご覧ください。

2014年 株式会社ZOZO(受賞時 株式会社スタートトゥデイ)

説明不要なアパレルECサイトですが当時、ZOZOTOWNが成功するまではファッション性の高いアパレル製品をオンラインで販売することは難しいと考えられていました。ブランドの価値観を崩さないサイトだけでなく、物流・システムも自社開発することにより高い利便性をもつECサービスを構築しました。

戦略的選択:「ZOZO BASEでの自社物流」
活動:「短いリードタイムの実現」「自社開発の物流システム」

2019年 株式会社ワークマン

建築に従事するプロ顧客向けワークウエアの専門店チェーンでフランチャイズにて運営されています。近年ではアウトドアやバイカーなどの趣味用途での一般消費者も増加しています。製品は分けて開発せずに平均5年の商品寿命を考えて計画されています。

戦略的選択:「法人向け販売を行わない」「値引き販売を行わない」
活動:「買い取り型VMI(ワークマンが需要予測をし、ベンダーの判断で納入したものを全量買取)」

2003年 株式会社シマノ バイシクルコンポーネンツ事業部

SHIMANO、と聞いて釣具を思い浮かべる方と自転車を思い浮かべる方両方いるかと思いますがこちらは自転車の事業になります。シマノは自転車の操作性、安全性など重要な機能を決定する部品に特化し、それらをシステム化することによって、単独部品の組み合わせでは提供できない機能と使いやすさと快適性をエンドユーザーに提供しています。ハイエンドは「DURA-ACE」、エントリークラスでは「105」などランクごとに名前がつけられていて、自転車選びの一つの指標になっています。自転車の本体フレームを変えてコンポーネントを載せ替えるなども当たり前に行われています。

戦略的選択:「自転車部品のシステムコンポーネント化」「システム化に関係ない製品は開発しない」「OEMをしない」「完成車メーカーのニーズに応じた製品開発をしない」
活動:「販売店への手厚いサポート」「自転車愛好家への直接的アピール」


次回は活動システムマップにより可視化した、優位性をもたらす活動から抽出した強みを使って具体的な事業を考えていきたいと思います。


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