視察報告 神奈川県のフルインクルーシブ教育について 尼崎市議会議員 池田りな
こんにちは。尼崎市議会議員 池田りなです。視察の報告をいたします。
テーマ:神奈川県のフルインクルーシブ教育について
日程:2024年4月25日(木) 13時半~3時
場所:神奈川県横浜市 神奈川県教育委員会
【概要】
神奈川県はインクルーシブ教育について新しい取り組みをして、全国から注目を集めています。令和3年3月 神奈川県立総合教育センター 支援を必要とする児童・生徒のためにおいて、神奈川のインクルーシブ教育について以下のように述べられています。神奈川県のインクルーシブ教育とは、共生社会の実現に向け、すべての子どもが、できるだけ同じ場で共に学び共に育つ教育のことです。障がいの有無にかかわらず、女性も男性も、高齢者も若者も、すべての人がお互いの人権や尊厳を大切にし、支え合い、誰もが生き生きとした人生を送ることができる社会を「共生社会」といいます。この「共生社会」の実現のために、神奈川のインクルーシブ教育に取り組むことになります。
注目される取組として、2024年3月29日には、神奈川県教育委員会が障害の有無に関わらず同じ地域の学校、同じ学級で子どもたちが共に学ぶ「フルインクルーシブ教育」を実現するため、海老名市教育委員会と連携協定を締結したことが発表されました。 海老名市は「推進市町村」と指定され、課題の整理や普及活動などを行う予定です。 神奈川県はフルインクルーシブ教育の推進に当たり、教育大綱に「誰ひとり取り残さない教育」を掲げる海老名市と方向性が一致し、連携を決定しました。
2024年4月24日Forbes Japanでは、神奈川県の黒岩知事の記事が、本音は特別支援学校をやめていきたい 神奈川県 黒岩知事が「ごちゃまぜを当たり前に」したい理由という見出しで特集をされていました。
参照:本音は特別支援学校をやめていきたい 神奈川県 黒岩知事が「ごちゃまぜを当たり前に」したい理由 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
インクルーシブという言葉は曖昧であり、人によって定義が異なりますが、私はインクルージョン研究者の野口 晃菜氏が提唱する以下の意味で使用しています。「多様な子どもがいることを前提として、その多様な子どもが地域の学校で学ぶ権利を保障するための教育システムを改革するプロセス」
野口 晃菜氏は、子どもはそもそも多様であることを前提とすること。そして、地域の学校で学ぶことを当然の権利として保障すること。そのためには、既存の教育システムの枠組み(教育内容、指導方法、組織体制など)を改革する必要があると述べています。
今回の勉強会で特筆すべきことを挙げます。神奈川県庁に入るとすぐに、共に学ぶというポスターが貼られていましたし(特別)支援教育の方針冊子は発達障害がある子供が描いた絵が表紙でした。ここだけをとっても、神奈川県が障がいの有無に関わらず全ての人が共に暮らせる県を目指しているのが強く伝わってきました。
また、「子どもたちは全員支援が必要な時、必要な場所があるので、支援級在籍の子だけではない。 だから神奈川県では特別支援教育という言葉は使わず支援教育を使用している」と担当の方がおっしゃっていたのが印象的でした。
参照:P2. 支援を必要とする児童・生徒の教育のために教育相談コーディネータとチームづくりr3shiensassi.pdf (pen-kanagawa.ed.jp)
尼崎市に活かしたいことを2点あげます。1点目は、神奈川県内でのインクルーシブ教育実践推進校設置です。 令和2年4月から、知的障がいのある生徒を対象とした、インクルーシブ教育実践推進校特別募集による入学者選抜を実施しています。
参照:インクルーシブ教育実践推進校inclusive_230324_OL (pref.kanagawa.jp)
2点目は、神奈川県独自の教育相談コーディネーターです。神奈川県の教育相談コーディネーターは特別支援教育コーディネーターと同じ役割を果たしています。特別支援教育コーディネーターは、特別支援教育が学校教育法に位置づけられた平成 19年 4 月に文部科学省から発出された「特別支援教育の推進について(通知)」に基づいて、国全体で「校務」として位置づけられています。学校長が、交渉力や人間関係調整力、本人、保護者、担任の相談に応じるカウンセリングマインドなど、求められる力を踏まえて、指名します。
尼崎市では特別支援教育コーディネーターになる知識を学ぶために、教員が校務外で、実費で大学に通っています。時間とお金の負担で、特別支援教育について学びたくても学べないという声も教員から聞きます。
神奈川県では、独自に講座を実施して公務で無料で受講できます。これにより、特別支援教育の知識を持った教員が県内に増え、神奈川県が掲げるフルインクルーシブな教育を実施しやすくなることは言うまでもありません。
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