見出し画像

【読書ログ】『Presents』 角田 光代

思いのほか、早めに書けました!
久々の読書ログです。

今日は、久しぶりに平日の午後にお休みを取れました。
お休みの前の浮き足立つ感じが、なんとも言えず嬉しい・・・!笑


今回読んだ本はこちら。

私がいつか泊まってみたい、「本」がテーマのコンセプトホテル・BOOKHOTEL神保町さんのInstagramで見かけて、はたと読んでみたくなりました。

▼BOOKHOTEL神保町さんのInstagram

贈り物にまつわる12編の短編小説ということで、12日間かけてゆっくり読もうとしたら、ついつい「もう1編、もう1編・・・」と読んでしまいました。
それぐらい、読みやすい!


特に印象的だったお話を3つ、さくっとご紹介。
※ということで、ネタバレありです。

1つ目は、大学進学を機に上京した娘に、母が贈った「鍋セット」にまつわるお話。
引っ越しの荷解きや片付けを手伝うために、母が上京し、一緒に引っ越し蕎麦を食べた後にいよいよ母が帰る・・・というときの、娘の心の叫び。

本当のことを言うと、母といっしょにあのしょぼけたアパートに帰りたかった。何度でもいっしょに掃除をしてもらいたかった。あの狭苦しい台所で、夕食の支度をしてほしかった。(中略)けれど今日泊まってもらったら、明日も泊まってもらいたくなる。

角田 光代『Presents』より引用

かつて、私自身が社会人になったことを機に、一人暮らしを始めたときのことを思い出しました。
寂しがり屋の甘えん坊、同じようなことを思ったんです(苦笑)。
そして、主人公のお母さんが、最後までなんだか私の母に似ている気がして・・・ただそれだけで、印象に残ったお話でした。


2つ目は「絵」にまつわるお話。
このお話は、浮気の疑いのある夫、片付けのできない息子と暮らす女性が主人公。

"理想の母"であり、"理想の妻"であり、"理想の家庭"を築いているはずだったのに・・・現実はそうではない。
特に、息子に対して「怒ってはいけない」と思っているのに、必要以上に怒っている自分に対して、戸惑ったり、迷ったり、葛藤したり。

「自分が子どもの頃、あまり両親を好きではなかったように、きっと息子だって私のことを・・・」と思っていた主人公。

でも・・・あるとき、息子が描いた絵がきっかけで、今目の前にある幸せ、両親と過ごした日々にたしかにあった幸せを思い出すことになる、そんなお話。

なんでだろう・・・その主人公の姿に、ぐっと来て思わず涙しそうになりました。

”当たり前”だから、”目の前にある”から、大切さに気づけなかったり、自分が与えられてることを見落としていたりするけど、そんなことはなくて。
泣いたり、怒ったり、迷ったりも・・・も含め、今ある日常がなにより幸せで、愛おしいものなんだということを、主人公を通して感じさせられました。


3つ目は、一番最後のお話。
最期を迎えるおばあちゃんが主人公。

最期を前に、これまで多くの人たちからもらった贈り物やそれにまつわる記憶を思い出している。
思い出しながら、与えてもらったほど多くを与えられていないのではないかと思っている、主人公。

そのかたわらで、家族は

いいんだ、かあさん。おれたち、もうじゅうぶんもらったんだから、もうなんにもいらないんだよ。

角田 光代『Presents』より引用

そんな風に、優しく声をかけています。

その姿を見て、「最後の贈り物をもらっているんだ」と思いながら、主人公は安らかに眠りにつきます。

長い人生のなかで、「許せない!」と思う人や出来事だってあるだろうし、嫌なことだってあるだろう。
でも、最後はこんな風に穏やかで、安らかで、周りの人たちの愛を感じ、それに対して心から感謝しながら、旅立てたらいいな。

そんなことを思いました。


「あとがき」を読みながら思いを馳せていましたが、「贈り物」には必ず、贈ってくれた人との関係、贈ってくれた人の想い、そしてそこに至るまでの思い出・・・が詰まっています。
たとえそれが、形のないものであったとしても。

そう思いながら、これまでの人生でもらった贈り物や贈ってくれた人との思い出を懐かしく思い出したりもしました。
もう会えなくなった人や離れてしまった人もいますが、一緒に過ごした時間は消えない。
大事に胸に抱えながら、今目の前にある日々を大事に過ごしていこうかな。


みなさんにとって、思い出に残るプレゼントは・・・?


ご自身の贈り物とそれにまつわる記憶をたぐりよせながら、ぜひ読んでみてください!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?