新人ボカロP さむなうどインタビュー
ロック調に直球な歌詞が組み合わせられたボカロ曲「ドベ」で初投稿を果たした新人ボカロP、さむなうど。今回は、知人でもあるさむなPに楽曲制作や表現について話してもらった。
はじめての作曲はどうぶつの森
――さむなさんは現在15歳ですけど、音楽を作り始めたのはいつごろだったんですか?
さむな:音楽の定義にもよるんですけど…
――ほう。というと。
さむな:どうぶつの森ってあるじゃないですか。どうぶつの森に「村メロ」っていう、1音ずつ音を入れられて音楽が作れるみたいなやつがあって。これをずっとやってた。曲を再現するとかじゃなくて、こんなメロディを作りたいみたいな。
――それっていつ頃の話ですか。
さむな:Wiiのどうぶつの森だから…いつだ?
――「街へいこうよ どうぶつの森」か。2008年発売です。
さむな:2008年は3歳ですね。ゲームを触ってるってことは5歳くらいかな。そこから、3DSのバンドブラザーズ(大合奏!バンドブラザーズP)のカセットがあって。それを触ったり、そのあとスマホを買い与えられて、最初はゲーム音楽みたいなアプリを使ってて(PICO CHIPPER)。でGarageBandに移行して、っていう感じですね。
――最初は歌モノじゃなかったんですね。
さむな:そうですね。
――そこからどういう流れで歌モノを作ろうってなったんですか?
さむな:中学で軽音楽部に入ったんですよ。で、バンドリってあるじゃないですか。あれって高校生たちが自分たちのオリジナルの曲を作って発表するんですよ。それを見て、オリジナルやってみたいねっていう話をして作った感じですね。
――バンドリがスタートなんだ。
さむな:そうですね。憧れかな。
バンドリみたいに自分たちの曲を演奏するという経験があれば、ありきたりにはなってしまうんですけど青春みたいなことができるんではないかと思ってやったんじゃないですかね。
――今まで特に聴いてきた音楽ってどの辺だったんですか?
さむな:東方Projectの同人音楽ですかね。東方のオタクだったから。そこからニコラップとかも聴くし、あとはお姉ちゃんがやってたバンドの邦ロック。オドループとかそのあたりです。
――東方にハマったのはいつくらいなんですか。
さむな:小学2年か3年には。お姉ちゃんが中学に進学して、その友達が「チルノのパーフェクトさんすう教室」を歌ってて、そこから。今はネクライトーキーとかチャラン・ポ・ランタンとかも聴くし、割と幅広く聴くようにはなったんじゃないですかね。
――ボカロはどうですか。好きなボカロPとかいるんですか?
さむな:サイゼPが好きで。あとはキノシタPの初期の曲とかはよく聴いてました。
プロジェクトミライっていう3DSのミクの音ゲーがあったんですよ。それをやっていて。そこに入っていた曲が多いかなって感じがします。あと「春はレモンドロップに溶け」のyamadaPとか。
特定の人物に送る手紙のようなもの
――歌詞ってどう書いてるんですか?ボカロ曲って言ったら初音ミクについて書いた曲とか、最近だとちょっと病んでる感じとか、テンプレートみたいなテーマがあるわけじゃないですか。でもさむなさんの曲ってそうじゃない。すごい内面が出ている感じがするんですよ。
さむな:なんなんだろう。曲によっても違うんですけど、誰かに向けた曲とかは多い。
――特定の人物?
さむな:そうです。特定の知人友人に。「メモリーガール」と「Dear unknown」は所属してたバンドをやめるとき、別に嫌な終わり方じゃなかったんですけど1年くらいそのバンドにいたので、せっかくだからこの人たちのイメージソングでも作るかと思って。「メモリーガール」はそのバンドのベースの人のイメソンで、「Dear unknown」はそのバンドのドラマーのイメソンでした。
――それは本人に伝えたりしたんですか?
さむな:伝わったのかなあ。伝わってるかもしれません。会ったときに言ったような気もします。
――イラストとかも今のところは自分で書いてるわけじゃないですか。それも実在の人物に関係させてるんですか?
さむな:「Dear unknown」は、私がベースをかじってたことがあったのと、ドラマーに作った曲だからベーシストとドラマーがいます。「メモリーガール」のイラストはその子のイメージカラーみたいな感じですかね。深夜につくったのであんまり覚えてないですけど。
――「ドベ」は誰かに向けたとかではないですよね。
さむな:「ドベ」は私の純粋な反骨精神でつくりました。「ドベ」の他にMVが完成してなくて発表していない曲があるんですけど、それと「ドベ」はバンドでオリジナル曲をやりたいって言ったときに部の意向で反対されて、その反骨精神で。
――なるほど。他の2曲が人に向けたものなのは意外でしたね。
さむな:一種の手紙みたいなものですよね。
――それまでにも手紙みたいな感じで作ったことはあったんですか?
さむな:あるある、出してないんですけど、すごい尊敬していた先輩の引退が急に決まることがあって。そのとき2曲作りました。
――イメージソングを作ろうって思うのが面白いですね。
さむな:バンドマンって別れた恋人のこと曲にしがちじゃないですか?
