彼は引くほど、素直だった。
「ねえ、もう友達になりたい」
『もう、ストレートでいいよ』
「…別れたい」
*
随分と投稿していなかったが、2ヶ月前に彼氏ができた。そして、別れた。22歳にして、初めての彼氏だった。2歳年下の大学生だった。出会いは友達の紹介で、連絡先をもらった。
「ね、電話しない?」
直接会ったことはなかったが、ラインでの会話も続いたので電話に誘った。
『いいよ』
電話が始まっても彼は全く話さなかった。これ、電話の意味あるの?ってくらいに無言で、私ばかりが話していた。つまんないんだなあ、と思った。
「もう切るね」
初めての電話は5分も続かなかったと思う。それから数日後、また彼から連絡がきて、電話をすることになった。
『この間は、ごめん。女子と電話するの久しぶりだったから、緊張して』
”なにそれ、可愛い。”
その後は普通に会話が進んで、会おうって話になった。
*
写真しか見たことはなかったけど、彼はイケメンだった。182㎝で色白で、笑うと顔がクシャってなった。
買い物をして、次に会う約束もした。お互い映画が好きだったし彼の家で映画を見ることにした。
夕方、仕事終わりに彼の家に行くと、料理をしていてくれた。凄く嬉しかった。男の人の手料理なんて食べたこと無かった。
『ピザ食べたいって言ってたから』
スライスしたジャガイモの上にチーズとケチャップがのったピザで、どうやって作ったの!!凄い!ってはしゃいだ。
その後、映画をみて2人でベットに入った。
『したい』
彼は、引くほど素直だった。
いや、ムードは?ってなったけど、彼氏とかいたことなったし、こんなもんなのかなって思った。
「いや、今日はちょっと…
私らまだ付き合ってないし…」
『キスしたい』
「付き合わないとできない」
『じゃあ、付き合おう』
「”じゃあ”?」
『俺、今日、本当に凛花さんが来てくれるの楽しみにしてたし、じゃなきゃ料理なんてしないし、本当に会ったときから付き合いたいって思ったよ』
「…”じゃあ”付きあおっか」
完全に折れただけだった。
男性から、私を求めてくれるなんて嬉しかった。
「でも、今日はできないから」
『なんで…?』
「やだ」
分かった、と彼は言うとキスをして2人で寝た。
そして、私は22歳にして初めての彼氏ができた。
*
彼のアパートまでは車で1時間くらいかかった。
彼に会うときは私が車をだした。彼は学生で車を持っていないからで、
『俺、助手席気に食わない、いつも来させてごめん』「いいよ、私新車だしいっぱい乗りたくてうずうずしてるから」
そう思ってくれてるだけで嬉しかった。
「いつか、私のこと助手席に乗せてね、それまで仲良くしようね」
彼がバイトの日は、バイトが終わるまで彼の家で待った。
『家に帰ったら凛花さんがいるシチュエーション俺にとっては最高なんだけど』
と言ってくれた。
*
付き合ってから1ヶ月くらいして、彼がラインを返してくれなくなった。なんかしたっけと思っていたら電話しよう、と連絡がはいって
『この間、バイト先の人とご飯いった』
「そうなんだ、えっ、女じゃないよね?」
『女よ』
彼は引くほど素直だった。
「…私が他の男と2人で夜にご飯行ったら嫌じゃないの?」
『別に。俺、嫉妬とかあんましないし』
「もういいよ」
不安なのは私だけなんだ。
それから、彼のと私の価値観のズレが生じた。
「次はいつ会える?」
『分からない、会えそうなとき連絡する』
ラインをしても既読無視された。
「1日1通でもいいからラインはしてたい」
『俺、ラインとかずっとしてるの
業務的で嫌なんだよね』
「分かった」
ラインもしなくなった。
仕事でしんどいとき、少し愚痴をこぼしたら
『なに?それって、俺になんか言って欲しいの?
同情とか欲しい?』
「ひどいよ」
『なにが?』
「私が傷つかないとか思ってるの?」
『分かんない、俺社会人じゃないし』
「そうじゃない」
『なに?』
「もういいよ」
本当に、あの時の彼と同じ人?そう思った。
*
連絡をあまりとらないまま、
付き合って2ヶ月の日になった。
『電話する?』
珍しく、連絡が来て嬉しかった。
電話を始めても、彼はテレビを見ながら話していて全く私に反応してくれなかった。
私は何とか話そうとしたが、変なところで怒られたりして、もう限界だった。
「ねえ、1回友達にならない?」
こんなのでも、まだ別れたくは無かった。まだ、お互いが考えるような時間が欲しかった。
『なんで唐突に?』
「ごめん」
『俺、友達いないから分かんない』
「友達なろうよ」
『…それってさ、結局別れたいってことでしょ?』
「私の言いたいこと分かる?」
『ストレートに言ってよ、本質は同じじゃん』
「もういいよ、別れよう」
『バイバイ』
「むかつく」
私が聞きたかったのは
「今日で2か月だね、これからもよろしくね」とか
だったんだけどなあ。
めんどくさい女でごめんね。2か月の日私たちは別れた。彼はすぐにSNSの投稿やフォローを外していた。
彼は引くほど素直だった。
つづく
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