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でっけぇ風呂場で待ってます

でっけぇ風呂場、街の温泉というか銭湯にたまに行く。考え事で頭がいっぱいになった時に行きたくなる。

700円。大人入浴サウナタオル付き。

知らない裸、もくもくの湯気、髪がキシキシになるリンスインシャンプー。

ザブンっと大浴場に顔ギリギリまで浸かる。

知らない裸、時間がたった身体、重力を感じる身体、骨張った身体。

みんな違っていて少し不格好。

けどみんな清潔だ。清潔で気持ちがいい。

裸がこんなに集合していても嫌じゃないのは清潔だからだ。

歳を取るとああいう垂れ方になるのか〜、お尻って鍛えないと本当に一番酷いな、とか思いながら風呂の気泡が左から右に流れるのをぼーっと眺める。

12分の世界。

息を吸い込むと肺が熱くて苦しい。じっとしているのがここでは良いとされている。

みんな自分と対話している。

ポタポタポタポタポタポタポタポタポタポタポタ………

無駄な我慢比べに勝負を付けたら勢いよく元の世界に戻って冷たい透明の中に慎重に入る。

いつもこの温度差に心臓が止まっちゃったらどうしよう、裸のまま救急車で運ばれるの嫌だなとか不安を抱えながら浸かる。

慣れるとぬるくすら、いいや自分の体温がよく分かる。

だんだんと肺から出る空気が冷たくなるのが面白くて大きめに呼吸を繰り返す。

12分の世界と冷たい透明を何セットか繰り返したら(700円の元が取れたと思ったら)でっけぇ風呂場から立ち去る。

ポカポカの身体をまだ少し冷たい空気に晒しながら帰るのが好きだ。

リンスインシャンプーでキシキシの髪もでっけぇ風呂場に来た証になって気分がいい。

結局どこでも考え事をしちゃうんだけど、なんか頭の中が、体が軽くなるからいい。




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