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LAPUTA Castle in the sky

【文字数:約2,500文字】
お題 : #アニメ感想文

 私の魂の半分は「天空の城ラピュタ」で作られています。

 ちなみにヘッダー画像は懸賞でしか手に入らない非売品、ラピュタトランプです。

 同作はスタジオジブリ制作の長編アニメーション第1作で、テレビ放映されるたびに作中の呪文「バルス」を一緒に唱和する、「バルス祭り」なるものが開催されます。

 すでにストーリーを知っている方も多いでしょうが、あえて書くこととします。

・あらすじ

 飛行船に乗せられ、どこかに連れていかれる少女シータ。

 彼女を奪いに空中海賊ドーラ一家が現れ、その混乱をついてシータは逃走を試みるが、飛行船から雲海へと落下してしまう。

 一方、両親と死別後にさびれた炭鉱で暮らす少年パズーは、空から降ってきたシータを見つける。

 偶然に出会った2人は伝説とされる「ラピュタ」を接点に、大冒険の物語が幕を開けるのだった──。

・すごいぞ、ラピュタはほんとうにあったんだ。

 ↑は味の素とコラボした炭酸飲料のキャッチコピーでして、作中に登場する小型飛行機フラップターにパズーとシータの2人が乗る写真が添えられています。なぜか欧米人モデルによる実写ですけど。

 本作の最終的な目的地となるラピュタですが、開始直後は「本当に存在するのか?」と疑ってしまいます。

 パズーの父親が撮影した写真があるものの、詐欺師あつかいされて亡くなったと彼は言います。

 しかし自分の手で作った飛行機を使い、いつか自分がラピュタを見つけるのだと語る姿を見て、どうにも悲しくなるのは私が老けたせいでしょうか。

 パズーが作っている飛行機は足こぎで、高台などを利用して長距離を滑空することは可能でも、はるか上空に位置するラピュタを目指すなど不可能です。

 部品を1から作るような秀才ですから、きっとその事実にもうっすら気づいているのではないでしょうか。

 他界した親の亡霊を追いかけていたパズーと、空から降ってきたシータは出会います。

 よかった。ほんとうによかった。

・逃走は続く

 シータを追ってきたドーラたちから逃れ、切り立ったスラッグ渓谷の間を走る蒸気機関車に乗り、2人は隣町を目指します。

 けれどもドーラは諦める様子もなく、四輪車で線路を破壊しながら追ってきて、さらに飛行船でシータを連れ去った男たちまでもが現れます。

 息をつく暇もないピンチの連続に観客は釘付けで、パズーの抱えている悲しみなんて吹っ飛んでしまいますし、追われるシータが何者なのかと謎が深まるのです。

 物語の冒頭において、飛行石によってシータは空中落下からの生還を果たします。彼女には何かあるに違いないと観客は思いつつ、まずは逃げなければと今に集中させる脚本が素晴らしいですね。

・パズーの夢は現実となる

 ふたたびシータの持つ飛行石が光を放ち、炭鉱へと降り立った2人はポムじいさんと出会い、ラピュタの伝説を聞きます。

「すごいぞ! ラピュタは本当にあるんだ!」

 そのように興奮するパズーが言い放つのですが、少し考えれば「おや?」と違和感をもつのではないでしょうか。

 彼は父が辿り着けなかったラピュタに行こうとしていながら、どこかで信じ切れていなかったのではと、先のセリフから邪推してしまうのです。

 その後、シータを追ってきた男たちに囚われ、パズーは1人で家に帰ることになります。男たちのリーダーともいえるムスカに、謝礼として渡された金貨を投げ捨てようとしてできなかったのが、どうにも悲しさを誘います。

 ラピュタへの道しるべであり、理解者でもあったシータと別れたパズーは、きっと世界の終わりのような心境だったのではないでしょうか。

 だからこそドーラたちの仲間になって、二度と家には帰れなくなっても構わないし、40秒で支度することも可能だったのではと思います。

・どこにでも2人なら

 パズーは要塞に囚われていたシータを助け出したものの、彼女は飛行石を失ってしまいます。

 2人は協力してくれたドーラたちと共にラピュタを目指すのですが、このときすでに2人の信頼は強固なものとなっていたからこそ、どこかに逃げるという選択肢がなかったのでしょう。

 一時的とはいえ海賊の仲間になったわけで、お尋ね者として追われるならと考えた可能性も十分にあります。ですがそれよりも2人でラピュタに辿り着くことが、彼らにとっての人生の目的になったように思います。

 そこからドーラ一家との交流、彼らの飛行船タイガーモス号の撃沈、ラピュタへの到着と続き、ムスカの野望が判明する場面と続きます。

・シータだけを探し求めて

 パズーはラピュタ内部へと侵入する中で、履いていた靴に持っていた鞄、飛行用ゴーグル、最後にドーラから受け取ったバズーカと、次々に持ち物を失っていきます。

 そうして体1つになってシータと再会し、手をつないで滅びの言葉を唱えます。

 おそらく死を覚悟していて、だけど2人ならばと決心できたのは何故でしょうか。

 ムスカの銃撃で破壊された飛行用ゴーグルは、パズーのラピュタに対する執着を、バズーカはパズーたちの生への執着を象徴しているような気がします。

 旅は終わってしまうけれど、かけがえのない人と出会えた。

 そんなことを2人の心中に想像してしまい、私は涙なくして「バルス」の場面を見られないのです。

・おわりに

 本作は「未来少年コナン」のように文明崩壊や少年少女の冒険活劇など、いくつかの類似点があります。ただし決定的に違うのは、ラピュタは2人が望んで死を受け入れるような点です。

 死が素晴らしいなどと言いたいのではなく、そこまでして添い遂げたいと思える相手と出会えるのは、きっと人間が得られる幸福の中で最上位に近い気がするのです。

 子供の頃に観たときはドタバタに目を奪われ、大人になって観返すとパズーとシータの信頼関係に涙しました。

 ある人と死に別れた私にとって、2人の姿に理想を重ねているのかもしれませんが。

 だいぶ駆け足になりましたけれど、以上で「天空の城ラピュタ」の感想といたします。

 ご高覧いただき誠にありがとうございました。


JOKERはムスカです。


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