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カナダで保育:泣きは伝染する、でも順番ね

先日「泣きは伝染する」という事を書きました。

集団保育の中で、一人泣いている子がいるとその子に影響されてか他の子も泣きやすくなったりする事がある、という話です。

もちろん今現在のような新学期が始まったばかりの新しい子ども達や、喧嘩、一緒に転んだ、ぶつかったなどがあった場合を除いて、普段の日々の中であまり同時に号泣、というのがないような気がしたのでなぜだろうと不思議に思ったので、観察してみました。


そうしたら面白い事がわかりました!


どうやら子ども達は「順番に泣いている」んです。

上に書いたような状況以外で、例えば「お母さんに会いたい」というような理由で泣いている時は(これは例え園に来る事に慣れている子ども達でもたまにあって、特にお昼寝の後とかには良く見られます)自分よりも大声で泣いている子がいると、最初に泣き出していた子はその大号泣の子を見て段々とその子に注目するあまりか段々泣き止んでいくんです。

勿論毎回必ず、というほどではないのですが、結構な高確率で見られます。

これは単純に自分より大きな声を出している子に呆気にとられてしまっている、という事もあると思うのですが、何気に全体のバランスを見て状況判断をしているのではないか、と思うんです。

人は無意識のうちに周りの状況に合わせてバランスよくしようとするらしく、以前アドラー心理学の勉強をしていた時に講師の人が実際に自分がカウンセラーとして接した家族のお話をしてくれました。


一組の夫婦が自分の子ども達についての相談に来た。

その家には2人の年子の男の兄弟がいた。

下の子は学校での成績も良く、運動も出来る。

人付き合いも良くて友達も大勢いる。

上の子は成績は中の下、運動も得意ではなく、人見知りで現在は不登校で引きこもりになっているからどうすればいいのか、と彼らの親御さんから相談をされた。

実際に何度も上の子と会って、色々話をして、最終的にはオンラインで学校を卒業し、その上の学校に進学した。

そこではどんどん学力が上がっていって、苦手だと思っていた運動を始めてみたら段々楽しくなってきたらしく、しかもそこで知り合った人たちと仲良くなって学校に行くのが楽しくなってきて、今では毎日元気に登校している。

親御さん達も一安心、と思っていたら今度は下の子の成績が落ち始めた。

運動もちょっとしたケガをして以来辞めてしまった。

このケガは別に治らなかったわけでも、運動が出来なくなったわけでもない。でも辞めてしまって、前は毎日のように友達と外に出掛けていたのに、それ以来家にいる事が多くなって来ている。

どうしてこうなってしまったのだろうと親御さんたちに今度は下の子について相談をされた。

この話から分かるように、家族という集団の中で、この子ども達は無意識にバランスを取ろうと行動していた。

どちらかが優秀であるのなら、もう片方は落ちなくてはと。

この無意識の行動には色々な理由が考えられる。

でもどちらの行動も自分を周りの人に認めて欲しい、という事からの行動であり、その為に全体のバランスを見て、どうすれば自分を見てくれるだろうか、存在を認めてもらえるだろうか、としての行動がこうなった。



子ども達が自分以外の子が大号泣している時は泣かなかったり、泣いていたとしても泣き止んだり、というのは、例え今泣いても自分はあまり注目してもらえない、という事を学んだからではないでしょうか。

もちろん感情のままに泣くのを抑えられない事は多々あるので全てのケースではありませんが、自分を見て欲しいというアテンションシーキングが含まれている泣きは、つまりはそういう事なのでしょう。

泣きは伝染する、だって自分の事もかまって欲しいので。

でも今泣いても自分は注目されない。

だったらその子が泣き止んでから私は泣きます。

順番ね!


つまりはそういう事なのでしょう。

・・・なんて賢い子ども達!!

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