本作は僕が最近ハマっている鈴木涼美さんの書評集である。
と書いてある通り、これは鈴木さんが自分と似たような女の子に向けて作ったブックガイドでもある。でも、意外と一番読んで効用があるのは、僕も含めた二〇歳くらいの男性かもしれない。なぜなら、ここには「いやあ、僕ではそうは読めなかったなぁ」と感心するほかない鮮やかな切り口があり、「え、女性って本当はそうだったんですか?」と女性から見たら間抜けであろう驚きを隠せない世界の反対側の真実があり、「媚びて承認を求めないと生きていけないっていう点では、誰だって「娼婦」だよなぁ」と考え込まされざるをえない人間に対する深い洞察があるからだ。
また、この本が、そして鈴木さんが静かにしかししっかりと訴えているのは「若さゆえの無駄や愚かさを切り捨てないこと」や「言葉を持って生きていくことの大切さ」である。
どんなことも逸脱してみなければ見えないことがある。この本を読んで改めてそう思ったし、読み終えた時にはこれはもうただのブックガイドを超えて人生の一冊になっていた。人生がうまく行っていない時も、うまく行っている時も、そばにあって大事なことを教えてくれる一冊だと思う。