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百合姫読切感想・考察集15『ふたりぐらしと3つのケーキ』

※ヘッダーはみんなのフォトギャラリーより、「rmia」さんの作品を使用させて頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。

 最近、某有名店のチーズケーキを食べる機会に恵まれた。
 有名店だけあって流石のお味で、何個でも食べれそうな反面、やはりお腹周りの脂肪を考えると、そもそもケーキを食べても良いのだろうか?という気持ちにもなる。結局1つだけ頂戴して、おかわりは断腸の思いで断ったのだが、2個、3個と、何も気にせずチーズケーキを食べることが出来ればなぁ...と思わずにはいられない。

 という不自然な前置きはさておき、今回はコミック百合姫7月号より、金子ある先生の『ふたりぐらしと3つのケーキ』の感想を書いていきたいと思う。

・宣伝文句通りの「かわいさ」

 表紙の説明で「ネクスト『かわいい』の名手」と銘打たれている通り、ヒロイン「茉由」の可愛さが十二分に伝わってくる出来。「頭から爪先まで」かわいいに全振りしたキャラデザはどこか「地雷」のような危うさも感じるが、それが寧ろ「すぅちゃん」がベタ惚れする「魅力」になっている。

 髪飾りやスリッパ、お互いのイニシャルを刻んだぬいぐるみ、枕にコップ、箸置きなど、とにかくウサギモチーフのものが多いのも面白い。これは茉由をウサギに見立てて、「孤独」を恐れるあまり、すぅちゃんに「愛を試そうとする」、という暗喩になっていると感じた。出会って6年で、高校の卒業式らしき写真があることから、高校1年頃に出会い、現在は大学4年くらいと考えるのが妥当な気がするが、高校入学時、フリルやリボンのような「地雷」的可愛さを好むあまり周囲から浮いていた茉由に対し、すぅちゃんが一目惚れして...などの背景がなんとなく連想(妄想)される。そう思えば、茉由の「愛を試す」という行動も寂しさや依存の裏返しというのもなんとなく腑に落ちる...まぁ私の妄想なのだが。ともかく、同じ金子先生の作品で、以前百合姫の読切で掲載された『もしかして:地雷女』みたいな感じなのかもしれないなとは思った。
 それにしても、充電器のコンセントや、洗濯バサミなど、小道具までウサギを連想させる形の物にしているあたり、キャラ作りへの徹底っぷりを感じた。包丁に2人の本名が印字されている演出もGood。


・すぅちゃんの「まゆまゆ推し」描写が秀逸

 すぅちゃんがいかに茉由を愛しているか。それが本作の重要な部分になっていると思われるのだが、それが自然に伝わってくる描写が素晴らしかった。
 まずは3つのケーキを提示された際の独白「死即ち別れ」。ここから死ぬことよりも茉由と別れることの方が重大なことである、ということが伝わってくる。そして自身の命よりも愛を重要視するという点を、シェイクスピアの戯曲の一節に登場しそうな五文字で表現することで作品に文学的な雰囲気を生み出しているように感じた。

 次に、ケーキの答えが分からず悩むシーン。「このままじゃまゆまゆをもっと怒らせ....」と焦るすぅちゃんは、目に涙を浮かべるが、茉由もまた目に涙を浮かべるのを見て、自身を叱咤する。「推しの涙」という何よりも排除すべき存在に対し、一瞬で我を取り戻し対応するという点に愛を感じるし、とにかく茉由を1番に考えている、というのがよく分かる演出でいいと思った。

 ただ、ここからの展開はやや急な感が否めないというか、テンポ自体も性急だし、3つのケーキの意味を考えながら読み進めていた中で結局は後出しの情報で完結した、という感じもあった。進行が少し早めというか、見せたい部分はもう少しページを割いてというか、ふんわりした表現で申し訳ないのだが「溜め」があってもいいと思う。最も、2人の世界を見せるという意味では、読み手を置き去りにしてノンストップで進めて行った方が演出としては効果的とも思うので、決して悪いとは言えないだろう。

・終わりに

 今回は8月号が発売されてからの投稿になってしまった。先月号の感想なんて誰が読むんだよ...という話だが、そもそもこんな感想文なぞ誰も読まないようなものなのでセーフである。今回も書いたあと見返してないから支離滅裂な内容かもしれないし、面倒で太字とかしてないけど誰も読まないからセーフである。

 本作は短い中に具体的な数字が散見されたり、意味深な小道具の配置があることから色々深読みも出来そうである。個人的にプリキュア的なポスターはすぅちゃんの趣味だと思うし、茉由の魔法少女ステッキのイアリングは、茉由がすうちゃんを喜ばせるために付けた物だと思っている。すぅちゃんの誕生日が恋人記念日なのは、「大学入学を機に同棲を始めた2人。早速交友関係を広げるすぅちゃんを取られたく無い茉由が、すぅちゃんの誕生日(5/18?)をきっかけにアプローチして...」みたいな前日譚がきっとあったんですよきっと。知らんけど。
 そういう読み手の妄想が広がる作りをしている作品が個人的に大変好物だったりするので、そういう読切が増えればいいなーと思う今日この頃である。とりあえず8月号買ってきますか…。

 それでは、駄文失礼しました。

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