見た目と中身が一致するとは限らない
『かさねと昴』 山田金鉄
読了レビューです。
文字数:約1,000文字 ネタバレ:一部あり
・あらすじ
不慮の事故をきっかけに柴田かさねは、会社の同僚の榎田 昴が女装男子であると知る。
榎田は秘密を打ち明けた柴田に、少しずつ自分のことを話していく。
しかし、中身の性と違う服装をすることは、残念ながら一般的とはいえないわけで──。
・レビュー
女性が男性の装いをする「男装」があり、その対義語として男性が女性の装いをする「女装」がある。
あんまり界隈には詳しくないけれど、広義の意味ではキャラクターの服装をするコスチュームプレイ、略してコスプレの一部といえる。
前にレビューした橋本悠『2.5次元の誘惑』はコスプレについて描いた作品で、衣装はもちろん体型にまで手を加えるため、まさしく「変身」と呼ぶにふさわしい。
本作2巻においても榎田がコスプレイベントに参加するべく、慣れないヒールを履いて歩く練習をしており、涙ぐましい努力に胸が熱くなった。
注目するべきは榎田の尊敬する女装男子、マサムネの内面について描かれる2巻であり、女装をする理由に「ですよね」と納得した。
それを肯定する柴田は普通の女性であり、女装男子の榎田とマサムネに抱く感情も、めっちゃわかる。
友情と愛情が共存してしまう苦しさは、きっと本作だから描けたのではないかと。
私自身は彼らのような趣味嗜好を持ち合わせていない。
ただ、美しい可愛いと思ったものについて、〇〇らしくない、と言われた経験がある。
大多数の人からすれば、女性に対して「ボーイッシュ」を使うのは抵抗が薄くても、男性に「フェミニン」だと良い意味ではない場合が多い。
別に望んで体の性を決定したわけでもないのに、かくあるべし、という服装および態度が「普通」という言葉で雑に括られ、榎田もそれに苦しめられた過去が1巻で描かれる。
LGBTQ+の言葉は浸透してきたように思うけれど、理解増進法というキャンペーンみたいな結果になるあたり、どうしても認めたくない層がいるらしい。
伝統的な家族観とやらに拘った結果が今現在なわけだけど、認められるよりも前に存在しているわけで、たぶんそうしたほうが都合がいいのだろう。
本作が解決の一手になるか分からない。
それでも本作が世に出ているという事実が、私には嬉しく思える。
※ 本作の一部は ↓ で読めます。
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