控えめに、月並みに、おめでとうの一言を。
弟の結婚式があった。
主役二人のしあわせいっぱいな様子にくわえて、それを見てうれしそうに泣いたり笑ったりしている両親の姿が印象的だった。
毎週末Skypeで近況報告をしあってきた親友がいる。
彼は僕には不釣り合いなくらい人間ができているのに、すこし消極的な性格なのと修行僧みたいな生活をしているのとで、友達が多いほうではない(ちなみに言うまでもないことだが、僕も友達が多くない。いや、少ない)。
しかし、ひょんなことから婚活をはじめて見事結婚。Skypeは無理、会うこともできなくなった。
めでたいが寂しい。
もちろん彼のしあわせを一番に願っている。ただ、やっぱり寂しい……(この前、久しぶりに話せて感極まったのは内緒)。
弟は最初ガチガチに緊張しながらも、スピーチをがんばっていた。
ほぼ同じ時期に親族のみで結婚式をとり行った親友は、どんなふうに一世一代のイベントを楽しんだのか想像するしかないが、きっと素敵な一日を過ごしたのだろうと思う。
彼は、彼女と付き合うようになって、結婚が決まって、変わった。
ちょうどプロポーズが済んだころに地元で会ったのだけど、なんだか余裕が漂っていて、かっこよくなっていた。
それを率直に伝えると、「いやいや、そんなことは……」と謙遜していたけれど、変わらない部分もありながら、変わる部分は変わる。人の成長として理想の形だった。
僕はそのことがうれしい。
出会ってしばらく経ち、それぞれの道を歩むことになった18歳の秋、彼は、
「伊藤くんと話をするようになって、それまでの僕にはなかったものをたくさんもらったと思う。人と関わっていくことのすばらしさを実感できたのは僕にとってもっとも大きな変化だったと思うし、自分のまわりの人への見方も変わった」
という言葉を贈ってくれた。
もらったのは僕のほうだよ、と言いたかったけれど、その気持ちがどれだけありがたく、励みになったことか。
そして今回、人生の転機を迎えた親友を見て、「ああ、もしかしたら、あのときのように、出会いを力にして新たな自分を発見できたのかな」と思わずにはいられなかった。
そう、彼は「変わった」のではない。自分が最初から持っていた一面を「発見した」のだ。
まだ会ったこともないその人に、感謝したい。そうした思いでいっぱいだ。
弟の結婚式で、横にいる奥さんに、「弟が立派になっていて感動しました。それもあなたのおかげです」と伝えられたのは、あの日いちばんの出来事として僕の胸に刻まれている。
それをそのまま、親友の奥さんにも……そう考えるのは、安直かしら。
◇◇◇◇◇◇
とても月並みな文章になったけれど、こういうときくらいはゆるしてほしい。
それでもあえて劇作家らしいことを言うのなら、しあわせに劇的なものは、いらないのかもしれない。
少なくとも、そう思いたくなるここ数ヶ月だった。
改めて、二人とも、おめでとう。
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