見出し画像

ねこ様がみてる

【文字数:約1,000文字】
お題 : #猫写真

 2月22日は過ぎたけれど、写真用のフォルダに良いのがあったと思い出して探してみた。

 しかし目的の写真は見つからず、せっかくなので別のものを発掘する。

 添付された情報を確認すると旅先での1枚で、無人駅で休んでいるときに撮ったらしい。

 猫には3つのタイプがあると思っていて、もっとも強敵なのは戦士タイプだ。

 すばやくゼロ距離まで肉薄して、こちらの防御力を無効化してくる厄介なタイプで、家猫のように人慣れしている場合が多い。

 逆に人がいると知るや逃げだすのが忍者タイプで、どんな姿をしているのだろうかと様々に想像させ、探す人間をことごとく幻惑する。

 このときに出会ったのは2つの中間で、ある程度の距離を保ちながら心理戦をしかけてくる狩人タイプだった。

 けれども遭遇したときに与えられそうなものがなく、むしろ食料を調達したかったのは自分だったように記憶している。

 出会ったのが近所であれば野良猫にエサを与えることはない。

 その掟が薄まる旅先は、変わった暮らしをする猫に出会える絶好の機会だ。

 場所も無人駅の待合室で、室内にいるのは自分だけ。

 たまたま別の旅人と出会ったときのような心境で、

「ごめんな。何もないんだ」

 などと話しかけてしまったけれど、きっと他の誰かもやっている。

 やがて狩人タイプの猫は何もないと理解したのか、開きっぱなしになっていた出入口の外へと向かった。

 北海道は夏でも寒さが生きている土地で、その日も弱い雨のせいか体感は20℃を下回っていた気がする。

 冬になれば雪に覆われる北の大地と野良猫。

 あらためて観察してみるも、やはり首輪をしていない。

 飼われていない動物が生きるのは難しく、どこか他に寝床でもあるのだろうかと思いつつ、出入口の扉を閉めた。

 その後、電車を待つのではなく溜まり場にしている若者たちが出入りして、うっすらと出入口の扉が開いていた。

 雨も止んでいるなら移動しようかと扉に近づき、そして──。

 映画『シャイニング』よりか『家政婦は見た!』っぽく、片目なのがさらに不気味だった。

 屋内に戻って寒さをしのごうと考えたのかもしれない。

 あの猫が今も生きているとは思えないけれど、もしまた旅先の無人駅で猫に出会ったら、きっと何かしらの縁があるのかもしれず。

 最後に待合室で語らったときの写真を貼り、本稿を締めることにする。

私と君の心の距離は





なかまに なりたそうに こちらをみている! なかまにしますか?