#6 大島さん(前編)

派遣バイトで出会った40代くらいのお喋り好きなママさん。
他にも派遣のバイトを掛け持ちしているらしく、出会って早々、別の派遣会社の方に勧誘してきたので、何かの回し者かと思い警戒してしまったけれど、話していくとただのオープンでフランクな人だった。

私がその勧誘をやんわり断った後も、大島さんの話は続く。忘れもしない、派遣バイトの勧誘の後、流れるように話題は転がり、大島さんは霊感のような感覚が強いという話をし始めた。はっきりとオバケが見える訳ではないが、ある場所に行くとなんか嫌な予感がしたり、人に関しても鋭い勘が働くそうだ。
「それなのに旦那だけは見抜けなかったの!もーほんとに。不思議じゃない?早く死んで欲しい…!」
ここまでがセットである。大島さんは心底旦那が嫌いだ。そんな時私は「恋は盲目ですね…」とボソッと言うしかない。

なんの勘かは知らないけれど、とりあえず第六感が冴えているらしい。
以前、大島さんがマンションを購入だか借りたかした友人宅へ遊びに行った時のこと。入った途端に何だか嫌な予感がして、強烈な悪寒に襲われた。後日、その友人のマンションは、構造の大黒柱的な大事な柱か何かが入っておらず、マンションの至る所にヒビが入ったり建物が傾いたりしていることが判明した。この事は当時ニュースでも大きく取り上げられ、大島さんは「やっぱり…!」となった。ちなみにその話をしていた頃、私は派遣バイト以外にマンションの検査スタッフのバイトも掛け持ちしており、その問題のマンションが全て取り壊され、再建築されたところに検査スタッフとして入っている時だったので、こんな偶然あるんですねと2人で驚いた。

前述したように、大島さんは旦那に早く死んで欲しい。
ある日、大島さんは昨夜の"旦那死ねばいいのにエピソード"を話してくれた。
昨夜寝る前にトイレに入るとめちゃくちゃうんこ臭かった。何だと思って辺りを見回すと、トイレの蓋の裏だか向こう側だかにうんこがくっついていた。なぜこんなところにうんこがくっつくんだ。大島さんが「誰だこんなとこにうんこした奴はー!!!!」と叫ぶと、旦那がボソッと後ろで何か一言言ったらしく、それが凄く怪しかったので、大島さんはここにうんこを漏らしたのは旦那であると踏んだ。しかし旦那はそのままスッと何処かへ消えたので、大島さんは「トイレでうんこ出来ない奴はトイレすんじゃねぇ!!!!」と叫びながらトイレの掃除をした。深夜2時。その時大島さんの高1の娘さんは、部屋で耳を塞いで「怖い〜」と丸まっていたらしい。大島さんは、そんな娘を「両親がこんな感じだから情緒不安定なのよ」と当たり前のように言っていた。

そんな大島さんの娘さんは、おったまげるほどの美少女だ。
何かの話の流れで娘さんの話になった時、うちの娘ちょーーー可愛いのよ。と写真を見せてくれた。お世辞抜きに本当に可愛かった。もうどこか大手の事務所に所属していてもおかしくないし、むしろしてないとおかしいほどに可愛い。ただの可愛いではない。すごく美少女な雰囲気がある。とにかく美少女。「美」も兼ね備えた少女である。ポカリのCMで爽やかな汗を流しながら自転車を漕いで岬で叫んでいる画が浮かぶ。実際に芸能事務所にスカウトされたことがあるらしいが、娘さんが全くそういうものに興味がなく、絶対にやりたくないと言っているので普通のJKライフを送っている。しかしやはりあまりにも美少女なので、大島さんの旦那さんの知り合いの企業のwebムービーに出演したらしい。周囲でも大島さんの娘さんの美少女っぷりは有名なのだろう。
そんな娘さんに、大島さんはいつも「可愛く産んでやったんだから〜、感謝しなさいよ〜」と話しているそうだ。


今日はここまで。
次回、大島さん後編をお届けします。

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