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【MTG】謎デッキ紹介:可能性の鳥

【はじめに】

 先日、僕は自分の記事の中で娯楽としてMTGを楽しむためには自ら謎デッキを握るしかないと言いました。しかしそうなると、では本当にお前は謎デッキを使っているのかという疑問が湧くかもしれません。
 そこで今回は、実際に僕が作った完全オリジナル謎デッキを紹介していきたいと思います。とは言え、何を以て謎デッキとするのかを曖昧にしてしまっては説得力も何もありませんので、僕が思う謎デッキの定義について先に述べさせていただきます。

1.謎カードを使う
 
誰も使わないようなカードを入れることで、初めて謎デッキを名乗ることができます。目安としては、アリーナでそれを使うと相手が確認のためにチカチカしたり、やけに思考に時間をかけるようなカードが理想的です。

2.強カードの採用を控える
 例えば、《鏡割りの寓話》や《放浪皇》のような環境で広く使われている強カードは謎指数を大きく下げるため、採用は控えます。但し、多色土地や汎用除去のような例外もあります。

3.ある程度の勝率を
 とは言ってもゲームは勝たなければ意味がありません。実際に一定の成果を挙げたデッキを謎デッキとして紹介します。

 こんなところでしょうか。定義としては少し緩いかもしれませんが、要はコピーデッキではないというのが条件です。それでは早速、紹介の方に行ってみましょう。

 ちなみに、かなりの超大作になりますので、特に原案などに興味が無い方は調整段階の部分だけ読んでいただければ十分です。

【設計段階】

1.出会い
 よく〇〇を救いたいという文言を目にしますが、僕がオリジナルデッキを組む時も似た思考を出発点としています。要は、ある謎カードをピックアップし、それを主軸にデッキを組むということです。
 では、まずはその主軸となる謎カードを紹介していきましょう。

 お忘れの方も多いかと思いますが、実は彼、《敏捷な窃盗犯》はグリクシスミッドレンジのメインパーツと名高い《死体鑑定士》と同じサイクルの出身なのです。

こっちは有名

 謎カードを探している道中で《死体鑑定士》を見た僕は、「こいつって確かサイクルだったよね」と思い、同サイクルのカードを検索して《敏捷な窃盗犯》と出会った訳です。

 《敏捷な窃盗犯》に話を戻しましょう。彼は3マナ2/1飛行と、お世辞にも通常の戦闘力が高いとは言えませんが、出た時の能力で相手の手札からアーティファクトやインスタントやソーサリーであるカード1枚を追放することができるのです。エンチャントに触れないのが難点ですが、とりあえず汎用除去や《絶望招来》を未然に防ぎ、流行りつつあるアーティファクトにも睨みを効かせることができます。
 いつ引いても基本的に嬉しい《死体鑑定士》とは違いますが、出た時に条件さえ合っていればハンド差を作れるという点において近いものを感じさせます。何より、構築で全くと言っていい程に見掛けないステルス性能が何とも趣深く、僕は彼を主役に決めました。

2.彼を活かす方法
 次に考えなければならないのは、主軸となる謎カードを活かす方法になります。もっと厳格な言い方をすれば、それでなければならない理由と言えるかもしれません。
 しかし、彼自身は妨害能力を搭載しているだけの鳥に過ぎませんし、単純なハンデスではないため、《鴉の男》のようなカードとシナジーを形成することもできません。となれば、残された彼の長所は飛んでいることしかありません。つまり、本来は戦闘に適さない彼を戦闘用に改造するしかないという訳です。……改造……ん?

何故か4枚あった

 こいつを付ければ我らが窃盗鳥が4/1飛行+死亡時1ドローに早変わりするではありませんか! 現在のスタンダードは緑が下火なため、優秀な到達持ちがいません。つまり、飛行は飛行で対処されるのが一般的です。それに加え、1/1飛行でブロックまで可能なクリーチャーや飛行と先制攻撃を兼ね備えるクリーチャーが少ないということもあり、4/1飛行は想像よりも厄介かもしれない、と考えました。また、死亡時1ドローも対処に困らせる大きな要因になり得るでしょう。

