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A君と家出した夏休み

高校1年生の夏休み私は家出をした。家出といってもそんな大層なものじゃないけど。母親が大の韓ドラ好きでテレビを譲らないという何ともバカらしい理由から家を飛び出し、高校が近かったのもあり母親の実家に夏休みの間丸々居座った。それを家出といっていいのかとも思うが、、、

夏休み私はA君に夢中だった。A君は別にかっこよくない。ひょろひょろして病気がちで余裕で倒せそう、というか倒せるくらい頼りない。なのに何故かそんな弱々しいA君が気になって仕方がなかった。自転車で通学していたのだが、わざわざ遠回りしてA君が通る道を通って偶然を装ってたまにA君と一緒に学校まで登校したりした。今考えれば相当気持ち悪い。それほど好きだったんだろうけど。A君のことで一喜一憂して部活で顧問からは「お前に期待したのがバカだった」と言われるほど私を狂わせていた。

夏のイベントといえば、花火大会。私はどうしてもA君と花火が見たかった。いいや、花火というかA君とデートしてみたかったのだ。A君に何気なく「花火大会行くの?」と聞くと「行きたいけど、一緒に行く人いないんだよね」と返事がきた。お、これはと思い「私もめっちゃ行きたいんだけど、行く人いないんだよねー」とあくまでも”花火大会に行きたい”ということをゴリゴリにアピールしたら「じゃあ、一緒に行く?」という返事がきた。嬉しすぎてベッドの上でジャンプして叫んだ。ばあちゃんうるさかったらごめんよ。

花火大会当日。浴衣はさすがに張り切りすぎだと思って私服で行ったけど、スーパー可愛い洋服を着ていった。どっちみち張り切ってる服装になってしまった。ばあちゃんにはそんな張り切ってどうしたんって言われた。私もそう思うよ〜。

駅に集合してA君を見つけた。普段制服姿しかほとんど見た事なかったので私服姿は新鮮でよかった。(よかったっていうかめちゃくちゃドキドキした)電車は花火大会に行く中高生で埋め尽くされ、浴衣ですごいカラフルで綺麗だった。車内はぎゅうぎゅうでナチュラルに壁ドンされててキュン(これは普通に口から心臓でた)としてた。

花火大会の会場に着くと電車よりもっともっと人で溢れてて気持ち悪かった。そんな人混みの中、部活の男の先輩たちも花火大会に来ていたのだ。「お前ら、付き合ってんの?笑」と茶化されてうわ、やばい見つかったと思う反面、少し嬉しかったりした。

出店でかき氷を買って二人で半分こして食べたりして花火が打ち上がるのを待った。夜になると花火は夜空に綺麗に咲き、A君と一緒に来ることが目的だったけどやっぱり花火は綺麗で心臓に響く音が心地良くて黙り込んでしまった。花火に見惚れているうちに夏なのにすごく冷たい風が吹いてきた。A君が「これ着なよ」ってジャケットを肩にぽんっとかけてくれた。これまで私の「スキーー!!」っていう気持ちでこの花火大会を強行させてきたが、寒そうにしている私を見て気遣ってくれたのがめちゃくちゃ嬉しくてまた好きになった。

花火大会が終わってA君と来れて満足で、好きと伝える勇気もなくてそのまま帰った。でもやっぱり、一緒に花火大会にきてくれたことに意味があるんじゃないかと期待せずにはいられなかった私はLINEで「A君って好きな人いるん?」と送った。「いるよ」と返事がきた。「え〜誰々?笑」と冗談ぽく真剣に聞いた。

A君から返ってきた返事には、仲の良い友達の名前が書いてあった。私じゃなかったのだ。かなりショックを受けて返信もせずケータイをぶん投げて「好きだったのに」と泣きじゃくってた。ばあちゃんうるさかったらごめん。

かなりショックだったのはA君の好きな人が私じゃないのかもと薄々気付いていながら誤魔化していたのを本人からそうだよと誤魔化しが効かないようにされてしまったからだ。なんで気付いていたかというのも、花火大会中、A君はずっと誰かとラインをしていた。その誰かからの返信が来るのを気が気じゃないかのように待ち望んでいたし、本当は一緒に行く人がいないんじゃなくて、その子を誘う勇気がなかったからそういっただけで、本当はその子と行きたかったんだろうなぁって。女の勘って本当によく当たる。当たって欲しくないことまで。

告白もできずに大失恋してしまった私が、A君を責めることなんてできないけど「好きじゃないならそんなに優しくするなボケーーー!!」って枕に向かって叫んだの思い出す。めちゃくちゃ悲しかったけど、思い出すと純粋にA君のことが好きでいい恋愛だったなといつも思って笑い話にしてる。

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