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映画もトモダチ! 劇場版『キャプテン翼』をオリジナル要素で紐解いてみた

皆さんこんにちは。ヨコハマ・フットボール映画祭note公式マガジン、第3回の今回は加藤麟太郎が担当します。
私は2016年からYFFFに携わっており、主にイベントの企画やSNS周りを担当しています。

さて今回は、日本が世界に誇るサッカー漫画『キャプテン翼』について取り上げます!

これまで4度TVアニメ化をしているキャプ翼ですが、特に1983年から86年に放送された第1作目は最高視聴率21%を記録するなど、ブームを巻き起こしました。実際にこの作品を幼い頃にビデオを借りて見たことでサッカーを更に好きになったという経験があるので、私にとってとても思い入れのある作品です。

そんなキャプ翼ブームの中で85年から86年にかけ、劇場版4作品が『キン肉マン』や『Dr.スランプ アラレちゃん』などと一緒に「東映まんがまつり」内で上映されました。キャプ翼がラインナップに初めて入った85年夏休みのまんがまつりは史上初の配給収入10億円を突破すると、劇場版第2作『危うし!全日本Jr.』が看板作品となった85年から86年冬休みのまんがまつりも、アニメでは『ドラえもん』に次ぐ年間2位の配給収入を記録したように、当時のキャプ翼の影響力が垣間見えます。
今回はそんな『キャプテン翼』4部作の魅力を、劇場版ならではのオリジナル要素から紐解いていきたいと思います。

第3作『明日に向かって走れ!』が上映された、86年春休みの東映まんがまつりのポスター(筆者私物)

オリジナルストーリー

この劇場版はTVシリーズの総集編的要素が強い第3作『明日に向かって走れ!』を除き、基本的には翼たちが全日本代表のメンバーとして世界と戦う姿を描いています。
時系列で見ていくと、このような形です。
ヨーロッパ大決戦(第1作):小学校6年

危うし!全日本Jr.(第2作):中学1年

明日に向かって走れ!(第3作)
世界大決戦 Jr.ワールドカップ(第4作):中学3年

原作では中3の全国大会の後に開催された国際Jr.ユース大会で翼たちは初めて世界に挑むことになりますが、劇場版では小6の全国大会の後には世界に挑戦しているのです。また原作でJr.ユース編が描かれる前ということもあり、ストーリーもオリジナル要素が多くある作りになっています。
ここでは、第3作を除いたオリジナル要素をピックアップしてみました。

黄金世代が初めて世界に挑む!(ヨーロッパ大決戦)
南葛SCの優勝で幕を閉じた全日本少年サッカー大会の後、翼をキャプテンに据えた全日本少年選抜はヨーロッパ少年選抜との対戦のためパリに遠征をすることに。エース・シュナイダーを温存されるなど甘く見られていた全日本でしたが、序盤から臆することなく戦い、立花兄弟のトライアングルシュートで先制に成功。しかし味方同士でボールを奪い合うなど次第にチームワークが乱れていき、逆転を許してしまいます。そんな中でも、翼や岬、若林、日向など後に黄金世代と呼ばれるメンバーたちは初めて挑む世界の舞台で勝利を目指して戦います。

日向小次郎、半年間の山籠り(危うし!全日本Jr.)
ヨーロッパJr.との東京・国立競技場での対戦の模様が描かれる『危うし!全日本Jr.』。その冒頭、日向が東邦学園が南葛に敗れた全国大会決勝の翌日から退部届・退学届を置いて姿を消したとのことで、東邦学園の北詰監督から日向の選抜チーム入り辞退の申し出があります。何と日向は特訓のため、飛騨山中奥でサッカー教室を開いている恩師・吉良耕三の下に半年間籠っていたのです!
原作で日向は中3の全国大会前にタイガーショットを身につけるため、無断で沖縄に行ったことで干されますが、それが霞んでしまうレベルな気がするのですが…

また日向の不在だけではなく、岬も行方不明、西ドイツに渡った若林もプロチームの下部組織に所属しているという理由で主催者から出場が認められないといったように、多くの主力を欠き全日本Jr.はまさに”危うし”な状態で試合に臨むことになります。次藤や早田、新田といった翼が中3で対戦するキャラクターが登場していないため、とんでもないポジションコンバートがいくつか発生しているのでそちらにも注目してみてください。

初の師弟対決!翼VSロベルト(世界大決戦!Jr.ワールドカップ)
東京でのヨーロッパJr.との対戦から2年後、全日本Jr.は直前の全国大会で活躍したメンバーを中心に、アメリカで行われるJr.ワールドカップという大会でヨーロッパJr.・アメリカJr.・南米Jr.と世界一を争うことになります。組み合わせ抽選会で翼は、南米Jr.のファン・ディアスから「俺たちの監督は日本と対戦したがっていた」という意味深な言葉を告げられます。準決勝でアメリカを下し決勝進出を決めた翼たち全日本イレブンの目に、南米のベンチに座る翼の師匠・ロベルト本郷の姿が飛び込んできます。ロベルト率いる南米はヨーロッパを退け、Jr.ワールドカップ決勝戦は翼VSロベルトの師弟対決となりました。
後に原作のワールドユース編や、ファミコンゲーム『キャプテン翼Ⅱ』で実現する翼VSロベルトの師弟対決がそれらに先立ち初めて実現した形になっています。

