【連続note小説】日向食堂 小日向真司55歳
歳之にも家族ができていた。
きれいな奥さんと女の子が一人、名前を恵子と千秋と言った。
仕事の都合で、遠く離れて暮らしていて真司とは疎遠だった。
ある日、歳之の家族が3人でふらっと日向食堂にやってきた。
歳之:「久しぶりに兄さんの料理を食べにきたよ」
恵子はこの兄弟の過去を知っている。
疎遠ながらも真司のファンだった。
3人はそれぞれに料理を注文し、それを食べ始めた。
しばらくすると恵子がしくしくと泣き始めた。
その様子を見た吾郎は思った。
"あの時のおれと同じだ"
心配した歳之が涙の理由を聞いた。
恵子:「勝手に涙がでてきて・・・。
なんて言うか、料理を食べたら優しい気持ちなるけど、少し悲しさも感じて・・・。
不思議な気持ちになるの」
歳之:「作る人や魂ってのが料理にも宿るのかな。
兄さんは優しくて、人の悲しみを背負って生きてきた人だからね。
それとも優しい人どうしが共鳴し合うのかな」
吾郎はその時子供だったから自分の気持ちを表現することができなかったが、同じようや感覚を持ったことを思い出していた。
千秋が皆の顔を不思議そうに見ていた。
<続く…>
<前回のお話はこちら>
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