【#まらフェス2020】ライブレポート

まらフェス2020がオンラインで開催された。
YouTubeとニコニコ生放送で同時配信された本公演は、5月に開催される予定であった「まらフェス」の代替公演という形で実施された。
まらしぃと縁のある多くのゲストとコラボしながら、ソロパートも入りつつ進行した、2018年以来のまらフェス。無料配信の形式がとられた故の意義があったのではないかと感じている。

『Love Piano』で幕を開けたまらフェス。開始直前の短い配信時には「手がとても冷たくなっているし緊張している」と言っていたが、まるで感じさせない演奏である。普段の生放送と似たアングルが彼のルーツを感じさせ、グランドピアノであることや照明がライブ感を増幅させる。演奏前後には彼の演奏動画おなじみ、曲名を書いた紙をカメラに映すことをし、生放送とライブ、投稿動画をないまぜにしたような特別感があった。
『ちょっとつよいエリーゼのために』『ちょっとつよいトルコ行進曲』とクラシックの激しいアレンジで怒涛の高速パートを弾き、その速さのみならず通常のライブよりよく見える指の動きでオーディエンスのコメント欄を沸かせた。

早速、と呼んだ第一のゲストは「名古屋のラーメン同好会」こと3ピースインストバンド、Logical Emotion。安定感のあるtabclearのドラムの上にdrmが演奏する奇抜な音の(動きも然りである)ベース、そしてまらしぃの弾く、のびやかな主旋律を奏でるピアノが画面の向こうにいるオーディエンスを盛り上げ、まらしぃの緊張もほぐした。自己紹介のようなMCののち、drmの仮面に突っ込むなどのやり取りが付き合いの長さがうかがえてほほえましい。『アマツキツネ』『空想少女への恋手紙』『ラーメンデュエル』とオリジナル曲を披露し、息のあった自由度の高い演奏で柔らかい雰囲気をつくりあげた。

緊張が解けた、と言うまらしぃに呼び込まれたのはDJ、kors k。maras kとしてユニット活動をしている二人は照明の演出に彩られながらダンスナンバー、『Piano Ninja』『Sig Sig』を披露。Logical Emotionでは主旋律としてはたらくことの多かったまらしぃのピアノだが、ここではkors kの操る音と主旋律を行ったり来たりし、テンポのいいそんなやり取りがカメラの切り替わりのタイミングなどで強調される。kors kの煽りとまらしぃのよく跳ねる手の動きで盛り上がるオーディエンスは各々タオルを振り回す。

ここでmaras kに呼び込まれたのはLogical Emotionのベーシストとして登場したdrm。3人で『情熱大陸』リミックス、まらフェス2020のテーマソング『Okini』を披露。まらしぃを起点にして様々なコラボが形成されるのがまらフェスの醍醐味である。

配信ならではのことでもあるが、ゲストごとの転換の時間がない。演奏をしている傍らで準備することが可能になるからだ。そのテンポの良さは、短い時間でゲストが切り替わっていく構成でもオーディエンスの盛り上がりを高め続けていた。最初から想定されていた形態での実施ではないので結果的にということになるが、空き時間のほとんどない、展開の早い配信ライブの実施に成功した今回のまらフェスは、特にチケット制ではないオンラインライブの在り方に合っていたのかもしれない。

バンド形態のLogicalEmotion、ダンスミュージックのmaras kのあとに続くコラボ先はまたジャンルを変え、H ZETT M。距離を取り向かい合う2台のピアノで楽しそうにアイコンタクトを取りつつ高速な演奏を繰り広げていく。『残酷な天使のテーゼ』『太陽曰く燃えよカオス』とまらしぃファンには特になじみ深い楽曲が2人の超絶技巧によって時に原曲とは似つかないほどのアレンジが施される。手元をよく見ることができるという配信の特徴がここでは非常によくはたらき、2人の技巧のすさまじさを見せつけた。

最近発足したばかりのまらおバンドは、固定メンバーがまらしぃしかいないことを生かし、自由な編成でプレイ。与野のドラムとまらしぃのピアノで『運命』『クシコスポスト』のアレンジを披露。どちらも演奏の激しさや速さが強さの一つであるが、巧妙な役割分担により、どちらも激しく演奏しているのにもかかわらず暑苦しさなど微塵も感じず、2人の良さを融合した力強さと疾走感、そして原曲にあるような上品さがあった。
ここでさらに超絶技巧を強さとしたベーシスト、IKUOが登場。3人で『meteorite』を披露した。
さらにまらおバンドはギターにKOUICHIを加え、新曲である『青く駆けろ』を初音ミクのボーカルとともに演奏。普段の生放送では最後に応援ソングとして演奏される楽曲だ。今回のオンラインライブが開催されるきっかけ、あるいは原因でもある情勢において人々を励ますことになる楽曲が4人の演奏者によって披露される。ニコニコ生放送の弾幕は青に染まった。

ここでソロに戻り、新曲『Tadu』や『霖と五線譜』などを各曲の思い出とともに披露。配信というやり方は普段の生放送とは変わらない、あるいは従来のライブよりも生放送に近いかもしれない。しかしオーディエンスが「聞いている」という意識やライブとしてひとつのまとまった作品であることもあってか、通常の生放送にはない、演奏に込められた気持ちが画面越しに伝わってくる。

ライブは恒例の「お散歩ナイツ」こと『ナイトオブナイツ』のメドレーで幕を閉じる。はじめこそ「できなかったまらフェスの代替」と言っていたまらしぃだが、最後には「これはこれでアリ、またやりたい」と満足した様子だった。

アンコールとして再び画面にあらわれたまらしぃは、Logical Emotionで『Forever Shootingstar☆ミ』、maras kで『Play Time‼』、H ZETT Mと『千本桜』、4人編成のまらおバンドで『カノン』を間髪入れずに披露。異なる編成で連続で演奏することができるのは配信ならでは、そして今回の出演者すべてとコラボ形式で演奏しているまらしぃならではのことだろう。
様々なジャンルとのコラボをしてきたまらしぃであるが、こうしてYouTubeなどの、環境さえ整っていれば誰でも見ることができるプラットフォームにてコラボの連続が行われた意義は大きい。

まらしぃは様々なコラボができて幸せだ、と感想を漏らしたあと、初めて作曲した曲として去年からライブのラストを飾っている『夢、時々…』をゆったりと丁寧に演奏し、オンラインでの豪華な一夜を締めくくった。

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