オリジナルキャラクター

この劇場版はストーリーだけではなく、翼たちの前に立ちはだかる世界のライバルたちもオリジナル要素がたくさんあります。原作には登場しないキャラクターもいれば、後のJr.ユース編や、ワールドユース編などに登場するキャラクターたちが先行して登場しているのです。今回は、その中から4名の選手をセレクトして紹介します。

カール・ハインツ・シュナイダー
ヨーロッパ選抜のエース。”ヨーロッパ少年サッカー界の皇帝”という異名を持ち、バナナシュートなどボールを自在に扱うテクニックのような柔の部分と、相手GKを吹き飛ばすほどの弾丸シュートを左右どちらでも放てるような剛の部分どちらも兼ね備えるオールラウンドプレイヤーです。

上にあるDVDのパッケージで翼の横にいる背番号10がシュナイダーなのですが、原作と比較すると髪や目が若干違うデザインになっていますね。

全日本イレブンたちの目の前にシュナイダーが初めて姿を現すシーンは、原作と劇場版で実は共通する部分があります。劇場版を見る時には是非チェックしてみてください!

スティーブ
ヨーロッパ選抜のイングランド人FW。12歳ながら何とシュートでゴールバーを凹ませてしまうほどのパワーを持っています。『ヨーロッパ大決戦』では初対面の翼たちを挑発して「必ず20点以上は奪って勝ってやるぜ」と豪語したり、ピッチ上でチームメイトと口論を繰り広げますが、時には献身的な守備を見せるなどチームのために戦うことができる選手です。

ヘフナー
日向の弾丸シュートを一発で止めてしまうなどヨーロッパNo.1と呼び声高い西ドイツのGKです。原作に登場するGKでは、イタリアのジノ・ヘルナンデスにタイプが似ているかと思います。また、小学生編を題材にしたゲームボーイ用ソフト『キャプテン翼VS』にも西ドイツJr.のGKとして登場しています。
ちなみに動物好きというプロフィールもあるヘフナー。そんな彼は「獣医かブンデスリーガ入り」という将来の夢を持っているそうです。

カルロス・サンターナ
「サッカーを楽しむことを教えてくれたロベルトが本当に育てた選手なのだろうか?」と翼が口にするように、個人技に走ることが多く、翼とは異なるタイプ選手でした。次第に自身のプレーが全日本に通用しなくなり自分を見失いかけますが、ロベルトからの「翼はお前にない何かを持っている」という言葉と、翼のプレーからチームワークの大切さに気付き、チームメイトと共に全日本イレブンの前に立ちはだかります。
シュナイダーと同様に原作やファミコンのゲームに先駆けて登場しており、ロベルトの弟子ということでドライブシュートを放つことができる選手になっています。

その他にも
『Jr.ワールドカップ』のストーリーの中で名前で出たファン・ディアスをはじめ、
エル・シド・ピエール
ラモン・ビクトリーノ
が原作に先駆け登場しています。

また余談ではありますが、TVシリーズでも『ヨーロッパ大決戦』と同じく小6の翼たちが遠征に行くというオリジナルストーリーが存在し、シュナイダーやヘフナー、スティーブ、ピエールが登場しています。こちらは国別の代表によるトーナメントで、全日本はイングランド・フランス・西ドイツと対戦するということになっていました。

必殺技

キャプテン翼の魅力の一つ、必殺技!
オリジナルキャラのものから、翼や日向などが劇場版だけで繰り出すものまで、様々な劇場版オリジナルの必殺技が登場します。ここでは魅力的な3つのオリジナル必殺技を紹介します。

イーグルショット(危うし!全日本Jr.)
この名前を聞けば…

まずこの松山の必殺シュートを思い浮かぶかと思います。しかし劇場版では日向がイーグルショットを放つのです!このシュートは獲物を捕える鷲の姿をヒントに編み出したもので、松山のシュートのように地を這うものではなく、キーパーの手元でボールが伸びるという特徴があります。どんな特訓で日向がこのシュートを身につけたのかは、作品でお楽しみください。

ミラージュボール(危うし全日本Jr.)
原作のシュナイダーの必殺シュートと言えば

このファイヤーショットですが、劇場版のシュナイダーもファイヤーショットに勝るとも劣らないインパクトの残る必殺シュートを放っています。
東京での対戦時、シュナイダーはボールが手元でホップするシュートでGKの顔面を狙い、若島津と森崎を負傷退場に追い込みます。しかし彼が対若林用に向けて本当に狙っていたのはこの顔面シュートではなく、砂漠の蜃気楼のように七色に変化するミラージュボールだったのです。ペナルティエリア外からゴールを奪われないという若林からでも、センターサークルからこのミラージュボールを放てばゴールを奪えてしまう強烈な一発です。

テレパシーセービング(ヨーロッパ大決戦、危うし!全日本Jr.)
若林が使用する目を瞑ってボールの音を聞き分け、心眼でシュートを止めるというとんでもない必殺セービングです。これでシュナイダーのバナナシュートやミラージュボールを止め、全日本のピンチを救っています。

このように様々なオリジナル要素が詰まった『キャプテン翼』劇場版4部作。TVシリーズ第1作と同様にネットでの配信は現在行われてはいませんが、キャプテン翼 THE MOVIEというタイトルで、DVDとして販売・レンタルされています。この機会に是非、チェックしてみてください!

最後までお読みいただきありがとうございました。ヨコハマ・フットボール映画祭note公式マガジン第3回、担当は加藤麟太郎でした。
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