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【実録】愛してくれると、信じたかった。

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何千人もの女性を救ってきた女風セラピストは、私を幸せにはしてくれなかった。 彼が私に見せた、歪んだ性癖。 スワッピングに乱交パーティ、欲望渦巻くディープな世界で、私たちは…
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#エッチ

17. 蛇男

≪ 16. 人は人を捨てられないのに。 初めてハプニングバーに行ったのは、遅い夏の終わりだった。 その頃私は、もうほとんどの時間を新宿で過ごしていたと思う。もう何度も尊の部屋に泊まって、一緒にテレビを見て、私が夕飯を作ったりした。 尊は、若い頃からハプバー通いが激しかったらしい。パートナーがいたつい最近まで、よく足を運んでいたと言う。クローズドパーティの仲間にも、そういう場所で出会ったようだった。 行きつけだった場所でハロウィンパーティのイベントがあって、それが私のハ

11. 「みんな」との始まり

パーティーの主催者は「シンジ」としよう。 世間では、かなり名の知れた作曲家だった。 海を初めて金で買った日、私がホテルで流していたのも彼の音楽だ。 シンジの音楽は、私を一瞬で別世界へ攫ってくれる。私は、これ以上に音楽を欲したことがない。 後から思い出してみると、私は尊よりも、この男に必要とされかった気がする。でも、この男の話はまた少し後。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 初めての夜、私は静かに迎え入れられた

9. できるなら、都庁北展望台で。

私は尊と一緒にいた頃、よく占いに行っていた。 人は本当の意味で何かに迷っているとき、占いには行かない。 たぶん、そういう風にできている。 どうした方がいいか分かっていても、それでも後押しして欲しいときに行くのだ。 尊と一緒にいて幸せになるはずないのに、それでも後押しして欲しくて行くのだ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 私たちはよく、都庁北展望台で待ち合わせをした。 彼に会うために待ち合わせたのではなく、

8. 水の中の、非現実。

8/29、尊の仕事仲間の誕生日会兼納涼会に誘われた。 仕事終わり、時間に間に合いそうになく新橋でタクシーを拾う。 船乗り場につくと、すでに尊と仕事仲間がいた。 あちら側がの声をかけたであろう女性2人は、浴衣を着てめかし込んでいる。 私はと言えば、職場から着の身着の儘、大焦りで来たからなんだか気まずい。 尊がこちらに気づいて手を振る。 「あっ!葵!間に合ってよかった!」 私も友達を数人呼んでいた。 知り合いが屋台船を貸し切るので、暇だったら来ないか、と。 尊のことは何も

7. 真夏の夜の、重たい西瓜。

私たちはその日、新大久保駅前で待ち合わせた。 いや、新大久保駅前は昨今のKカルチャー流行も手伝ってひどい人混みだったから、正しくは道路を挟んだ向かいの薬局の前で落ち合った。 近くの劇場で尊の友人が所属しているという劇団の公演を観に行った。 私は美術にどっぷり浸かっていたが、劇団等の舞台芸術はあまり観たことがなかったので新鮮だったのを覚えている。最前列の席だったから、演者の迫力にドキドキした。 公演後、尊から『一緒に楽屋へ挨拶しに行かないか』と言われたが、自分がなんと紹介