見出し画像

りんご畑をベースに文化を楽しむ酒池肉林檎サークル

2022年5月から、りんご畑でゆるりと活動を始めた任意団体「酒池肉林檎サークル」。
これまでどんな活動をしてきたのか、活動の軌跡とこれからについて、主要メンバーのみなさんにお話を伺いました。

「酒池肉林檎サークル」とはどんなサークル?

弘南鉄道大鰐線・石川駅から歩いてすぐの距離に、株式会社Ridunが所有するりんご畑があります。りんご畑にいると時折列車が走る音や汽笛が聞こえてくる、素敵な場所です。
株式会社Ridun代表の永井温子さんと、りんご畑を手伝う学生たちを中心に、『りんご畑をベースに何か面白いことをしよう』と始まったのが「酒池肉林檎(しゅちにくりんご)サークル」です。メンバーの梨乃さんは大学の授業を通して永井さんを知り、今は永井さんのりんご畑を手伝っています。

カメラを構える梨乃さん

梨乃さん
「同級生がたくさん県外に出て行ってしまい、地元を面白くする人も必要だよな、と思っていたときに出会ったのが永井さんです。永井さんのりんご畑を手伝うなかで、この場所(りんご畑)で何かしたいねという話になりました。
最初は、わたしが個人的につながりのあるメンバーに「りんご畑で肉を焼いて話しない?」という感じで声を掛けて。大学の先生から、小学校に勤務されていた時に子どもたちと棒パンをやっていたという話を聞いて、面白そうだしやってみたいと思いました。実は弘前市には棒パン文化はそれほど根付いていないんです。5月頃、集まった8人くらいで、剪定したりんごの枝の燃やし残しを拾い、その枝にアルミホイルを巻いて棒パンを焼きました。棒パンを焼きながら、「りんご畑で何かするっていいね、続けていきたいよね」という話をしていて、それが今の活動にもつながっています」。

作ってみた棒パン

中心となっているメンバーは、ヒビノス林檎園のりんご畑にアルバイトやボランティア、インターン生として関わっている弘前大学の学生や、地域おこし協力隊として活動している方など。サークルに所属するメンバーは固定的ではなく、その時来たい人が来るスタイルです。学生つながりで弘前大学教育学部の宮﨑充治先生も関わっています。

摘果を楽しむ宮﨑先生

宮﨑先生
「酒池肉林檎は、りんご畑をベースにした人の集まりや、その場所の良さ、そこから生まれる文化を楽しむというのが根底に流れていると思う。そこで遊んだら楽しいだろうなとか、そこにいると気持ちいいだろうなとか、その場所で美味しいものを食べたらいいだろうなとか。そういう感じで進んできた。これやったら次はこれをやろうか、というのが話に出て、そういうのをひとつひとつ形にしているよね」。

集まってくれた仲間たち

航さん
「酒池肉林檎とかイベントもそうですが、ヒビノス林檎園には色んな人が来てくれて嬉しいです。でも、ただそこに違和感なく居て、みんなで何かしているのが嬉しい。ヒビノスりんご園のいいところだと思います。」

りんご畑にあるものを組み合わせて、やりたいことをかたちにできる場所

流しそうめんを楽しむメンバーの皆さん

第2回のイベントでは、りんご畑に留学インターン生が来ていたこともあり、日本らしい夏の過ごし方を体験できるイベントとしてBBQと流しそうめん、すいか割りを開催しました。りんご畑にある脚立やはしごをかき集めて、雨どいを買いに行き、りんご箱を積んで高さを出したりして、あるものを使って流しそうめん台を自作したそうです。

梨乃さん
「流しそうめんを流すための竹、本物の立派な竹は青森では手に入らないし、予算が掛かってしまうから、やむを得ず雨どいを代用したんです。あれやりたいよね、あれ面白そうじゃない?っていうことをまず『やろう』って決めて、そこからどうしたら形にできるかな、というのをみんなで組み立てて…。その組み立てに合わせて、理想形を少し変えてみたりしています」。

