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あんでつないで 《創作童話》

【文字数:約2,300文字】


 どこかのもりに
  どうぶつたちの
   むらがありました

 そのはずれには
  ちいさなうさぎが
   すんでいます

 けれども
  ちからじまんの
   くまにわらわれて
    とってもかなしそう

「よわくてちいさい
  おまえはなんの
   やくにもたたない」

 そういわれてから
  うさぎはいえで
   おちこんでいます

「ぼくはよわくて
  ちいさくて
   ほんとうにやくたたず」

 でかけるきにも
  なれなくて
   あみものばかり
    しています


 あるひ
  うさぎのいえを
   おしゃれなきつねが
    たずねてきます

「わたしのために
  なにかつくって
   くれないだろうか」

 うさぎはおどろき
  へやのすみで
   まるくなりました

「ぼくの
  つくったものなんて
   だめなものばかりです」

 しかしきつねは
  いとみたいな
   ほそいめを
    まるくします

「それはきめるのは
  きみじゃなくて
   このわたしだよ」

 そういうと
  どんぐり3つを
   とりだして

「これはしごとの
  おれいだから」

 うさぎのつくえに
  おきました

「なにもしていないのに
  うけとれません」

 しかしきつねは
  きにしません

「あしたくるから
  それまでに
   よろしくたのんだよ」

 しっぽをひるがえし
  きつねは
   でていってしまいます

 こまったうさぎは
  かんがえて
   みみかざりを
    あみました


 つぎのひの
  おなじころ
   きつねがいえに
    やってきます

 わたされた
  みみかざりを
   さっそくつけて
    うれしそう

「こんなよいものを
  つけているのは
   わたしだけだろうね」

 だけどうさぎは
  したをむき
   とってもしんぱいそう

「ぼくが
  つくったものなんて
   ほんとうに
    いいのですか」

 するときつねは
  こわいかおになって
   いいました

「わたしがよいと
  おもったのに
   もしかして
    うたがっているのかい」

「そんなことは
  ありません
   だけどぼくは
    やくたたずだから」

 まるくなった
  うさぎをみても
   きつねは
    やっぱりきにしません

「あさってくるから
  それまでにまた
   よろしくたのんだよ」

 どんぐり6つを
  つくえにおいて
   でていってしまいます

 こまったうさぎは
  かんがえて
   ちいさなかばんを
    あみました


 つぎのつぎのひの
  おなじころ
   きつねがいえに
    やってきます

 わたされた
  ちいさなかばんを
   かたからかけて
    うれしそう

「こんなよいものを
  つくれるのは
   きみだけだろうね」

 だけどうさぎは
  おおきなみみと
   よこをむいてしまいます

「それくらいなら
  ぼくじゃなくても
   きっとできます」

 するときつねは
  とがったみみを
   ふるわせます

「きみがやらなければ
  きっとだれにも
   できないだろう」

「そんなことは
  ありません
   ほかにぼくは
    なにもできないから」

 ちいさくなった
  うさぎをみても
   きつねは
    さっぱりきにしません

「しあさってにくるから
  それまでにまた
   よろしくたのんだよ」

 どんぐり9つを
  つくえにおいて
   でていってしまいます

 こまったうさぎは
  かんがえて
   おしゃれなふくを
    あみました


 つぎのつぎの
  そのまたつぎのひの
   おなじころ
    きつねはいえに
     きませんでした

 きになったうさぎは
  むらへのみちを
   あるきます

 とちゅうのはしで
  くまがおろおろ
   こまっていました

「おれは
  ちからじまんだけれども
   およげない
    どうしよう」

 みるとしたには
  たおれたきつねが
   てをふっています

「つぎはどんなものが
  できるのか
   そうぞうしてたら
    おちてしまった」

 それから
  きつねは
   ちいさなかばんを
    もちあげます

「ここにあった
  どんぐりで
   たすけをよんだ
    というわけさ」

「おれのいえに
  りすがやってきて
   たすけてくれと
    たのまれた」

 けれどもくまは
  あたまをかかえ
   たおれたきつねを
    みつめます

「おれのからだは
  おおきくて
   かわにはいると
    おぼれてしまう」

 ちいさなうさぎは
  およげても
   たおれたきつねを
    もちあげられません

 こまったうさぎは
  かんがえて
   いえにかえって
    もどってきます

「これをほどいて
  ひもにすれば
   およげなくても
    だいじょうぶ」

 せっかくあんだ
  おしゃれなふくを
   じょうぶなひもに
    かえました

 ちからじまんの
  くまがつかえば
   きつねをはこぶのも
    かんたんです

「いやいや
  あぶないところを
   たすかった」

 くまは
  おれいをいわれても
   なんだか
    しょんぼりしています

「おれだけじゃ
  やくたたずだった
   うさぎのおかげだ」

「ちからがよわい
  ぼくだって
   ひとりじゃだめだった」

 かなしいかおの
  くまとうさぎに
   きつねが
    いいます

「みんな
  それぞれのとくいが
   あるってことさ」

 それから
  かろやかな
   みのこなしで
    おどりはじめます

「わたしがみんなを
  たのしませる
   みたいにね」

 おおきなくまと
  ちいさなうさぎは
   わらってしまいます

「きみが
  はしからおちたのも
   とくいってやつなのかな」


 どこかのもりに
  どうぶつたちの
   むらがありました

 むらのみんなは
  それぞれのとくいを
   もちよります

 きょうもだれかが
  だれかをたすける
   ひもでむすばれて

 つよくてきれいな
  ひとつのわっかが
   できました


 おしまい


初出:2023/04/28 note(書き下ろし)

 構想だけはしていたものの、形になる機会を逃したまま忘れるよりか、だれかの癒しになればなと。

 わりと理不尽な要求をしている狐ですが、きっと兎の実力を見極めて依頼していたはず。

 そして落ちたのに無事とか、兎と熊を仲良くさせるための芝居だったのでは?

 こうした話を呼吸のように書く動物がいれば、繊細な編み物に対して集中できる動物もいるわけで、何もできねぇと悲観しすぎなくてもと思います。

 もちろんそれが理想論であることは理解していますけれど。


なかまに なりたそうに こちらをみている! なかまにしますか?