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2023.3.26 FC町田ゼルビア vs いわきFC マッチレビュー

開幕から未だ負けなし、4連勝で迎えた今節。

これまでチームの主軸として出場を続けたデュークはオーストラリア代表の活動のため離脱、ミンギュもU-24韓国代表の活動のため同じく離脱し、早くも山場となったこの試合を振り返る。

スタメン

いわき:4-4-2 町田:4-2-3-1

町田はデュークが欠場で、藤尾が移籍後初先発。

デュークとコンビを組んだ時とは異なり、藤尾とはより縦関係で、さらには最前線に位置したエリキ。

より低リスクを好んだ前半

黒田監督はリスクを好まないため、ボール保持にあまり固執しない監督なのは、ここまで見てくれば分かる通りだ。しかし、この試合はいつも以上にリスクを少なくすることを選択した。

圧倒的なフィジカルを前面に出し、前線からのハイプレッシャー、縦横圧縮。見覚えのあるスタイルのサッカーを志向するいわき。

そのいわきを前に町田が取った策は、素早くボールを手放し、押し込まれたDFラインを高い位置まで戻すためにクリアを繰り返した。

この試合ではデュークがいないため、特に前半は、前線で起点を作ることができず、エリキや藤尾には我慢の時間が続いた。

しかし、DFリーダーのカルロス グティエレスを中心にラインコントロールを徹底し、相手に決定機は作らせなかった。

どちらかといえば、前半はいわきペースであったが、徹底したリスク管理の結果、相手の攻撃陣に見せ場を作らせなかったのは、黒田監督が始動から築いてきた守備のやり方、特にシュートブロックの際の身体の向きなど、があったからだろう。

また、特筆すべきはポープの守備範囲が以前に広がっていることだ。昨シーズンは守備範囲の広さは同じポジションを争う福井の強みだったが、今シーズンはポープの守備範囲が広がっている。この試合でも、DFラインの背後に出されたボールの処理などでポープの好判断が目立った。

前半の我慢が実った後半

前半は決定機らしい決定機が無かった町田。

しかし、ハーフタイムに宇野と沼田が投入され、よりスピードやフィジカルという相手の得意とする土俵に立った町田。

後半に入ると、前半からトランジションでの速さ、強さのところで強さを見せてきたいわきにも疲労感が出てくる。

以前の町田でもよく見られたように60分付近を境に一気に運動量が落ちてきた。

そのため、前半は寄せられていたところに寄せられなくなり、所々で時間とスペースが生まれていた。そのため、前半は相手のきついプレッシャーの中でロングボールを蹴っていたCBの選手たちも余裕をもって状況を確認して精度の高いボールを蹴ることができていた。

また、前半は人に向けて蹴るボールが多かったが、後半は大外の最終ラインの背後のスペースに向けてロングボールを蹴る回数が増えた。その結果、エリキがマイボールにしてくれる回数も増えたため、徐々に町田ペースになっていった。

さらに、前半は髙江が時々狙う程度だったサイドチェンジも、後半はより感覚的にサイドチェンジのためのロングボールを蹴っていた。

そのため、いわきの選手たちも受動的に走らされる、動かされる回数が増えていった。

前半は最終ラインを中心に我慢し続けたため、相手の運動量が落ちる60分まで無失点で来ることができ、後半から相手の隙を突くようなロングボールやサイドチェンジの試行回数を増やしたため、87分の黒川の決勝点に繋がったと思う。

また、後半は明らかにスローインやゴールキックなどに時間をかけていた。これは、時間をかけることで、相手のリズムを乱し、集中力を削ぐことが狙いだったように思える。リスタートに時間をかけたことに関しては、相手はかなりのストレスを感じていたようにも思えた。

0-0の時間が長く、町田の選手たちも焦りそうなものだが、焦れずにリスタートに時間をかけ、リスク管理を徹底していたのは黒田監督の哲学的なものが既にチームに浸透していることの何よりの現れのように感じた。


いわきのハーフスペースアタック

いわきの特徴は右SBの嵯峨を活かした右サイドを中心とするワンサイドアタック。

これも主に2パターンあり、縦→縦のパターンと縦→ハーフスペースのパターン。

特に前半は後者の縦→ハーフスペースのパターンに後手を踏んでいた。

SBとSHでボールを保持、FWが外側に向かって斜めの動きで池田を外に引っ張り出す。この一連の動きで空いたスペースを使う4人目のFW、カバーが遅れるカルロス、横に詰める奥山、ファーサイドで余るフリーのいわきの選手。そのどれかを狙った嵯峨の高精度クロス。

いわきのハーフスペースアタック

大体がこのパターンのどれかに当てはまっていたが、CBの高さで跳ね返したり、黒田監督になってから修正してきたシュートブロックなど、新体制による守備の矯正が上手く光っていた。

前半はこの攻撃に後手を踏んでいたが、後半は、翁長と沼田がサイドの攻防で負けなかったこと、宇野や稲葉のカバーや対応によって、相手に攻撃の形を作らせなかった。

試合結果

町田 1-0 いわき
得点者:87' 黒川淳史

さいごに

よくこの試合をモノにできたなーという感じですね。

これまでなら確実にどこかで隙が生まれて失点して、跳ね返す力もなく相手のペースのまま試合を終えていたはずが、試合中の修正や選手交代によって自分たちのペースに持っていく力は今までにはなかったと思います。

そういう意味では今までの自分たちに勝てたような気がして、これまでの3-0勝利よりも何倍も嬉しかったです。

縦横圧縮、60分を境に徐々に尻すぼみになっていく姿、サイドチェンジによる疑似カウンターなどすべてがすべて見覚えのある光景でしたが、そのチームを相手に勝てたとが私は嬉しかったです。


今節もお読みいただきありがとうございました。

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