見出し画像

【読書ログ】『夜が明ける』 西 加奈子

こんばんは。
前回の記事を書いた後、素敵な本をご紹介いただいたので、早速手に取り、読み進めました!
ということで、いつもよりは前回更新からの空白期間が短め。

最近嬉しかったことは、子供の頃大好きだった『Dr. コトー診療所』が映画化されること!
改めて第1シリーズの最初からドラマの再放送を見始めたら、止まらなくなっちゃいました…!
子供の頃はあまり深く考えずに「このドラマ好き!」で見ていましたが、大人になった今、改めて見てみると、ドラマの中の言葉が妙に刺さったり、出てくる人たちの気持ちにより深く共感できたり…ということもあり、年齢を重ねながら、いろいろな体験を積み重ねていくことの面白さというか、感慨深さというか…そんなことを感じている今日この頃です。

さて、興奮気味でいつもより余談が長くなった気が・・・!笑

今回ご紹介する本はこちら。

前回の記事で「今、ピンと来ている本がない」と綴った私ですが、そんな私にコメント欄で灰色の夜さんが紹介してくださったんです…!
(頂戴したコメントも、大変温かくて嬉しかったです! 本当にありがとうございました^^)

実際読み進めるうちに、どんどん続きが気になって、読むペースが上がってきてしまうぐらい、楽しく読ませていただきました。
私がいつも通り「Kindleのオススメ」に頼ったり、ネットサーフィンや書店めぐりで自分の感覚だけを頼りにしたら、きっと出会わなかった本。
気づくこと・感じることも多く、”いつも自分がいるところ”を飛び越えて、本を手に取る大切さをしみじみ感じました。
感謝を込めて、私自身が感じたことを綴りたいと思います。


主人公は「俺」、終始名前は出てきません。
そんな「俺」が高校で出会った、長身で吃音の友人アキ。
そんな二人の友情と成長を描きつつ、貧困や虐待、長時間労働やさまざまなハラスメント・・・など、日本の社会が抱える問題が取り上げられています。

「俺」は高校時代に父を亡くし、奨学金を借りて大学へ進学。
大学を卒業後、テレビ制作会社へ就職します。
就職した当初は目標や夢に向かって頑張る日々でしたが、寝る暇もないほどの過密スケジュールや膨大なタスク、さまざまなハラスメント・・・次第に「俺」は心も身体も蝕まれていきます。

そんな「俺」が疎ましく思っていた、後輩の森の言葉が本当にその通りで。

先輩は全部、全部、自分の中で解決しちゃうじゃないですか。
思ってることも言わないし。
(中略)
人に助けを求めるなんて、それこそ負けだったって。
でも、もうそれ、やめません?
(中略)
先輩には、先輩のために、声をあげてほしいんです。
苦しいときに、我慢する必要なんてないんです。

西加奈子『夜が明ける』より引用

「俺」と森は対照的な描かれ方をしています。
「俺」はどれだけ理不尽な仕事の振られ方をしても、理不尽なことを言われても、文句ひとつ言わずに戦ってきました。
一方の森は、社長や周囲に対して、伝えるべきだと思ったところはしっかり伝えながら、仕事を続けてきました。

そんな森の

「そもそも仕事って勝ち負けの世界なんですか?」

も個人的にすごく刺さりました。
あ・・・私、「勝ち負け」で捉えている節あるかも、と。

私もわりと「俺」に近い考え方で、人に助けを求めたら「負け」だって思っていたし、理不尽なことを言われたり、されたりしても、声を上げずに耐えるべきだと思っていました。
そして、私自身も「俺」の先輩である田沢と同じように、女性であるだけであれこれ言われるなかで、そこに対して「負けたくない!」という気持ちも強く持っていました。

結果、「俺」ほど劣悪な環境ではなかったものの、心身ともに参ってしまい、「業務自体は好きだけど、もう続けられない」と仕事を辞めてしまったこともあります。
そして、それすらも自分のなかの「負け」として捉え続けてしまっているなぁと感じます。


でも、もし苦しいなら、声を上げたっていいし、誰かに助けてもらったっていいんです!
(そして、個人的には「その場を去る」もいいと思っています)
それは「負け」でもなんでもなくて、この世界で生きている私たちにとって、当然の「権利」なのだから。


森から話を聞いた後、「俺」はあらゆるところに助けを求めながら、再び動き始めます。
その姿に、「きっともうこの先、「俺」は大丈夫だ」、そんな風に思えたのは、私だけでしょうか。


「俺」やアキが感じる痛みに、胸を切り裂かれそうな思いをしながらも、その世界にとっぷり入り込んでしまい、ページを捲る手が止まらなくなる本。
気になった方は、ぜひ読んでみてください!

灰色の夜さん、素敵な本をご紹介いただき、ありがとうございました!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?