3.実現に向けて
 主立った戦術が決まり、いよいよ開発に向けた方針を決定する段階に来ました。デッキのメインとなる《敏捷な窃盗犯》と《人体改造機の冠》の2枚から、僕は最終形を多機能アグロとしました。単純な戦闘力のみを追求したクリーチャーではなく、妨害や支援を伴うクリーチャーをメインに、足りない戦闘力を改造で補いつつ攻めるというのが、今回の方針になりそうだと判断したのです。これは単色のアグロでは難しいことかもしれませんが、幸いにも《敏捷な窃盗犯》を使うことが確定しているため、エスパーの三色を比較的自由に使用することができます。

 そして、設計段階に目を付けたカードが、もう1枚あります。

お気に入り

 4マナ3/1に瞬速と絆魂を持ち、出た時に謀議し、更に呪文1つを手札に戻すことができる、正に多機能というカードです。似たカードとして《復活したアーテイ》がいますが、こちらは絆魂を持っているため、《人体改造機の冠》とのコンボで一気にライフレースを滅茶苦茶にできます。最大で6/2絆魂+死亡時1ドローが可能です。
 勿論、呪文バウンスも非常に効果的で、ミッドレンジ的なデッキが多い現環境では、相手の大きな動きを止めつつクリーチャーを展開し、相手に何もさせない流れを作り出すこともできます。

 2マナ、3マナ、4マナとメインに据えるカードが出揃い、ここからは開発段階に移行します。

【開発段階】

 なんとここまでで2000字以上になってしまったので、ここからは若干テンポアップして行こうと思います。
 開発段階初期に出来たプロトタイプには、以下のようなカードが採用されていましたが、テストプレイを通じて抜けていきました。

進化した潜入工作員
 アグロ的には合っていますが、デッキ自体が三色であるため、初手にコンスタントに出せない場合が多く、能力起動の余裕もありませんでした。

しつこい負け犬
 スタッツも能力も決して悪くはありませんでしたが、意外と《人体改造機の冠》とのコンボが決まらず、4マナは《常夜会一家の介入者》を構えるという事情もあり、奇襲が思っていたよりも合いませんでした。しかし、負け犬改造のコンボは別のデッキで活かせる可能性はありそうです。

ネファリアのグール呼び、ジャダー
 腐乱ゾンビを改造するというコンボを思い付いたので、テストに加えてみましたが、折角マナを費やして装備させた奴が自壊するのは美味しくありませんでした。

 これらの他にも開発段階で不採用にあったカードはありましたが、今回は主立った3枚に絞りました。奇しくも全部が黒ですね。
 特に衝撃が大きかったのは《しつこい負け犬》の失敗で、マナを大量に潰してしまうと重要なタイミングで《常夜会一家の介入者》を強く使えないという結果から、このデッキがどうやらテンポデッキ的な性質を持っているらしいことが明らかになりました。
 そこで採用されたのが、このカードです。

置物対策にも

 瞬速で急に3/1が現れるのは名前の通り奇襲性が高く、昨今の優秀な置物陣にも対応可能。これも多機能の名に相応しいカードでしょう。
 これに加えて《切り崩し》や《喉首狙い》といった汎用インスタント除去を採用し、相手の動きに合わせて戦術を適宜変更できる柔軟性を確保することが可能になりました。

【調整段階】

 今が正に調整の最中なのですが、とりあえずこの時点で一応の完成を見たデッキを紹介します。

エスパー多機能アグロ

デッキ
3 切り崩し (DMU) 89
2 魂の仕切り (BRO) 26
4 聖戦士の奇襲兵 (MID) 10
3 ファイレクシアの宣教師 (DMU) 27
3 喉首狙い (BRO) 102
4 人体改造機の冠 (BRO) 125
4 鼓舞する監視者 (SNC) 18
4 敏捷な窃盗犯 (SNC) 205
3 虚空裂き (SNC) 230
2 復活したアーテイ (DMU) 199
4 常夜会一家の介入者 (SNC) 209
1 平地 (THB) 250
1 沼 (THB) 252
1 皇国の地、永岩城 (NEO) 268
1 天上都市、大田原 (NEO) 271
1 見捨てられたぬかるみ、竹沼 (NEO) 278
2 さびれた浜 (MID) 260
3 アダーカー荒原 (DMU) 243
2 砕かれた聖域 (VOW) 264
4 コイロスの洞窟 (DMU) 244
4 地底の大河 (BRO) 267
4 ラフィーンの塔 (SNC) 254

