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【連続note小説】日向食堂 小日向真司4歳

真司の身長も伸びてきて、一人でトイレにも行けるようになった。
お箸の持ち方もすぐに習得したし、服も自分で着替えられる。
真司は何でも呑み込みが早くて手が掛からなかった。
誠司も文枝も真司の成長に目を見張った。
 
「文枝、よその子はこんなに手が掛からないのか?」
「それが・・・、この子は少し違うみたい」
あまり手が掛からなくて、行儀がいいことに二人は返って真司がおかしいのではないかと懸念するようになった。
親とは我が子が人並みであることで安心するものなのだろうか。
 
誠司の給料が少しずつではある増えたので、小日向家はもう少し広いアパートに引っ越しすることにした。
真司も小学生になれば自分の部屋も必要だろうし、先々になって家族が増えるかもしれないと誠司は考えた。
 
新居を初めて見た真司が言った。
「お母さん、こんな広いおうちに住めるのぉ。よかったね」
そう言って自分の手を握ってくる真司を見て、文枝は思わず涙が出そうになった。
「この子は、周りの人を幸せにするために生まれてきたんだろうか。なんて優しい子」
文枝はぽつりと言った。


真司が生まれてから人生を全うするまでを連載小説として描いていきます。

<続く……>

<前回のお話はこちら>

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