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全力で駆け抜けた1年をフルコースで召し上がれ【でんぱ組.inc】

でんぱ組.inc 幕張ジャンボリーコンサート DENPARTY 幕張式フルコース〜ア・ラ・でんぱ〜

2019年を総括するような、言葉通りのフルコース。
もちろん、ただ年間ベストのセットリストを組むだけではないのが、でんぱ組.incだ。

でんぱ組.incのライブは、いつも未来を見据えている。「これからも」というワードがMCのここぞという時に出てくるし、ライブのエンドロールの最後には「to be continued」の文字が映される。

今回のライブも同様だ。2019年のフルコースである本ライブは、同時に、未来に向かって突っ走る準備でもあった。

相沢がプロデュースした衣装に身を包んだでんぱ組.incは、ステージに登場するなり“でんぱーりーナイト”を披露。人気曲であると同時に非常にマニアック要素もある“DearStageへようこそ”、“破!to the Future”や“Future Diver”のアッパー曲を序盤から惜しげも無く投入する。

相沢のプロデュースした衣装は、アイドルグループとしての統一感を多く持たなかった。タイトな上半身とふわりとしたスカートこそ同じなものの、それぞれの体型に合わせたスカート丈や、成瀬が肩出しをする、藤崎の上半身のレース率の高さなどの意外性を各々持ち合わせていた。今年はじめに卒業した夢眠ねむからミントグリーンを譲り受けた根本の衣装は、明らかに夢眠のソロ作品「夢眠時代」を意識したものである。

さて、幕張メッセ2日目ということでいつもよりも些か気合の入った自己紹介を済ませると、まだまだ序盤であるというのに運動量の多い楽曲たちを次々に披露していく。“ギラメタスでんぱスターズ”、“バリ3共和国”から”ボン・デ・フェスタ““かぼちゃタンデム”。バラードどころかミドルテンポすら挟まずに一気に駆け抜ける。コールに忙しいオーディエンスも汗だくだ。

ここで「スペシャルコーナーです!」との前置きがあり、事前に告知されていた根本と鹿目のいわゆる「ねもぺろ曲」にシフトする。根本と鹿目が1人の「ダーリン」を取り合う微笑ましい映像が流れたあと、露出の多い衣装(このことも事前にプロデューサー・もふく氏のTwitterにより伝えられていた)で可愛らしく新曲を披露した。「私が一番でしょう?」という風な上目遣いと、根本と鹿目が目を合わせてはふんっ、とわざとらしく顔を背ける仕草が愛らしい。今までのでんぱ組.incでは絶対にできなかった、リアルな乙女心の表現である。

愛らしい2人のコラボから一転、相沢率いるLAVILITHが“ペイルライダー”“スバラシキセカイ”でクールにその歌唱力を見せつけた。

スペシャルコーナーはさらに続く。

ステージ脇から静かに登場した諭吉佳作/men。メンバーの顔すらはっきりと見ることが出来ないほどの薄暗い照明で“形而上学的、魔法”をコラボした。諭吉の澄んだコーラスが妖しく存在感を放ち、メンバーに変わって歌唱する場面もあった。個性派な歌声が揃うでんぱ組.incの中に、存在感のある射抜くような諭吉の声が混ざる。統一感のない振り付けも相まって、不思議な雰囲気を醸す。

この日のでんぱ組.incの振り幅は本当に広く、直後には今年成瀬が変身することを許されたプリキュアとコラボ。2曲を披露し、幸せそうな表情をした成瀬はファンに礼を述べた。

怒涛のスペシャルコーナーを経たでんぱ組.incは、今年まわったツアーでファンからのリクエストに応える形で行われた「ファンラブコーナー」のメドレーを披露。“エバーグリーン”“STAR☆ットしちゃうぜ春だしね”“ダンス・ダンス・ダンス”“ノットボッチ…夏”などの楽曲が矢継ぎ早に繰り出される。なかでもバラード曲の“ブランニューワールド”は圧巻で、鹿目の芯の強さや成瀬のポジティブさ、古川の繊細さが声にそのまま表出していた。密度の濃いメドレーは、はじめの“エバーグリーン”に戻り、夢眠から受け継いだ「君がくれた今をこれからも生きていくよ」の歌詞を古川が笑顔で歌いあげ、締めくくった。

“おやすみポラリスさよならパラレルワールド”“でんでんぱっしょん”“強い気持ち・強い愛”“キラキラチューン”と、今年のツアーでも披露された楽曲が総括するように繰り広げられる。“プレシャスサマー”が季節外れだと思えないほどの熱量でオーディエンスと響き、本編は幕を閉じた。

アンコールを求める声を切り裂いたのは、グランドピアノの荘厳な音色だった。演奏しているのは清竜人だ。
先日結婚発表をしたばかりの古川が、真紅のドレスを纏って姿を現す。新曲“私のことを愛してくれた沢山の人達へ”がピアノと古川の歌唱で紡がれた。

再び古川の祝福ムードに包まれる中、「サプライズがあるんだよね!」と相沢。みりんちゃん準備があるから着替えてきてよ、とメンバーに荒っぽく促された古川は一旦消える。再び姿を見せた古川は、ステージの天井から吊るされる2本のワイヤーを見て何が起こるか悟ったらしい。とはいえ信じられない様子で「まじでやるの…!?」と焦っていた。

天井から垂れ下がるワイヤー。古川はここに括りつけられ、フライングするというわけだ。かねてより古川はライブ中に飛んでみたいと口にしており、つまりこの日その夢が叶うということである。

この幕張2日間で初披露された新曲、“愛が地球救うんさ!だってでんぱ組.incはファミリーでしょ”でフライングの夢を叶えた古川は、どちらかというと遊園地にあるようなフリーフォール的な飛び方をしたせいで終始絶叫していた。新曲の披露中だけ撮影が許され、オーディエンスは絶叫する古川を、また客席まで降りてきて駆け回るメンバーをフレームにおさめる。あまりにも自由で混沌とした光景だ。でんぱ組.incらしい。

この日最後に選ばれた楽曲は“いのちのよろこび”だった。2019年のでんぱ組.incを代表する、原始的ソング。今年も個々で活躍の場を広げつつもでんぱ組.incとして進化したでんぱ組.inc、原始を思い返したこの日の先、来年には一体どんな驚きが待っているのだろうか。楽しみだ。

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