「がんばれ、って言われると嬉しいんだよね」白血病で闘病していた母は言いました。

こんにちは。人形服作りのりんごぽんです。


私の母は、急性骨髄性白血病になり、9年前に他界しました。55歳でした。

まだ、私の一番上の子が1歳のときでした。

病室に子どもは連れていけないので、時々通うことしかできなかったのですが
抗がん剤治療をしているときに、病院の母に会いに行きました。

そのときに言われたのです。


「私、がんばれって言われると嬉しいんだよね」。


 「がんばれ」という言葉は、私にとってとても怖い言葉です。

すでにがんばりすぎるほどがんばっている人に、「がんばれ」と声をかけたら
「これ以上どうがんばったらいいの?」と追い詰めてしまう、怖い言葉。
仕事上でも、相手によっては決して使うことのなかった、
取り扱い注意の言葉でした。

 白血病は、血液のガンです。
 死にむかう病で、これ以上ないくらいに辛い治療をがんばっている母に、
さらに「がんばれ」ということは、そのときの私にはできませんでした。


「お母さん、がんばって」
そう声をかけることで、母の負担になることが怖かったのです。


母が亡くなって数年してから、やっとわかるようになりました。
母は、「がんばれ」と言ってほしかったのに。
「母の負担になるのが怖い」と、私は自分の身を守ってしまったのです。

もしかしたら、「がんばれ」と言えたら
もっと希望を持てたかもしれないのに。


そしてさらに、わかったのです。
「がんばれ」とも言えないほどまずい状況なのを、
自覚するのはどれほど怖かったことでしょう。
もっと軽い病気なら、
もっともっと気楽に「がんばれ」と言ってもらえたかもしれない。
「がんばれ」と言われないことで、
がんばっても到底病気が治りっこない、という
あきらめを渡してしまっていなかったかな、と。


母が亡くなる時、
遠くに住んでいる姉妹が3人とも揃うことができました。
静かであかるいICUで
和やかに笑って、思い出話しをしながら
母を見送ることができました。

「本当にがんばったよね。今まで本当にありがとう」
そう、言葉を送ることもできました。


本当は、生前に渡したかった、
「がんばれ」の言葉。

今は、私のやれることをがんばることで
天国の母に渡し続けていきたいなあと思っています。

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