――ああ。
さむな:そういうことなんじゃないですか。
――なるほど…。曲を作る動機がその出来事とか人物を覚えておきたいっていう場合もあるわけじゃないですか。
さむな:私の場合はそれは結果論みたいな感じがしますね。そんなこともあったなっていう。なんだろう、ありきたりな感情っていうか、メジャーな感情の動きじゃないですか。失恋とか卒業とかって。メジャーな経験だと思うんですよ。たとえばパンを焦がしたら悲しいみたいな経験が全国共通だったら、多分パンを焦がしたら悲しいみたいな曲がもっと流行ってたと思うんですよ。
だから、失恋とかをしたときに、これが俗に言う失恋ってやつか!って私は思うことがあって。失恋はしたことないんですけど。
――先に知っていた出来事とそれに付随する感情を自分がやっと体感して知ることができた、みたいなのを曲にすると。
さむな:そうですそうです。このラブソングだと主人公はこういう気持ちだけど私はこういう気持ちだなっていうのを表現しちゃう。
――なるほど。出来事に対する自分の解釈みたいな。
さむな:ああ、そうです。なにかしらの即作物をみたときに、私だったらこうするなっていうことを考えてしまうたちで。そういうのの関連かなと思います。
理想の表現を求めて
――話をきいた感じ、歌詞を重視している印象があります。曲作るときって詞先ですか?
さむな:はい。なにかあったときにひたすら歌詞を書くことがあって。語感のいい歌詞を書いて、それに合うメロを探すみたいな作り方をしています。
――音楽じゃなくて、例えば小説でもなんでもいいんですけど、書いて表現したいみたいな思いってないんですか。
さむな:なんだろう、私的に自分の書いた文章は曲にして初めて見せられると思っていて。だから小説はそんなに。
――曲にして初めてっていうのは、曲にすることで自分の中でなにか意識が変わるってことですか?
さむな:なんだろう、なんか歌詞の中身って意味があるようでないみたいな、ボカロってそういうのが許されるじゃないですか。意味がないならないでいいし、聴き手の解釈次第でこれは意味があるって捏造してくれてもいいなっていう。
自分で表立って意味ありげなことをいうのに抵抗があるので、すべてを聴き手に任せている。
――自分の中ではなにか意味があったとしても聴き手からすればわかんないから。
さむな:そうです。
――それはボカロPっぽいですね。ボカロPはそういう考え方ではないかもしれないけど、結果として。
さむな:ボカロだから許される感じみたいなのもあるかもしれない。
――小説とか文章以外でもなんでもいいんですけど、絵とか写真とか他の方法でなにかを表現するのに関心はない?
さむな:あるのかな。小さい頃ダンスをやってて。幼稚園から中1くらいまでやってたから身体で表現するのはすごい好きなんですよ。バンドマンって身体で表現しません?
――演奏のときの動きの話ですか?
さむな:そうです。コンテンポラリーな生活っていうバンドがあるんですけど、それのライブ映像が好きで。そういう表現が好きです。
――曲以外の表現となると動きとかそういう話になってくるのか。自分がボカロPであることに執着はしてないんでしょう?
さむな:そうですね。
――むしろボカロじゃない方がいいみたいな感じなんですか?
さむな:ボカロにはボカロのよさがあって。それこそ歌詞を適当なこと言っても怒られないみたいな。でもそれとは別に、パフォーマーみたいなことをしたいみたいなのはありますね。その表現媒体のひとつとしてLive2dとかをやってるわけですけど。
――そうか、Live2dで姿を得てなんらかをするっていうのも表現のひとつ。
さむな:そうなんですよ。私は自分の顔が好きなので生身で活動したいなとも思うんですよね。まあどうなるだろうね、という感じです。
――自分が外に出ていく分はそんなに抵抗はないんだ。
さむな:そうですね。
――それぞれ思い出あると思うんですけど、今まで作った曲の中でどれが一番お気に入りですか。
さむな:完成したやつだと「ドベ」です。出してない曲の話をするのあれなんですけど、革命って呼んでいる曲があって。それがGarageBandで最初につくったやつかな。それが一番お気に入りです。歌詞がいいので出たらみんな聴いてくださいね。
――自分の音楽を聴いた人にこう感じてほしいみたいな思いとかってあるんですか?
さむな:あるのかなあ。こういう人間も世界にはいるよ、みたいなのは出すときに思います。特に曲で言いたいことってそんなないなって。まあ他人を救いたいとは思います。画面の向こうの人間を。だから、こういう人間がいるから大丈夫だよ、みたいなのはなくはない。
――自分が救われた経験がある?
さむな:トップハムハット狂の音楽を聴くと私救われるんですけど。そうなりたいんじゃないですかね。
私、音楽を聴くときアーティストで聴くんですよ。ひとつ聴くとそのアーティストのことを妄信的に好きになることがあって。そういう感じなのかもしれません。
――妄信的に好きになられたいってことですか。
さむな:ああそうですね。そうだと思います。私という人間コンテンツ?を面白がってほしいところがある。
――これからが楽しみですね。次の曲いつですか?
さむな:いつがいいと思います?
――もったいぶらないでくださいよ。
さむな:2月中には出すと思います。頑張ります。
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さむなうどTwitter
https://twitter.com/kakkokari_123?s=20
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