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人生100年なんてフィクションでは?

『私がオバさんになったよ』 ジェーン・スー 読了レビューです。
ネタバレ:たぶんなし 文字数:約1,900文字

・あらすじ

 あらすじって「粗い筋」のことよね?

 つまり「ほうれい線」の隠語ってわけ。

 だれでもいつか若さっていう内燃機関が衰えるのね。

 でも人生100年時代とか言われてるくらいだから、50歳からは後半戦ってわけ。

 頭と体は若いときより動かないのに、同じだけ折り返し距離があるなんて信じらんない。

 それでも元気に生きてる人がいるみたいだから、読めば勇気づけられるかもしれないし、そうでもなかったりするかもね。

※以上の文は本作と関係ありません

・レビュー

本作について

 本作は「小説幻冬」に掲載された対談連載をまとめたもので、「もういちど話したかった」が元のタイトルです。

 とくにテーマを決めず、ひたすら著者のジェーン・スーとゲストが対談した内容を収録しており、純粋な「読みもの」とは呼べないかもしれません。

 そもそもジェーン・スーはケイン・コスギと違って日本生まれ日本育ちで、なかやまきんに君と同じような芸名です。

 著者を始めゲストにも覚えがないとしても、きっとタイトルに心を惹かれた方がいるのではないでしょうか。

 本作のタイトルについて、著者のジェーン・スーは次のように書いています。

 あれから何冊か本を出す機会に恵まれ、改めて、本のタイトルは犬笛のようなものだと思う。届いて欲しい人にしか聞こえない周波数のようなものがあるのだ。そこにうまくチューニングできれば、読み手をがっかりさせることも少なくできると信じている。

3頁 「まえがき」より

 思惑どおり犬笛に引き寄せられた結果、こちらのレビューを書くことにしました。

どこから読んでもいい

 本作は表紙のイラストで描かれた、総勢8名との対談が収録されています。

 それぞれの対談は独立しているので、なんとなく興味が湧いたものだけ読んで全然OKだと思います。

 ちなみに著者のジェーン・スーさんはラジオパーソナリティでもあり、雑談力というか言葉のキャッチボールの上手さには定評があります。

 とくに読んでいて面白かったのは、脳科学者の中野信子さんとの対談です。高いIQをもっていないと入会できないとされるMENSAの元会員で、テレビのコメンテーターとしても活躍されている印象です。

 やはりというか、脳科学の視点から見た話を2つ紹介します。

 1つ目は「報酬予測」および「報酬期待」の話で、現実の事象よりも何かに期待している状態に強くドーパミンが出て、より大きな幸福を感じるらしく。

 「焼き鳥を食べる」という事象を例にして、次のように話しています。

食べてる状態は幸せの絶頂ではないわけよね。いつでも、次のよりよい食べ物が欲しい。ヒトは、そういう業みたいなものを背負っていて、「今の状態」に満足しないようにできてるのね。なんらかの新しいことをしたいと思っちゃう。それが目標や指針だったりするといいんだろうとも言えるけど。そこを悪意のある誰かにハックされちゃうと怖いね。

86頁

 2つ目が「受動意識仮説」の話で、意識は副産物みたいなもので、生きるという意味なら意識がなくても可能であるとして、次のように続きます。

人間が分子機械だとするじゃない。そうすると人間が動く、それ自体がすごくて、そこに意識なんてついちゃったらもう、おおこんなものをよくぞ作りました、って思う。苦しいとか、不当に扱われて悔しいとか、あいつむかつくとか思ったところで、それすらもすごいファンクションなのね。感じられてよかったねって思う。こんな機能なかなか人工知能には実装できない。

88-89頁

知らない人の話を聞いてみる

 移動中にラジオを聞いていることが多く、そのときどきで違う人が専門あるいは得意とする分野について話しています。

 興味のある話が出ることもあれば、そうではないときもあるのですが、ラジオなので「聞き流す」ことができます。

 それでも耳に残った単語を後日、別の人から聞いたり活字で読んだりすると、「あのことか」と点だったものが線になったりします。

 自分の興味がある分野を掘り下げるのは尊いですが、別の分野を聞きかじってみると異なる視点を持てたり、思いがけない相乗効果が得られるかもしれません。

 もちろん役に立たない場合もありますけれど、人間がもつ思考という営みを楽しむには、より多くの情報を得るのが近道だと考えています。

 私は自分が100年も生きるなんて想像がつきません。

 それでも食べて寝て起きれば明日になり、やがて1週間、1ヶ月、1年と続いていくのでしょう。

 最後のときに「まぁまぁだったな」と言えるくらいには、残りの人生を楽しみたいのでありました。



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