目的をしっかりと決めて動くというよりは、ぽこぽこと出てきた思いに任せつつ活動している酒池肉林檎サークル。弘南鉄道の石川という駅の近くで、ちょっと小高い場所にあるりんご畑だからできること。いろんな要素、条件がそろっているからこそ実現できていることもあるそうです。

RINGO JAM LIVEの様子

2022年7月には、りんご畑で音楽ライブ「RINGO JAM LIVE vol.1」を開催しました。
永井さんも、永井さんのりんごの師匠である野宮雅美さんも音楽好きということから、地元でプレーヤーとして演奏している8組の演奏家を集め、りんご畑で屋外フェスを行いました。りんご箱に腰掛て、食べ飲みながら音楽を楽しむ「RINGO JAM LIVE vol.1」では、音を聞きつけて周辺のりんご農家さんも見に来てくれたそうです。

パレットのステージと木箱の客席

宮﨑先生
「こうやって人が集まっているところに行き、触れ合うことが、本来の教育みたいなところがあるのではないかなと思うんです。学校のなかで「ふるさとを愛する子どもを育てよう」とか言うけれど、りんご畑で「こんな面白いものがある、こんなことができる」ということを体験しつつ、子どもや若者にあるふるさと愛を育てていったほうが絶対にいい。りんご畑のような場が持っているポテンシャルは、わたしや永井さんのように外から来た人にとってはお宝のように思えるんですよ。」。

11月末に開催した芋煮会は残念ながらりんご畑では開催できませんでしたが、30人を超える参加者と、津軽では、文化としてはまだまだ根付いていない芋煮会を楽しみました。

梨乃さん
「芋煮会は以前からやりたいねと話題に上がっていて。後期のインターン生と楽しめる冬の企画を、ということで、りんごがひと段落ついたこのタイミングで芋煮会を開催したんです。「収穫お疲れさま」の意味合いも込めての芋煮会ですね。」

芋煮会ではオリジナルの「津軽の芋煮」も作り、100年後には伝統料理として作られるかもしれない、津軽の芋煮文化の起点となった会となりました。

りんご畑はもちろん、「石川」の地域を意識して文化を楽しめる場にしたい

りんご畑にはいろんな生き物が集まってくる

今後について永井さんは、来シーズンは一般客や地域住民の方にも参加していただけるようなイベントにしたいと話します。

永井さん
「わたしは石川に住んでいる訳ではなく、畑があるから通っているけれど、畑があるだけだと意外と地域住民とかかわる機会が少ないんです。芋煮会など、何かイベントをやることで、もう少し交流の機会を生むことができるかもなと思っています」。

酒池肉林檎サークルでこれからやってみたいことや展望について、メンバーそれぞれに思いがありました。

梨乃さん
「活動する上では、自分たちが楽しめること、りんご畑で楽しめることが第一です。自分たちの活動に、石川の人達にもかかわってもらったり遊びに来てもらいたい。ヒビノス林檎園だけではなく、石川という地域のことを意識するような要素も入ってくればいいなと思います。これは、私の勝手な目標ですが、石川駅を利用する人が増えたらいいなぁと。それで、あわよくば石川駅にトイレと水場が欲しいんです(笑)」

航さん
「普段は卒論で忙しいけれど、ここへ来ると気持ちがすっきりします。」

カズさん
「大学卒業後は別な地域で農家になりますが、ここで実現したイベントなどを行った先の地域も巻き込んで実現させたいなと思っています」。

宮﨑先生
「2022年の春頃から始まって、1年というサイクルができてくるとまた面白いのかな、というところ。今はまだ途中だけどね。地元のおばあちゃんたちが漬ける漬け物を食べてみるとか。地域に根付く文化を大切にしていけるような取り組みをこれからやっていけたらいいね」。


「酒池肉林」とは、酒や肉など食べ物が豊富にあり、非常に贅沢なこと。
自然あふれるりんご畑に集い、美味しいものを食べながら、仲間と豊かな時間を過ごす「酒池肉林檎サークル」の活動はまだ始まったばかりです。これからもりんご畑をベースに、さまざまな文化を創り出していきます。

(文/鈴木 麻理奈)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?