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fio 鈴木順子

リンネノート

わぁ、すごくかわいい!

リンネバーで、小さなボタンがギュッと詰まったアクセサリーを見たお客さんはみんなその可愛さに目が釘付けになる。

これは両国にある福祉作業所(fio)で作られた商品。
利用者さんが職人として製品作りに携わっている。

こころの病を持った人が街に溶け込んで行くために


fioの母体である医療法人社団草思会は、精神科のクリニックとして心の病を持つ人のケアに25年以上関わってきた。草分け的な存在。

外来だけではどうしてもいき届かない、生活リズムや、人間関係の悩み、生活全般のサポートのために、デイケア・ナイトケア、訪問看護ステーションといった支援を街の中に沢山作って、病を持った人でものびのびと自然体で街に暮らせるよう地域連携のスタイルを大切にしている。

さらに2015年、こころに病を抱えた人々が「自尊心」を保ち、「豊かな生活」を送れるよう就労支援施設、一般に言う福祉作業所をスタートさせる。
その一つがfioだ。

つながり、出会いから生まれたピッコロ・フィオーレ


カラフルで個性的、唯一無二のアクセサリーは見ているだけでココロが弾む。そんなピッコロフィオーレ(イタリア語で「小さなお花」)と名づけられたアクセサリーは地域の様々なつながりと出会いから生まれた。

当初、企業等から袋詰などの内職をもらって利用者が就労訓練した作業報酬(工賃)を稼いでいた。
運営を任されていた公認心理士の鈴木さんはそれだけではおもしろくないと考え、なにか手作りですてきなモノは作れないかと思いはじめる。

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fioのスタッフはほとんどがクリニックで働いていた看護師、精神保健福祉士、公認心理士など医療・福祉の専門スタッフだ。ものづくりの経験がない中で、fio独自のハンドメイド作品が出来ないかと、本や、手芸教室に通って勉強しはじめた。

まず目を付けたのが、コットンパールのアクセサリー。
「まあまあかわいいんだけどね。かわいいんだけど、垢ぬけない感じ(笑)」

そんな試行錯誤を繰り返していた時に墨田区で地域連携型の福祉プロジェクト、「すみのわ」が立ち上がった。

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墨田区が福祉作業所にクリエーターを派遣し、協働でものづくりをおこなう。鈴木さんはこれはチャンス!と思い直ぐに連絡をした。

この行政の支援プロジェクトがきっかけとなって出会えたのがクリエイターの小岩さんだ。

彼女もまた、精神障がい者とのものづくりに強い想いを持っていた。芸大を卒業後、精神保健福祉士の資格を取得。精神障がいの方とものづくりがしたいという想いから、イタリアでモザイクアクセサリーの勉強をしていた。

彼女は帰国したタイミングで「すみのわ」を知り、コーディネーターの三田さんに精神科の患者さんの支援がしたいと相談する。

そして小岩さんとfioが繋がり、オリジナルアクセサリーの制作がはじまった。


素材集めもまた、「つながり」から

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小岩さんと始まったオリジナルアクセサリーづくりには特徴的な素材が必要だった。この素材集めでもすてきな出会いと、地域のネットワークがあった。

ピッコロフィオーレはビンテージのボタンとビーズで作られている。
このボタンを使うきっかけになったのが、「吾妻橋パーラー」(2019年閉店)。
いつか自閉症の息子の働き場所になれば…という想いでカフェを経営されているマダムは大のボタン好き。彼女との出会いがきっかけとなり、ボタンをメインにアクセサリーを行うことになった。

ボタンは新しいものではなく不要になったものをいただいている。就労支援事業がはじまる以前から病院主催のバザーを頻繁に行っていたため、寄付の文化や土壌があった。このような職員や地域の方、関わる方々の支えがあってこそ、日々すてきなピッコロフィオーレが生まれている。

自分の世界を表現し、社会とつながる


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日常生活の能力を少しずつ成長させ、評価を得て自信を得る。それが就労支援、福祉作業所の目的だ。

制作を通じて利用者は自分のこころと向き合うと同時に作業課題に対する向き合い方を学んでいく。

抽象的な感情、想いを形に落とし込んでいく作業は一人ひとりの個性が光る。

そのような世界に一つだけの自分の「分身」が世のなかに出て、誰かのもとへ届くというのは、彼らにとって社会とつながり、自分が認められた自信になっていくのではないだろうか。

「すみのわ」の支援から、作業所のオリジナリティが出てきた。

そんな話をしてくれる鈴木さんはとても嬉しそうだ。

主体的なものづくりがコミュニケーションを活発にさせる


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fioでは月に1度小岩さんによるワークショップで色彩学を学んでいる。

こころの病を持っている人は色に対するイメージが大きくずれていることがある。

色彩の学びを通して、その色の持つイメージや与える印象の認識のずれを学び、ピッコロフィオーレの創作活動を底上げするとともに社会生活も整っていく。

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単純作業ではない、ひとりひとりの能動的なものづくりが、精神障がいを抱える方々の自尊心やこころのよりどころになっているのではないだろうか。

「こころの充実とピッコロで表現するモノはつながっているんです。生活が生き生きしていると、ピッコロも生き生きするんです。」

ピッコロフィオーレの魅力は一人ひとりの想いや個性を活かし、時間をかけ丁寧に作られていることだ。

「人はひとりでは生きられない」

言われ慣れた言葉だけれど、心に病を持った人ならなおさらに、人の助けが必要で、地域社会から閉ざされれば更に自分に閉じこもってしまうだろう。

彼らのこころ模様が詰まったアクセサリーをみつめると、私たちの生活や社会のつながりを彩る、まさに小さなお花だなと感じた。

ぜひ、いろんな人の手にとってもらいたい。

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取材:小島 幸代
文:小島 幸代、山浦あかり


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