新聞は古くて遅いメディアだけれども
【文字数:約1,200文字】
朝に配達された新聞を読むつつ朝食を食べるのが日課だ。
ただしラジオに意識を向けていることが多いので、全体を眺めるというのが正しい。
家を出るまでの時間だと紙面すべてを読むことは不可能なので、月2回くらいの頻度で溜まった新聞に目を通し、そのまま古紙回収へと回している。
さすがに1字1句を漏らさず読んでいては時間が足りないため、大きな出来事についての推移とか、地域の小話などを読むだけに留めている。
ここ最近の大きな出来事といえばウクライナ情勢で、侵攻の始まった2/24から1ヶ月以上が過ぎ、表紙と呼べる1面に載らない日は数えるほどだと思う。
日付が進むごとに国外避難民の単位が10万から100万になり、侵攻の余波がおよぼす経済への影響が、はっきりと日本でも実感できるようになってきた。
新聞を読んでいると、そうした目につきやすい情報の推移が分かる他に、テレビなどでは話題されにくい情報が載っていたりする。
その1つが文字通り雲の上の話で、宇宙開発の分野にも侵攻の影響が出ているらしい。
国際宇宙ステーションISSに向けて宇宙飛行士を移送したり、宇宙空間に衛星を持っていくためには、地球の重力を振り払うロケットが必要だ。
その役目の一角を担っていたソユーズは、件のロシアが発祥ということもあってか、侵攻前には決まっていた打上予定に影響が出ているそうだ。
雲の上では宇宙の深淵を前にして、各国が手をとりあっているのに何とも皮肉な話だ。
20年くらい前の宇宙を題材にしたアニメ、原作:幸村 誠の『プラネテス』が再放送されているのが今の時期というのも、偶然とはいえ奇妙な一致に思える。
新聞に話を戻すと、近いからこそ知りにくい地域の小話や曜日ごとの特集記事、ウクライナ以外の世界情勢について読んでいる。
さっぱり続報が出ない中国での旅客機墜落は、システムに欠陥があるとされる737MAXの製造をしたボーイング社の機体で、原因が分かるまで飛行機に乗るのは遠慮したい。
そうしたネガティブな記事は気が滅入るけれど、本の書評は個人的なお気に入りだ。
書評家による紹介文は自分が書く際の参考になるし、作家の方が書くものは人となりが分かったりして面白く、どういった部分に焦点を当てているのかも興味深い。
残念ながら新聞の販売部数は下がる一方なようで、購読料が上がったにも関わらず広告は増えた気がするし、無料のweb記事で十分という意見も周囲には多い。
ただ、紙の新聞は読み物として優秀で、言葉との偶然の出会いが起こりやすいのが魅力だ。
例えば「呉須」は「ごす」と読むにしても、何のことか分からない。
添えられた説明から、陶磁器の染付に使われるコバルトのことだと分かり、1つ新たな知識を得られた。
安くなった通信料と反対に購読料は上がったし、読めずに処分する場合もあってオススメしにくい。
しかし言葉を扱う趣味には役に立つと実感しているから、これからも可能な限り読み続けたいと思っている。