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星屑132 わけるはなし

2018年2月19日

 どたばたと始まった卒業・修了制作展もいつの間にか会期を終えました。恐縮ながら修了制作が優秀賞をいただき、学部の卒業制作にひきつづいて賞をいただくかたちとなりました。学部と大学院両方で優秀賞をいただいたのは史上二人目だそうです。快挙!

 修了制作では改めて本の価値について見直し、私が今後どのように関わりたいのかを考える時間になりました。出版業界は年々縮小し、本の未来は危ういと言われて久しいですが、その一方で個人出版や、アートブックフェアやコミケなどの一般参加型のイベントが注目を浴び、ZINEやリトルプレスなどを中心に誰でも気軽に本を作れる機会が増えました。市場は書店だけでなくイベントやネット販売など選択肢もふえ、一概に本の未来が危ういとは言えないのではないかと考えるようになりました。少部数で本を作ることができる、取次を介さずとも自由に本を売ることができる。これがどういうことかというと、自分のしたいこと、例えば装幀にこだわりたいだとか、特定の場所でしか販売しないといった選択が容易になります。予算や単価もある程度自分で決定することができます。私はそのようなリトルプレス寄りで、なおかつある程度数を作ることのできる、複製可能な本を作りたいと考えて制作していました。

 絵画とデザインは全くの別物で、同じデザインでも自分の表現を絵画のようにデザイン物に落とし込む人と、誰かが表現したいことを具現化する為にデザインする人とでは、スタンスも捉え方も随分と違うように思います。私は依頼を受けて制作する時、自分が表現したいことと他者が表現したいことの区別がつかずに、中途半端なことをしていた時期がありました。自由にやっていいから、と言われたけどなかなか先方が納得してくれない、自分の制作と仕事の境目がわからない。その境目を意識できるようになったのはここ一、二年のことです。私は表現者ではなくデザイナーになりたい、誰かがやりたい表現を具現化すること、より良い方向になるように提案すること。常に俯瞰から見渡しフォローをすること。

 自分がしたいことがわかった途端、表現もより自由になったような気がします。自分のできる選択肢の中から選ぶのではなく、より幅広い表現を吸収しながら選ぶことができるようになりました。修了制作がその最たるもので、先生方からまさにそのように評価を頂いた時はとても嬉しかったです。

 まだまだ駆け出しですが、これからもこの意識を忘れずにいたいです。


自費出版・完全手製本で冊子版星屑を制作しています。第三弾の制作費のサポートよろしければお願いします!