瑯琊榜にドはまりして、沈黙を学ぶ。

「瑯琊榜」(ろうやぼう)という、ドラマをご存知だろうか?
まだこのドラマを知らないという人が非常にうらやましい。

全54話あり、中国の時代物というハードルを軽々と超える面白さ。何より、なんだかんだ製作費が半端ないので、セット(戦場のシーンであそこまで火薬や本物の馬を使った撮影って、黒澤明以来でした)もお衣装も豪華で、美しい。2015年に放送されて、中国のエミー賞を総なめしたという、大変にクオリティの高いドラマ。

ストーリーは、梁の皇帝の世継ぎ争いに隠された“宮廷復讐劇”。余りにも壮大&細かいところまで完璧なストーリー設定されており、私の手には負えないので、こちらのあらすじを読んでください。

このドラマのAmazonでの評価も、ものすごく高い。(私も★★★★★つけます)

このドラマの何が魅力か?と問われると、「登場人物の人間性」に尽きる。
時代は違えど、人の良心、猜疑心、誰かを大切に思う心、自分だけが得をしたいという気持ち、恨み、妬み…そういったものが余すところなく、出てくる。悪役も、結局「己の欲」のために動いた結果、悲劇を迎える。

何より、私がこのドラマで印象的だったのは、「静かに、自分の役割を淡々とこなしながら状況を見極めること」の大切さ。
登場人物の中に、皇帝の側室の静妃という女性が出てくる。後宮で生活しながらも、元は医女というキャリアを生かして周りのものと安らかな生活を送っていた。息子が来たら点心を作ってもてなし、他の側室の体調が悪いときけば薬を煎じ、使いに持って行かせ、決して華美なものは求めない暮らしを送っていた。
皇帝の世継ぎに自分の息子がなりたい、と言った時も、その道がどれだけ険しいかを息子に伝えつつも、息子の願いが実現するよう、尽力していく。

静妃の素晴らしさを語らせたら、2日は持つくらい話せるのだが、何より、本当に大事なこと以外、口にしない、というのは、2019年の東京でも、とても有効だと思う。
よく「口にしたことは実現する」というような話も聞くし、“言霊”という言葉もある通り、昔から日本では、言葉には力が宿っていると信じられている。
ただ、2019年の東京で暮らしていると、自分が思っていないことや軽口を叩く人は、リアルでもSNSでもとても多く見られる。その全てが悪いとは言わない。必要に迫られる場合もある。
そこで別に話さなくてもいい、黙っている、という選択肢があることを静妃に教えてもらった。実際、そういう場面に出くわした時に、黙っていても、周囲の会話や会議は自然と進む。それが、自分の思った方向とは違っても、コミュニケーションには支障ない。
何より、黙っていれば、状況を俯瞰的にとらえることが出来て、自分自身どうしたらいいか?を冷静に考えられる。しゃべるとしゃべるだけ、自分の思考がだだ漏れのため、思考が深まることはなく、主観的なものにとどまってしまう。

特に、大勢の人が関わるビジネスの場では、まずは黙っている=聞く側にまわるべきだと痛感している。相手の話や周りの意見を聞いているうちに、話の肝の部分が、自然と分かってくるのだ。そのため、今後の自分の動き方が明確になり、やることに無駄がなくなる。(後輩や部下への指示もシンプルになる)。ポジションが上であればあるほど、まずは相手に耳を傾けるべきだと思うようになった。

これまでどれだけ無駄なことをしゃべっていたのだろう?と思って、私自身かなり凹んだが、瑯琊榜を観ていたおかげで「静謐」の素晴らしさにようやく気付けた。ありがとう、琅琊榜。

このドラマ、「中間管理職」とかマネージメントがメインの仕事になっている人には、本当に学びしかないと思う。

何より、ここまで素敵なセットとお衣装を拝めるドラマって、今、そうそうないので、本当に見応えがある。4年に1回のペースで、見直すドラマになると思います。


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