サイドボード
3 強迫 (STA) 29
2 軽蔑的な一撃 (SNC) 39
2 否認 (STA) 18
2 腐敗した再会 (MID) 119
2 邪悪を打ち砕く (DMU) 17
2 放浪皇 (NEO) 42
2 死の偽装 (SNC) 79

もし宜しければ、どうぞ

1.実際の試合
 最初は主にプレイのBO1をメインにテストしていましたが、最終的にはランク戦やBO3など分け隔て無くアタックしてみました。ではまずは、実際に様々なデッキと当たった感触から。

VS赤単 相性:◎
 若干のダメージや先手後手の差は、改造した《常夜会一家の介入者》の6点絆魂パンチで一瞬にして無にすることができます。

VSアゾリウス兵士 相性:×
 こちらが後手だと巻き返すのは難しく、単純に攻撃面もリソース面も兵士側に軍配が上がるでしょう。それと《敏捷な窃盗犯》が全く刺さらなかったのも痛かった……。

VSミッドレンジ系 相性:△
 《鏡割りの寓話》の処理も容易で、相手の4マナ以降の動きに《常夜会一家の介入者》や《復活したアーテイ》の4マナ構え陣を被せる動きが強かったです。しかし、綺麗に対処された試合も多く、単純にデッキとしての完成度を思い知らされたような感触でした。

VSコントロール系 相性:○
 4マナ構え陣による妨害の妨害が上手く機能し、何よりも《敏捷な窃盗犯》が強く使えたのが大きかったです。

VSランプ系 相性:◎
 イゼットアーティファクトの《街並みの地ならし屋》などに対して《敏捷な窃盗犯》がスマートに機能し、《虚空裂き》で《マイトストーンとウィークストーン》を割るような動きもできました。

2.試合を通じて
 
勝率は詳しく出していませんが、予想に反して勝てたというのが第一印象です。ただ、メインの《敏捷な窃盗犯が刺さるかどうかが完全にマッチ運に左右されるという点は如何にも謎デッキらしい弱点かと。
 また、アグロとしては若干の火力不足感が否めないのも事実で、残り2点や3点が削れず、最終的に相手のペースになってしまった試合も若干ありました。勝ちに近付くことにおける爆発力が無いということでしょう。
 土地は特に要調整という感じで、多少のペインランドからのダメージは改造した絆魂持ちで何とかするという設計なのですが、絆魂持ちが綺麗に対処されると身動きが取れなくなる可能性があります。そこはスローランドの割合を上げるか、次セットのファストランドに期待という感じです。
 途中加入の《ファイレクシアの宣教師》や《鼓舞する監視者》はデッキに粘り強さを与えてくれましたが、デッキとして一体感があるかと言われれば微妙な気もします。とは言え《復活したアーテイ》が見事《常夜会一家の介入者》と共存したのは大きな成果でした。
 それと、肝心の《人体改造機の冠》ですが、絆魂や飛行との相性は確かに良かったのですが、ドロー誘発は相手が敬遠するため、あまり出番はありませんでした。次セットでまた強力な装備品が参入するようなので、今度はそちらと合わせてみたいと思います。

3.まとめ

謎指数:9(10段階評価)

謎カードによる奇襲性は上々!
ライフ面でもハンド面でも粘り強い!
特定のデッキに対する圧倒的有利!
アグロとしては爆発力に欠ける……?


 これらのレアが余ってるという方は是非。そうでないなら無理には作らない方が良いでしょう。所詮は謎デッキですから。

【さいごに】

 ここまで読んでいただいて、本当にありがとうございます。お気に入りのデッキの紹介で、つい熱が入ってしまい、なかなかの超大作になってしまいました。
 こういうデッキを作っていると、メインにしたかったカードが途中で抜けて凡デッキになってしまうということが稀にありますが、今回の《敏捷な窃盗犯》は使ってて楽しいカードだったので、強い弱いは別としてかなり好きなカードになりました。
 これからもこのデッキは調整していく予定ですが、新セットも近々出るということで、新しい謎デッキも模索していきたいと思います。
 とは言え、新セットの実装直後はリミテッド、特にドラフトをメインにプレイする予定なので、謎デッキ記事よりもリミテッド関連の記事の方が先になりそうです。
 それでは、またどこかで。


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