私を行方不明にしないで――2024年8月26日

昨日今日と何だか盛りだくさんの一日だった。それをただ流し去るのはもったいないので、日記として形に残すことにする。

現在も開催中の展示会『行方不明展』の特別配信映像『正体不明』を観た。

展示会で偶然出会った二人の男には、実はある関係性があり、思い出を語り合ううちに、封印されていた恐ろしい過去が紐解かれていく、というストーリー。

ドラマとしては面白かった。だけど、展示会を見た後だと、少々蛇足な感じがしてしまった。

行方不明展には、この世界から忽然と姿を消した人物の残した衣服や手紙、彼を探す捜索願のチラシなどが数多く展示されている。

そういった痕跡の断片が徐々に結びついて、その裏側の現象や人物像がにわかに浮かび上がってくる。その過程が楽しかったし、人によってそのイメージが異なるのも、答えがない展示会ならではだろう。

だが、それをドラマとはいえ『事実』として見せられると、せっかく十人十色だったイメージが固定化され、矮小化してしまうような気がした。

これが、展示会だけでは分からない新たなヒントを提示してくれる、とかなら良かったのだけど。


先日の田中敦子さんの訃報を受け、『攻殻機動隊 SAC 2nd GIG』を中学生以来、およそ十数年ぶりに視聴した。見たといっても、TVアニメの『個別の11人』に関するエピソードだけをまとめた総集編の方だが。

あらすじは、アジア各国から日本に招慰された難民との対立を軸に、難民の指導者・久世が抱く使命と、裏で糸を引く内閣情報庁の役人・合田が仕組んだ陰謀の正体を、公安9課の面々が追うというもの。

ストーリー原案に押井守が関わっているためか、前作の笑い男事件に比べてエンタメ要素は鳴りを潜め、政治色の強い物語となっている。この辺は劇場版パトレイバー1と2にも通ずるものがある。

中学時代は正直、難しい印象が強くてとっつきづらかったが、いま見てみると、あくまで出てくる単語が難解なだけで、話の流れとしてはむしろ明快でおもしろかった。加えてタイムリーに現実世界の問題とつながる部分もあり、その先見性の高さにも驚いた。それは前作もだけど。

また設定を活かしたストーリーテリングの上手さも感じる。

本作は、義体化によって人々の意識や思考が、インターネットを介して常時接続されるようになった世界が舞台となっている。

それだけに、ある理由によって電脳空間から隔絶されて"スタンドアローン"となった人々の様子も描かれているのだが、前作がスタンドアローン状態における人々の無意識下の繋がりが事件をもたらしたのに対し、本作はその状態に陥ることによって混乱や暴走が引き起こされている。

同じ事象をもとに、調和と混沌という裏表を描き分けているのが、とても凄いなと思った。


オモコロライター・夢顎んく主催のイベント『夢顎んくのむっちゃムズいパズル!ムズル』のアーカイブを見る。涙が出るほど笑った。5秒単位で予想外の方向からギャグの鉄球が吹っ飛んできて、その度に笑いのツボが爆発する。天才。

かと思えば真面目にクイズも出題したりして、翻弄される。しかも普通に問題のクオリティも高いときた。クレヨンしんちゃんのあの問題はかなり良問だと思う。

と感心していたら最終問題のジェスチャークイズで腹を抱えて笑った。天才。


会社の上司に影が薄いと言われた。

『さよなら絶望先生』の臼井影郎や、『ゆるゆり』の赤座あかりのように、フィクション作品で影が薄いキャラというのはままいる。だが現実世界で、しかも自分が言われるとは思わなかった。

もちろん半ば冗談もあるだろうが、考えてみれば影が薄いという悪口は、最も残酷だ。なぜなら解決策が存在しないからだ。

口が臭いと言われたら歯を磨けばいいし、うるさいと言われたら声量を抑えればいい。ブサイクと言われても最悪整形という手がある。

だが影が薄いと言われても、どう存在感を強めればいいのだろう。鼓膜を破る勢いで「おはようございますッッッ!!!」と叫べばいいのか、マキシマムザホルモンを大熱唱しながらキーボードを叩いていてればいいのか、ものを食いまくって体重3000kgになればいいのか。どれも非現実的だし、また別の悪評に取って代わられるだけだ。

そもそも影が薄いことは当人がどうこうできる問題ではない気がする。周りがその人を意識しているかどうかだろう。

だからみんなが俺のことを戸川純よろしく好き好き大好きになってくれればそれでいいのだ。後ろに超愛してるを加えて舞城王太郎になったっていい。私の存在はあなたによって定義される。

さあ、意識しろ。目をこらせ。興味を持て。俺を行方不明にしないでください。


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