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「小五郎は逃げない」番外編 寅之助ってどんな犬?

 ここまでの寅之助の活躍、いかがでしたか。
 最終章も大活躍する寅之助は、土佐犬をイメージしています。土佐犬は一般的に闘犬として知られ、土佐の出身で孤独な暗殺者・岡田以蔵の相棒として描かれています。
 
 写真の土佐犬はいかにも獰猛そうな顔をしていますねぇ。こんな犬に追いかけられたら、私なら命の危険を感じて逃げ惑うでしょう。

「Times行ってみよう!たのしい街」さんの画像をお借りしました
https://www.timesclub.jp/sp/tanomachi_ex/kochi/kochi/002.html

 岡田以蔵については、天涯孤独に生きていたようなのイメージがあるかもしれません。しかし人は一生孤独に生きるなんてできるのでしょうか。
 幼少の頃から下級武士として裕福な暮らしとは縁がなく、自分の存在価値を見出せなかった以蔵は、幕末の動乱の時代にいつ朽ち果てるともわからない暗殺者に身を投じました。そんな暗闇を彷徨ようような日々の中で、だれにも頼らず、孤独に生きていくことができたでしょうか。実際のところはよく知りません。私はそんな以蔵にも心を許せる相棒がいてくれたら、彼の薄暗い人生にほんの少しの日が差したのではないかと思っています。
 寅之助は以蔵にとって兄弟のような存在です。つかず離れず、だからと言ってお互いの心の中から存在が消えるようなことは一度もなかったのです。
 
 寅之助は以蔵と共に江戸に行きました。以蔵が龍馬に黙って勝手に連れて行ったのです。何と以蔵はボディガードすべき高杉晋作の家に居候してしまうのですが、ずうずうしくも寅之助まで世話になってしまいました。面倒見のいい高杉は、寅之助のことをかわいがったそうです。しかし寅之助は高杉にはそれほど懐きませんでした。元々子犬の時から人に虐げられてきたから、以蔵以外の人には心を許せなかったのでしょう。そんな寅之助なのに極めて愛想のない桂には懐いてしまうのですから、犬の気持ちはよくわかりません。
 
 写真の土佐件は闘犬の猛者ですが、それとは違って寅之助はやせ細った汚い犬です。何せ三食に握り飯一個しか食べていませんから、写真のような丸々とした体格にはなれませんよね。しかし面構えだけは他の土佐犬に負けていません。生きていくためには寅之助もいろんなところで戦ってきました。街で野犬の集団に襲われることは四六時中。暇つぶしの武士の気晴らしのために、刀で斬られそうになったこともありました。刀を持った武士の集団に追いかけ回され、路地裏の袋小河路に追い込まれたら戦うしかありません。寅之助は体中に怪我を負って命からがら逃げだすのでした。それでもみじめで情けない自分の人生を卑下するようなことは一切思わず、堂々と生きてきました。そう言うところで桂と心を通わせることができたのかもしれませんね。
 
 寅之助はまだまだ戦います。これからの活躍にご期待ください!


<前回のお話はこちら>

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