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君から見た大田区はどんな景色なのか

 私は夜、真っ暗になった多摩川の土手に寝転がり、空を眺めることが好きだった。私の家から2〜30分歩けば、多摩川の土手に到着する。土手は滅多に誰も来ないし、かと言って全く人気のないところでもない。一人になるのには丁度いいところだった。

 私の地元の大田区蒲田は、近くに羽田空港がある。そのおかげなのか、空を見上げると飛行機が飛んでいる姿をよく見ることができる。私が寝転がり見上げた夜空を、つんざくように光り輝きながら飛行を続ける。そんな姿を見るのが堪らなく好きだった。

 私の目から見える飛行機は米粒ほどに小さいけれど、それが飛行機だってことはわかる。でも、飛行機からは私なんか見えやしない。でもきっと、私の寝そべる土手くらいは見えているはず。でも、どんなふうに見えるのだろうか。

 その昔「ヨコハマ買い出し紀行」で見た地球をぐるぐる回る飛行機のような、ターポンと呼ばれる乗り物。しっかり読んだわけではないが、そのページをぼんやりと思い出してしまう。二度と地上には戻れない人たちが見る景色とは。思いとは。そんなことを考えてしまう。

 決して褒められるような生き様ではないけれど、私は地に足をつけて生きている。高く飛ぶことは結局できなかったけれど、その分高いところをしっかり見上げることができる。高いところを飛ぶ人たちには、絶対に見ることのできない景色だ。

 私から見た君はとても格好良くて光り輝いていて、力強く夜空を切り裂いている。それなら、君から見た大田区はどんな景色なんだろうか。少しだけでも教えてくれないか。

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